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最高の魔法技師は異世界人  作者: 夜桜
第1章 異世界転移編
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003

かなり勢いだけで書いてしまった。大丈夫だろうか……


 

 誠が異世界に来て2日目。

 今はセスに借りた『魔法概論』という本を読んでいる。

 セスが言うにはこの『魔法概論』という本が、魔法を学ぶ上で最も基本的な内容が収録されているらしい。


 だが……。


「なんだこれは!?全然魔法の発生原理も魔力についての詳しい説明も書かれていないではないか!」


 誠はつい激怒してしまった。

 因みにセスは森に出ているため、今は誠1人である。

『魔法概論』には魔法の発生について、魔法はその人間が確固たるイメージを持っていれば発動するものであり、イメージが重要であると書かれていた。そして魔力は、大気中に存在し魔法を発動するために必要なものであると書かれていた。なんとも雑な内容である。

 誠はこの世界の科学の水準に落胆している。

 魔法に関しては、もっと良い研究成果などが出ていると思っていたからだ。


「魔法を発動させるためにはイメージが重要ですって、イメージってなんだよ」


 誠はそう思いつつ、セスがやっていたように指先に火が灯るようなイメージをしてみる。

 すると、思いのほか簡単に火が点った。


「え!?」


 なんで火が点くのか誠は理解ができなかった。

 誠の認識では、火を付けるには可燃性の物質、もしくはガスに対してある一定の熱を加えなくてはならないのだ。だが、この現象はそんなものを完全に無視して起こっているように見えた。


「なにかが可燃性の物質と点火のための熱エネルギーの代替になっていると仮定するならば、それは魔力以外には考えられないよな」


 ここで誠はひとつの仮設として、魔力とは様々なエネルギー、物質の代替となる物質かなにかのことだとした。


「火は何かしらの熱を加えれば起きるというのは誰でも知っていることだから、このくらいのことは誰でもできるということだろう。この本には水を生み出すことは、未だに誰も成功していないという。それは、水という物質がどのように構成されるかを知らないからだ。僕の仮説が正しければ、これで水が生まれるはずだ」


 誠はそのようにイメージすると、やはり簡単に水が出てきた。

 おかげで部屋の床は水浸しである。

 だが、なんとなく掴めてきたようだ。


「つまり、今僕は魔力を酸素と水素、熱エネルギーに変換して水を生成したわけだ。これは相当使えるぞ!」


 誠は興奮していた。

 このアイデアを今後の魔法の発展のために記録をつけることにした。

 そして誠は自分の世界から持ち込んだノートPCを取り出す。

 PCはネットに繋げないこと以外は問題なく動作することを昨日のうちに確認しておいた。

 さらに太陽光充電器もあるので、充電も問題ない。時間は少しかかるが。

 そうして今の仮設のメモと、これから試したいことについてリストを作っていく。


 誠はさらに様々なことをしていった。


 まずは、氷の生成が行えるのかを試した。

 まず、氷の結晶構造を思い浮かべるだけで生成できるかを確かめたが、それは流石に無理だった。

 もしかしたら、水素結合を一つ一つ丹念にイメージしていけば出来るのかもしれないが、そんなものは人間業ではない。

 ということは水を冷却することによって生成するしかない。

 そこで、誠は先ほどと同じ容量で水を生成、同時に今度は魔力を使って熱を奪い冷却する。

 すると、手のひらサイズの氷を生成することができた。


「おお!」


 これはすごいことができたと誠は内心思っていたが、『魔法概論』にその場にある水を凍らせることは可能だと書かれていて、少しつまらなくなったようだ。


 しかし、誠の実験は終わらない。


 風魔法というものは、空気の流れなどイメージしやすく誰でも扱える魔法の典型らしいが、逆に真空を作り出すという発想はなかったのではないだろうかと考え、実行してみる。


 誠は指先に火を灯した上で、その指先のほんの少しの空間を真空状態にした。

 すると、火は一瞬で消えた。

 とりあえずは酸素のない空間を作ることはできたことになる。

 ほかの元素までちゃんとなくなっていたかは、後々実験してみることにしよう。



 そんな事を思っていると、セスが帰ってきた。

 そこで、もうほとんど必要ではないであろう『魔法概論』を返した。


「もういいのか?」


「はい。ここに載っている内容はあらかた理解しましたし、この世界の科学水準の低さに少し悲しくなりました」


 誠がそう言うとセスは苦笑いを浮かべていた。


「そういえば、セスさんって研究者だったんですよね。どんな研究をしていたんですか」


「儂は魔法の術式を物に定着させて誰でも扱うことができるようにしようという研究をしておったんだよ。儂は所謂魔法技師というやつでな。まあ魔法技師というのはあまりはやらないのだが」


 そう悲しそうな顔で言うセスであったが、誠はその発想に感銘を受けていた。


(そうか!モノに魔法の術式を物に定着させることができれば、咄嗟に何かあっても対処しやすいし、何よりさっきの連続する水素結合の生成によって氷を形作れるかもしれない)


「セスさん!魔法技師、いいと思います!ちょっと待っててください」


 誠は借りている部屋からPCを持ち出し、セスの前に持ってくる。

 そして、その辺の石ころに術式を定着させることにする。


「これはなんだ?」


 セスはノートPCを指差していう。


「これはパソコンと言って、現代科学の産物ですね。まあ見ていてくださいよ」


 そういって誠は、プログラミング用のエディタを起動する。

 そしてサクサクと簡単なプログラムを作成していく。

 内容は繰り返しの構文を使って変数を3つ使ってそれを結合していくような命令である。

 さらに引数として終了条件を定義。

 これによって任意の回数水の分子を生成できることになる。

 このプログラムを元の世界にいた時に設計したコンパイラにかけ、実行できるようにする。

 魔法というのはイメージが重要である。

 そこで、このような簡単なプログラムでも魔法が起動してくれると信じた。


 そうして作ったプログラムを魔法による無線通信を石ころに適用。

 プログラムを石ころに書き込む。

 これはかなり無理やりな気がしたのだが、魔力を使って石ころの表面に半導体記憶素子のうちの、不揮発性メモリをなんとか生成。これで石ころがフラッシュメモリとなる。

 これに対して先ほどのプログラムとその実行スクリプトを記憶。

 そして最後の仕上げとして、魔力によって石ころの内部に記憶されたプログラムに変数として水素と酸素、そして終了条件を与える。


(これでプログラムの出力が魔力として作用すれば……)


 そんな誠の思惑は当たり、ほんの1.5秒ほどで机の上に氷が生成されたのである。


「な、なんだこりゃ!?」


 セスは驚いた。

 なにせ何もないところに氷が生成されたのだから。


「セスさん、僕の仮説が正しければこれはあなたが使っても動くはずです」


 そう、一度この出力情報を石ころに記憶させてしまえば、あとは誰が使おうと同じ結果が得られるはずなのである。


 そしてセスが同じように石ころを持ち氷を思い浮かべると、それだけで机の上にもう一つ氷が生成された。


「うおおおおおおおおおお!」


 セスは叫ぶ。

 よほどの興奮だったのだろう。

 誠はセスのあまりの興奮っぷりに血管が切れて死んでしまわないか不安だったようだが。


「マコト!これはすごいぞ!まさか、この世界に来て2日目にしてここまでも魔法具を作れるとは」


「いえ、これもセスさんに魔法技師というアイデアを聞けたからですよ。まさか、ここまでうまくいくとは思いませんでしたけど」


 こうして誠は、魔法技師としての第1歩を踏み出したのである。

 これが後に最高の魔法技師と呼ばれる誠の伝説の幕開けであることを、この時は誰も知らなかった。



<加筆修正>

プログラムによる魔法の実行に関して加筆修正を行いました。

簡易的なものですので、読みやすさなども考慮にいれながら今後も変更するかもしれません(09/15)

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