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最高の魔法技師は異世界人  作者: 夜桜
第2章 学園編
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018

 

 誠は張り切っている。

 なぜなら今日から本気で研究に打ち込めるからである。

 この研究が誠にとってどういう意味をもたらすのか。

 これはまだわからない。

 だが、この研究によって新たな事実が解明できれば、この世界の多くの人を幸せにすることも、自分が元の世界に帰ることもできるようになるかも知れない。

 だが逆に、過ぎたる技術は世界に不幸をばら撒くのかもしれない。

 そんな大きな希望と、小さな不安を抱えながら、誠は今日も明るく努める。


「さて、それでは今日のテーマは電気についてです」


 例のごとく、誠先生の勉強会から入る。

 ミーティングルームで誠が教壇に立ち、ナタリアとクリスが席についている。

 誠はそんな二人に対してすらすらと説明をしていった。


「電気というのは、昨日も言いましたが今は雷を小規模にした、というイメージを持って頂ければいいです。これから詳しく説明しますので」


 そう前置きをしてから、詳しい電気の説明に入る。


「まず電荷について話をしましょう。電荷というのは、粒子、つまりこの世界の物質を構成する小さな粒の持つ性質の一つです。電荷には、正と負の2種類あります。ここまでは大丈夫ですね」


 誠が2人に問いかけると、そろって頷く。


「では続けますね。電気というのは非常に幅広く曖昧といってはあれなのですが、この電荷の移動などによって起こる様々な現象のことを総称して電気と呼びます。つまり、雷というのは電気の中の1つの現象とういうことになりますね」


「なるほど、電気という大きな概念の中に、雷という現象が含まれているのですね。それで、他にはどのような現象があるのですか?」


 クリスは持ち前の理解力の高さで、すぐにここまでの内容を飲み込んでいるようだ。

 ナタリアもなんとかついてきてはいる。


「はい。まずあげられるのは静電気ですかね。なにか鉄製のものを触った時にバチッとなったことありませんか?」


「あ!あるある!あれにはものすごく驚いたわ」


 ナタリアはその時のことを思い出すかのように手をさすっている。


「それのことですね。電荷の蓄えられた物体に接近した時に生じますね。他にもいくつか発生のさせ方はありますが今は置いておきます。また、電気の現象には他にも、電磁誘導や電磁波など色々ありますが、これは後々説明するかもしれません。今は電荷の移動などによって生じる現象と理解してください。それでは電荷の移動に関する説明をしますね」


 そう言って誠はポケットから1枚の硬貨を取り出し、自分の手のひらに置く。


「この硬貨は今、僕の手のひらで支えているからこの場にありますが、手をどかしたらどうなるでしょう」


「それは、下に落ちますね」


「そうですね。ここで注目すべきなのはこの場のエネルギーです。特に物体がある位置にいることで蓄えられる位置エネルギーに注目したいと思います。この位置エネルギーというのは高さが高いほど大きくなり、低い位置にあるときほどエネルギーが低いです。つまり、エネルギーが高いところから低いところに向かって物体は移動しようとすることになりますね」


「たしかにそうですね」


「これは電荷も同じなんです。電気における位置エネルギーと同じ概念を電位と言います。電荷は電位が高い方から低い方へと移動するのです。そして、ある面を1秒あたりに通過する電荷の量のことを電流と言います」


「なんか色々ごちゃごちゃしてきたわね」


 ナタリアは若干理解が追いつかない様子で、少し悩んでいるようにも見える。

 クリスはそうでもないみたいだ。


「そうだね。ナタリアにはもう少しわかりやすい例を示してあげれるといいんだけど、ちょっと待ってね」


 誠は少し考える。

 誠自身も最初電気の概念を学んだときは、すんなりと理解はできなかった。

 実際、いきなり内容を掴めているクリスの方が特殊であろう。

 そこで、何かの本で読んだことを思い出す。


「ナタリア、滝をイメージしてくれるかな」


「滝って、あの水が流れてるあれよね?」


「うん。電気は滝と同じなんだよ。水は滝の高い方から低い方に流れていくでしょ?」


「ええ」


「水を電荷と見立てると、電荷も電位の高い方から低い方に流れていくんだ。で、水の流れ、つまり電荷の流れが電流ってわけ」


「なるほど!わかりやすいわね」


 これでここまでの内容は2人とも理解してくれたみたいだ。


「でもここまで分かってるなら、マコトなら簡単に魔法として使えるんじゃないの?」


「それがそうもいかないんだよ。電気というのは厄介でね、ほんの少しの電流を流しただけでも人が死んでしまうようなものなんだよ」


「そんなにすごいのですか」


「はい。しかも、クリス先輩達は電気に対して雷のイメージをまだ強く持っていますよね」


「そうですね。確かにそのイメージは強いかもしれません」


「ですから、安易にこの魔法を使えば雷ほどの電流を一気に流すことになったりして、大変な惨事になってしまうかもしれないんです」


「なるほど。だから制御する方法を探すというわけですね」


 クリスは納得の表情を浮かべる。


「そういうことです」


「簡単にはいきそうにない課題ね」


 ナタリアも難しい顔をしている。


「まあそんな簡単にいくことをやっても仕方ないしね。ここは頑張りどころかな」


「なにか解決案など考えておられるのですか?」


「まあ、いくつか案がないこともないですが、やはり実験してみないことにはわかりませんね」


「流石マコトですね。もう考えておられるとは」


「ですが少しの間、2人にも考えてもらおうかと思います。2人はここで少し相談しながら案を考えていてください。その間に僕は実験の用意をしておきますので」


「分かったわ」


「分かりました」


 ここで誠は二人をミーティングルームに残し、実験の準備に向かった。


 誠が目をつけたのは、この棟の中でも最も広い実験室だ。

 この部屋は、防音や耐久性にも優れているらしく、危険な実験をする際も安心だという。


「さて、準備とはいったけどあまりすることもないんだよな」


 誠は2人が時間を気にせずに考えることができるように気を使ったみたいだ。

 自分だけでやるのが研究ではないし、これから先2人の力が必要になることは間違いないであろう。

 だからこそ、2人には考える力を養ってほしい。

 そういった思いがあるようだ。


「危険を減らすために工夫をしたいような気はするけど、どうするかな」


 とりあえず、若干部屋が埃っぽかったので、風魔法で埃を吸い取っておく。

 埃というのは思いもよらぬ事故を巻き起こすこともあるからだ。


「あとは豆電球みたいなものがあるとわかりやすいんだが……」


 誠はとりあえず、フィラメントを生成する。フィラメントは電球の部品で、実際に光る金属の細い線である。

 それを使って電球を構成できるように導線などを生成。

 それらをつなぎ合わせた後、丸型のガラスで覆い、中の空気を排除すれば簡易型電球の出来上がりである。

 これで実験もやりやすくなるだろう。


 そこまでしたところで、誠の準備は終わり、頃合を見計らって2人を呼びに行くことにした。



総合評価10000ptを超えました!

本当に嬉しく思います。

読んでくださる皆様に感謝です。

これからもよろしくお願いします!

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