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最高の魔法技師は異世界人  作者: 夜桜
第2章 学園編
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007

第2章に入ります。

今後とも宜しくお願いします。


 

 誠たちが森を出発してから3日。

 二人はケレス王国の王都に来ている。


 王都の様子を見た誠はその表情を喜色に変えていた。

 それもその筈である。

 王都の景観は、誠の知るところの中世の西洋風なものであり、ファンタジーといえばこれだ、といったものであったのだから。

 全体的に白を基調とした石造りの街並み、そこに建つ家々や建造物はレンガ造りのものが多い。

 また中央通りの活気はさらに素晴らしいものがある。


 そんな街の中を、誠はセスに連れられて歩いていた。


「すごく活気があるんですね」


「王都だからな。これくらいは当然だ」


 セスは少し誇らしげな顔をしている。

 これは外国人に大して自分の国を自慢するときのような誇らしさというやつだろうか。

 そんな様子に誠は少し笑ってしまう。



 しかし、今日はそんな王都の観光をしに来たわけではないのだ。


 王立魔法学園。


 誠たちは今日、そこの学園長と会う事になっている。

 いつの間に約束を取り付けたか知らないが、セスはすでに学園に話をつけていた。

 ただ、本人を全く見ることもなく入学を認めるというわけにもいかないらしく、今日は面接といったところだ。

 セスは、そう固くなる必要はないと言っているが、誠はそうは思っていない。

 なにせこれから誠にとっては学園に通えるかどうかがかかっているのだから。



 学園を前にして誠はさらに驚きの表情を浮かべていた。

 二人は学園の門の前にいるのだが、まず誠を驚かせたのはその門の立派さとその大きさである。

 まるでひとつの芸術作品かのようなその門の大きさは、幅50メートル、高さ55メートル程といったところか。

 一つの学園の門がここまで立派とは流石に誠も想像していなかった。

 しかし、誠は門をくぐったあとさらなる驚きに見舞われた。


 一度門をくぐれば、そこには広大な敷地が広がっている。

 綺麗に整備されている公園のような敷地だ。

 その奥の方には、美術館か何かのようにしか見えない校舎が並んでいる。

 その敷地には当然のように学生たちが歩いていて、皆一様にローブのようなものを羽織っていた。

 その出で立ちは研究者と言えるような立派なものに見えた。


 それも当然のことである。

 この王立魔法学園に入れる学生は、この国においても本当に優秀なごく一部の人間だけなのだから。


 少し困惑している誠だったが、セスに連れられて敷地を通って学園長室を目指す。


 その間、セスは多くの学生から頭を下げられていた。

 誠は、セスは本当に何者なんだろうと強い疑念にかられていた。


 門から20分ほど歩くと、学園長室に到着した。

 セスはノックもせずにおもむろに学園長室の扉を開ける。

 その様子を見た誠は内心ヒヤヒヤである。


(おいおい、そんな勝手に入っちゃって大丈夫なのか!?)


 驚く誠だったが、セスに続いて学園長室に入っていく。


「邪魔するぞ」


 セスはそう一言つぶやく。


「おいおい、いきなり入ってくるのは流石にダメじゃないの?」


 その言葉に答えたのは若そうな女性の声。

 誠はその声の主の方を見た。

 見た目は20代半ばに見え、身長は誠とだいたい同じくらいの170センチ程度。

 スタイルが良く、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる、所謂モデル体型というやつだ。

 そんな彼女の一番の特徴は、サラサラの黒いストレートの髪から出ている尖った耳である。

 おそらく、エルフ族なのであろうと誠は思う。


「そう硬い事を言うでない。何年の付き合いだと思っておる」


「まあそうなんだけどさ。それより、その子が?」


「ああ。マコト、自己紹介をしてくれるか」


 その言葉に誠はハッとして、その女性の方を向く。


「誠・藤堂と申します。よろしくお願いします」


 誠はこの世界での名前と苗字の順番に則って自己紹介をする。


「ご丁寧にありがとう。私はこの学園の学園長、サラ・バルバーリよ。よろしくね、マコト君」


 サラはそう言って誠に微笑んだ。


「ところでマコト君は迷い人なのよね?」


「はい。少し前にこの世界に突然来てしまい、セスさんのお世話になっていました」


「そう。大変な状況でしょうけど、セスに出会えたのは幸運ね。いえ、これも運命なのかしら」


「サラ、変なことを言うのはよしてくれ」


 セスは呆れたようにそう言う。


「あら、だってそうじゃない。迷い人であるマコト君が最初に出会ったのが、『賢人』セスだなんて運命としか思えないわ」


 誠は『賢人』というワードに反応する。

 少し前に読んだ本の中で、そのワードを見たことがあり、その意味を知っていたからだ。

『賢人』というのは10年に一人、国で最高の魔法師に与えられる称号だ。

 セスはそれほどにすごい魔法師だったのかと、誠は驚いていた。


「誠を前にすると、そんな称号早く捨てたくなるがな」


「あら、あなたにそこまで言わせるなんてマコト君そこまでの逸材なの?」


「お前は、手のひらから水を生成できるか」


「は?何を言ってるのかしら。水の生成は現代魔法の最大の課題の一つじゃない……まさか」


「ああ。マコト、このコップに水を生成してくれ」


 そう言われた誠は言われたとおり、セスの手に持たれているコップに水を生成した。

 その現象を見たサラは驚愕している。


「こんなあっさり……」


 その後しばらく考え込んだサラだったが、急にその口を開く。


「マコト・トウドウ君。あなたを王立魔法学園の特待生として入学していただくことに決めました。これは決定事項です。拒否することなんて許しませんからね♪」


 そんな笑顔を見せるサラに対して、誠は背筋が凍りつくような思いをした。


「こらこら、サラ。そんなマコトを脅すんじゃない」


「だってこれは大事件よ。この子は間違いなく天才、いえそんな言葉で片付けられるような人じゃないわ。ぜひ私とともに研究を……」


「あ、マコトには一人で研究させるなら若いものと組ませろよ。この国の将来のためだ」


「くっ……私の完全無欠な魔法師になる計画がっ!?」


 言いたい放題のサラの様子に誠は言葉を紡ぐことさえできない。


「マコト、済まないな。こいつは昔からこういう奴なのだ」


「はあ……」


「ちょっと!こういうやつってどういうことよ!」


 こうして波乱万丈な感じではあったが、誠の王立魔法学園への入学が決まったのである。



 誠は後に知る事になるが、20代半ばに見えたサラはセスと同い年だそうだ。

 その事を知った誠は、エルフとはつくづく恐ろしいと思うのであった。



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