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誠が異世界に来て3日目。
誠は今日も魔法の実験に熱中している。
そしてその実験にはセスも参加するようになった。
なぜなら誠の実験はこの世界の魔法の常識を崩してしまうようなものであったから。
「しかし、マコトの魔法は常識はずれだな」
「いいえ、セスさん。これは魔法の認識の違い、そして科学知識の水準の差から出てくるものです。もしも僕の世界の同じ時代の人間が来ていたら、多少能力の差はあるでしょうけど同じようなことができると思いますよ」
「そうなのか。だが、2日目にしてあのような高度なものを見せられるとな……」
誠の言うことは半分は正しい。
確かに日本から同じように誰かが送られてきたら、同じように魔法を使えるものがほとんどだろう。
だが、誠のようなレベルで使えるかといえば答えは否。
誠は理系の大学生ということがあって、科学知識の定着度が高い。
さらにプログラムを使って物に術式を定着させるなんて発想は、普通の者では思いつかないだろう。
いろいろな意味で常識を崩していることを、誠はまだしっかりと理解できていなかった。
「それより、実験しましょう!実験!」
「ああ。それで今日はどんな実験をするんだ?」
「今日は重力制御の魔法についての実験ですかね」
「重力とは初日に言ってたものだな。正直全く理解できなかったのだが、詳しく教えてもらえるか」
誠はやはりわかってなかったか、と思いつつ重力に関する説明をする。
「そうですね。まずこの世界というか、この星は丸いんです」
「星?星とは空に輝いているものではないのか」
「ああ、そこからでしたか。えっとですね、実は僕たちがいるここも空に輝いている星の一つなんです。正確には、僕たちに見える空よりももっと高い位置と言ったらいいのかな、そこに宇宙空間という空間が存在して、全ての星はその空間に存在しているんです。だから、もし僕たちがその宇宙空間にでれば地球も星の一つとして見えますよ」
「なるほど。完全には分かっていないが、とりあえずこの世界も星の一つであるということは理解した」
「はい。それで問題ないです。それで次の話なのですが、星というのは球なんです」
その言葉にセスはさらに顔をしかめる。
「だが、球だとしたら地面に真っ直ぐに立っているというのはおかしいのではないのか」
「普通はそう考えますよね。ですから、ここでまず引力というものについて説明しますね。正確には万有引力というのですが、これは二つの物体間に発生する互いを引き合う力のことです」
「その考え方でいくなら、例えば儂とマコトも互いに引き合っているということか?」
セスの意味深な言葉に他意はないと信じて誠は返す。
「はい。あらゆる物質には互いに引き合う力が働いています。ただし、それは物質の質量に依存しているので僕たちや机や椅子や、その他もろもろの物同士に関する万有引力はかなり小さいものですね」
誠は続ける。
「それがこの星全体、つまりセスさんたちの認識で言うこの大地全体と僕たちの間に働く万有引力だったとしたらどうでしょう?」
「そうか!それはとてつもなく大きな力になりそうだ。つまり、儂らはこの大地に引っ張られていると考えればいいのじゃな?」
「それでだいたい問題ないと思います。正直僕もこの分野が専門というわけでもないので、これ以上ちゃんとした説明もできそうにないですし」
誠は苦笑いを浮かべているが、それはセスも同じである。
誠の言う専門外の知識が、自分のもっている常識をことごとく打ち壊していくのだから。
「そういえば、この星が球であるということは何か関係しているのか。この星が球であってもちゃんと地面に立っていられるというのはわかったのだが」
「えっとですね、もう一つお教えすることがあります。それは、おそらくこの星も自転、つまり自分で回っているということです」
「どういうことだ?」
セスはまたしてもわけのわからないことを言い出したと思っている。
「先ほど、僕たちがいるここも星の一つだと話しましたね」
「ああ。それは理解したつもりだ」
「はい。では、ひとつ考えて欲しいのですが、日が昇ったり沈んだり、星が現れたり消えたりというのはどういう理由だと思います?」
「それは太陽や星が動いているからではないのか?」
この世界でも太陽は太陽と呼ばれているのか、と誠はそんなところに反応しつつ、説明を続ける。
「いえ、それは違います。空の星が動いているのではなく、僕たちのいる星が回っているんです。振り子というのはご存知ですか?」
「ああ。糸に重りをつけて振るあれだろ?」
「はい。その振り子を、なにか支えとなる物から吊るし、振り子を振れさせます。するとどうなると思います?」
「それは振らした方向に振れ続けるだろう」
「もし他の星が動いていて、この星が動いていないのならそうなるでしょう。ですが、この星が自転しているとすればこの振り子の振動方向は見かけ上少しずつ回転するんです」
「……なるほど。たしかにこの星が回転していればそうなるかもしれんな」
「はい。このくらいの実験ならこの世界でも試せるでしょうからやってみるといいかもしれませんね」
「なるほどな。それで、この星が回転しているとどうなるのだ?」
「はい。回転している物体には外向きに力が働くというのはなんとなくイメージできますか?」
「ああ。それは問題ない」
「それは助かります。それで、この星の重力についてなんですが、先ほどの万有引力とこの星の回転するときに働く外向きの力である遠心力との合成によって決まるんです」
「なるほど。つまり星に引かれる力と星の外への力の合力が重力ということだな」
「はい。その通りです。そこで、ある物体に対してすでにかかっている力の向きと反対方向、あるいは同一方向に力を掛けることで、物体を浮かせたり、見かけ上重くしたりすることができるはずなんです」
「そうか!」
ここまできてセスは重力制御の魔法の理論を理解した。
「こんなものができたらこの世界がひっくり返りそうだ」
「やっぱりそうですかね」
誠は苦笑いだ。
だが、それよりも自分の仮説を実際に実現できるか試したい衝動の方が優っていた。
誠の考えでは、魔力というのはあらゆる物質やエネルギーの代替になる。このエネルギーを物理的力として用いることができれば、ある物体に対して遠心力方向に力を働かせることができる。まったくもってエネルギー保存則とはなんだという話であるが、魔力がエネルギーとなるのだから、一応成り立ってはいるのかなといったところだ。
というわけで、誠は机の上にあるコップに対して、今かかっている力の反対方向に力を発生させるように意識。
すると、コップは少しずつ宙に浮き始めたのだ。
「「うおおおおおおおおおお!」」
誠とはセスは二人して歓喜の声を上げた。
それと同時にコップが机の上に落ちて割れた。
だが二人にはそんなことはどうでもいいようで、お互いに抱き合って喜んでいる。
こうしてこの世界に重力制御魔法が生まれたのであった。
<修正>
自転の証明部分、および重力制御魔法の記述の一部を修正いたしました(09/15)




