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最高の魔法技師は異世界人  作者: 夜桜
第2章 学園編
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日間ランキングに載ることができました!

これも、読んでくださる皆様のおかげです。

これからも頑張って執筆を続けますので、どうぞよろしくお願いします!


 

 午後の授業は比較的平和に進んだ。

 誠やナタリアが発言することもなかったからだ。

 その分、誠にとっては新鮮味もあまりない、退屈な時間であったが。


 そしてあっという間に放課後がきた。

 教室は、夕日によって赤く染まっており、授業を終えた学生たちが次々と教室を出て行く。

 誠とナタリアは全員が出ていくのを待ち、そして皆いなくなったことを確認すると、席を立ち上がった。


「それじゃあ始めようか」


 誠の一言にナタリアは嬉しそうに頷く。


「それで、まずは何を学びたい?やっぱり水の生成かな」


「うん。水の生成は目標だったから」


「ナタリアの最終的な目標って何?」


 ちょっと脱線しつつも、誠は尋ねる。

 その質問に、少し照れた様子を見せながらもナタリアは答えてくれた。


「誰にも言わないでね。私は『賢人』になりたいの。それが小さい頃からの夢」


(夢か……僕にそんなものあっただろうか)


 誠は過去の自分を振り返ってみるが、夢などというだいそれたものを持ったことがなかったように思う。

 そんな誠にとって目の前で夢を語る少女の姿は、とても眩しく見えた。


「話してくれてありがとう。ナタリアなら『賢人』になれるって僕は思うよ」


「あなたに言われると、本当になれそうだから不思議」


 ナタリアは笑顔を浮かべる。

 ナタリアにとって誠の存在はすでに目標であり、自分の常識を変えてくれる存在となっている。

 だからこそ、誠の言う一言がナタリアの心情を良い方向にも悪い方向にも変えていくのである。


「それじゃあ水の生成の勉強を始めようか」


「お願いします。マコト先生」


 ギョッとする誠に対して、ナタリアはいたずらっぽい笑みを浮かべていた。


「先生はやめてくれよ」


「はいはい。マコト先生、早く始めて」


 誠はため息をつきながらも説明を始めた。


「まず、さっき元素については少し話したよね」


「ええ。この世界の物質は、すべて微粒子から出来ているという話よね」


 昼休みに聞いた元素に関する話を、ナタリアはすでに理解していた。

 誠はその理解の速さに感心しつつ、話を続ける。


「そう。そして水がどのような元素構成されているか、それらがどのようになると発生するのかがが分かれば水の生成ができる」


 そこで誠は黒板に水の構造を書いていく。

 酸素に対して2つの水素が結合しているという図である。


「このOというのは酸素、Hというのは水素を表している。では、その二つの元素についての説明をするね」


 誠は酸素と水素についての説明をした。


 酸素の化学的性質としては、助燃性が挙げられる

 また、人間は酸素を取り込み、その酸素と栄養素を、二酸化炭素と水に分解する際にエネルギーを得ることで生きている。そのため酸素がないと人間は生きられない。

 水素は気体の状態において、軽く、非常に燃焼・爆発のしやすいという特徴を持った元素である。

 これらは大気中に含まれる元素である。


 ここまでを説明したとき、ナタリアが口を開く。


「一応知識としてこういったものがあるということは理解することはできるわ。でもその程度の認識でいいの?」


 そこで誠は少し悩む。

 今伝えたのは誠の持つ酸素と水素の知識の中でも、ごく簡単なもののみなのである。

 果たしてその知識だけで、水を生成するレベルまでいけるだろうか。

 そこで、1つアイデアが思いつく。


「よし、それじゃあ実験をしよう。ここじゃ足りないものが多いから、学園長室でも行こうか」


 実験で実際にその現象を見れば、理解とその定着に役立つはずである。

 実際、誠自身も酸素などの元素を見ることはできないがその存在を疑わない。

 それは、幼い頃からの教育や実験によるものだと考えている。


「え!?学園長室って、そんなこと許されるの!?」


「大丈夫だよ。学園長は意外と優しいし、僕の実験に興味があるらしいからちょうどいい」


「……あなたって本当に何でもありなのね」


 ナタリアは若干呆れつつも、その実験というのが気になったのでそれ以上は何も言わない。

 そうして2人は教室を後にした。



 誠は学園長室の扉をノックする。

 本日3度目のノックだ。


「はーい。どうぞー」


 学園長室から気の抜けたサラの声が聞こえる。


「「失礼します」」


 2人はそろってそう言い、学園長室に入った。


「あら、マコト君いらっしゃい。学園生活1日目はどうだった?」


「それなりに楽しみました。ただ、授業は正直なところあまり参考にはなりそうにないですね」


「そうよね。あれはマコト君には簡単すぎるわよね。ところで、そちらはガールフレンド?マコト君も隅に置けないわね」


 ニヤニヤと嫌な笑顔を向けるサラに対して、ナタリアはたじろいでしまう。


「違いますよ!人を手の早い男みたいに言わないでください」


「あら、そうなの。てっきりガールフレンドを紹介しに来てくれたのかと思ったわ。それでそちらの特待生のお嬢さんは、もしかしてナタリアちゃんかしら」


「は、はい。ナタリア・スカーレットと申します」


 緊張した様子で礼をするナタリアを見てサラは笑う。


「そんなに固くならなくて大丈夫よ。最初にここに来たときのマコト君みたいね」


 その言葉に誠も苦笑いだ。


「でも今じゃこんな仲良しだもんねー♪」


 そう言ってサラは誠に引っ付く。

 主に胸をひっつけている。

 もう一度言おう。

 主に胸をひっつけている。


「や、やめてくださいよ!ナタリアもいるんですよ!」


「あら、誰もいなかったらいいの?」


「そんなわけないでしょ!離れてください!」


 ちぇっ、と舌打ちをしながらサラは誠から離れる。

 ナタリアは若干不機嫌そうである。

 それに気づいたサラは今度はナタリアに攻撃を仕掛ける。


「あら、ナタリアちゃんヤキモチー?」


「ち、違います!そんな訳ありませんっ!」


「あらあら、必死になっちゃってかわいいわねー」


 ニヤニヤしているサラは非常に性格が悪く見える。


「サラさん、いい加減にしてください。それより、実験をしますからロウソク貸してくれません?あと、コップもいいですかね」


「え、実験!それを早く言ってよ!ロウソク♪ロウソク♪」


 サラはナタリアをいじることに急に興味が無くなったかのように部屋の奥に行ってしまう。

 ナタリアはものすごく疲れているようだ。


「ナタリア、ごめんね。ああいう人なんだ」


「うん。大丈夫。マコト君と学園長って仲いいんだね」


「ここに入れてくれたことには感謝してるんだけどね。ただいつもあんな調子だからさ」


 誠はやれやれといった感じだ。

 それを見てナタリアはクスッと笑った。

 誠は少し安心する。


「マコト君ロウソクとコップ持ってきたわよ……ってなに私の部屋でいちゃついてんのー」


「いや、ですから……まあいいや、それより実験始めましょう」


「そうだったわ!実験♪実験♪」


 誠はサラからロウソクとコップを受け取る。


「酸素と水素の話は先日サラさんにもしましたよね」


「ええ。覚えているわ」


「ではまず酸素の実験からしましょう。大気中に酸素がありますからこの状態のロウソクは燃え続けることができますね」


 そう言って誠はロウソクに火を点け、燃え続けることを確認する。

 その様子を見たサラとナタリアは当然だといった様子である。


「ですが、このコップでロウソクを覆うとロウソクは密閉されますね」


「つまりマコト君の言う通りなら、ロウソクの火は徐々に消えていくということになるわね」


 サラが横からそう口を出す。


「ええ。その通りです。実際にやってみましょう」


 誠はロウソクをコップで覆った。

 すると、ロウソクの火は徐々に小さくなり、最後には消えた。

 その様子を見て、サラとナタリアは驚いている。


「この現象は大気中の何かを使って燃焼が起こっているということの証明になりますね。そしてその何かを人間は取り込まないと生きていけないという話ですが、サラさん」


「な、なに?」


 実験の結果に驚いていたサラは、若干声が震えている。


「それまで生きてきた中で、火をつけているのに、窓や扉を閉めっぱなしでいたことありませんか」


「ええ、昔はあったわ。そういえばどことなく息苦しさを感じることがあったような」


 サラはその時の状況を思い出してそうつぶやく。


「それは部屋の酸素が薄れて、逆に二酸化炭素が増えているからですね。危険なので、火を使うときは換気を心がけてくださいね」


 誠は二人に注意を促すと、首を縦にブンブン振っていた。

 その様子に誠は若干苦笑いである。


「さて、次に水素ですがこちらは失敗すると大変危険なので、明日場所を変えて行いますか」


「「ええっ!?」」


 サラとナタリアは2人揃ってその反応である。


「水素は爆発しますからね」


 ちょっとおどしでそんなことを呟くと二人共黙ってしまった。

 実際水素爆発は危険ですから、良い子の皆さんも学校の先生の指示に従って注意して行ってください。


 そんなわけで、日がもう地平線に消えようというところで本日の勉強会は終了した。



<変更>

酸素の化学的性質についての表現を『助燃性が挙げられる』というものに変更いたしました(09/10)


<訂正>

水素についての説明を、『気体の状態において』、という条件を付け足しました(09/14)

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