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お久しぶりです!
今回は番外編……ではなく、言うなればもう一つの最終回ですね。
悩んだ結果省いたんですけど、結局書いちゃいました。
と言っても、最終回で悩んでたのは、本当の最後の最後。
ラスト数行の部分だけなんですけどね。
久しぶりの更新ですが、読んでいただけたら幸いです。
××××年 十月三十一日
さて、ついにこの日が来たわけだ。
一応、俺の中で『ギャルゲー乙女ゲー観察日記』は十月十五日をもって終了しているのだが、今日と言う日だけは復活させてもいいかもしれないと思っている。
何故なら今日は『キミだケに』における最終日だったのだから。
一体どうして付き合う事になる十月十五日ではなく、今日、三十一日なのか。
それは、今日が緋山遥人の誕生日だからだ。
文化祭二日目で付き合う事になる女子、もしくは誰か新たに付き合う事になる女子。
どちらなのかはわからんが、最終的には緋山の誕生日を祝うためのエンディングである。
今回、気合を入れて観察をしてきた所存であります。
と言うわけで、朝から妹さんと登校するという名目で、観察してきました。
事前に妹さんには、緋山への誕生日サプライズのために、朝から付いてまわりたいと相談してあったため、違和感なく朝から観察できた。
妹さんも、兄が友人に大切に思われてるからだろうか、朝から非常にご機嫌であった。
予想だと、緋山はともかく、星海さんはひどく緊張してるのだろうと予想していた。
が、予想に反して、心が普通だった。
成長したのかなと一瞬考えたが、一つの可能性に思い当たったこの時の俺。
星海さん――緋山の誕生日知らないのでは?
一度その可能性にぶち当たると、それ以外に考えられなくなっていた。
だって、思えば出会って二か月の付き合い、恋人同士になってからだと二週間ちょい。
ましてや、ある一定期から急激に仲良くなっていった二人。
誕生日について話す機会がなければ、知ることはないんじゃないかと思った。
なのでちょっと確認してみた。
登校後、朝のホームルーム前に、ちょっとだけ大きめの声で。
「緋山! 忘れる前に渡しとくわ。……ほれ、誕生日おめでとさんだ」
「え!? マジか! サンキュー! つかよく知ってたな」
「ん? あ、ああ。妹さんとの話の流れでな」
こんな時のためにちゃんと誰か彼かに色んな人の誕生日は聞いておいてある。
若干横目で星海さんを見ていたが、俺が『誕生日』と言った瞬間に、ビクッ! とし、そのごプルプル震えだした。
この時点で、星海さんが緋山の誕生日を今知ったことが分かった。
同時にこの時点で、俺がプレゼントを渡したことにより、星海さんが窮地に追い込まれたことに気付いた。
只の友達が持ってきてて、彼女持ってきてないってことになっちゃうもの。
それでも、俺以外が「マジかよー」「知らなかったー」という空気になれば、自分も知らなかったとしっかり謝罪すれば何とかなったのかもしれない。
が。
「あ、先越されちゃった。はい遥人。誕生日おめでと」
――――「緋山。俺もくれてやる。おめでとう」「あ、私も持ってきたーおめー」「あげるー」「あ、緋山先輩いますか……?」「緋山はいるか?」「緋山君、誕生日おめでとう」――――…………。
何と言うことでしょう。
春風さんはもちろん、東野も含めたクラスの半分以上がプレゼントを渡し、更には瀬戸さんや桐野先輩に天野先輩と言った、一年生や三年生も数人顔を出してきたではありませんか。
その時の星海さんの絶望の顔ったらない。
いや、別に緋山がそれで気分を害するとかありえないのは、星海さんも分かってるとは思いますが、そこはまあ……本人の気持ちの問題だったのだろう。
そしてまず星海さんがとった行動は――。
「星海さん、ホームルーム始まっちゃうんだけど」
――俺の拉致でした。
てかまた攫われるとか、俺ってばヒロイン力高い。
まあ、なんだかんだで相談に乗ることが多かったからなんだろうけど。
まずは文句から始まりました。
「な、なんで教えてくれなかったの!?」
「まず、星海さんが知らなかったことを俺は知らない」
「ううぅ……」
「……まあ、多分緋山なら、自分が教えてなかったからっていうと思うが」
「でも……普通恋人なら、どこかで聞いておくべきだと思う……! はぁぁあ……初めての誕生日プレゼントは手作りかな? とか考えてたのに、うちの馬鹿ぁ……」
そして途中で自分へのガチダメだし。
……うん、はたから見てて、浮かれてたら聞きそびれたんだなってのが丸わかり。
多分この時に、俺を連れだしたことで、何人かはそのことに気付いたと思われる。
緋山は気づいていなかったと思われる。
「じゃあ、もういっそのことベタなことでもすれば?」
「ベタ……?」
一旦落ち込むのをやめて、話を聞く様子。
「リボンを体に巻いて、プレゼントはう・ち……みたいなー?」
言いながら俺は、馬鹿みたいに古臭く、ベッタベタすぎて面白くない……と自己評価を下していた。
星海さんもそう思ってるかな? と考えていると――。
「そっ! そそそそんにゃ恥ずかしいこと出来るわけないっ!!」
――とてもとてもきれいに赤面していらっしゃった。
正直場を和ませるネタが八割を占めていたので、予想外の反応に驚きました。
その後は、しばらく星海さんの赤面テンパりを眺めてた。
ホームルームより、そちらの方が面白いとの判断です。
ただまあ、星海さんのテンパり話が、行き過ぎて男女の大人なお付き合いについての話題にシフトし出しそうだったので「冗談です」と止めておいた。
その時に、また激しく赤面していたのは、この日記だけにとどめておくことにする。
「……じょ、冗談は置いといて。うちはどうしたらいいの……?」
まあ、色々助言は出来なくもなかったが、
「すみませんが、そればかりは自分で考えるべき」
ここは突き放すことにした。
「そんなぁ……」
縋るような声を出された。
仕方ないのでさらに付け加える。
「……ただ、俺が緋山の友達としてわかるのは、俺の指示したものをプレゼントする事と、自分で考えて、それでもなにも思いつかずに、何も用意できなかったと素直に言う事、その二択であるなら、緋山が傷つくのは、確実に俺の指示の方ってことなんだけど」
星海さんは、少し落ち込んでたようだが、どうやら俺の言ったことをしっかり受け取ってくれたようで、頭を悩ませながら戻って行った。
……拉致られた俺は、少しサボってから戻ることにした。
その後、授業中、休み時間、昼休み。
全て星海さんは頭を悩ませていた。
まあ、それで逆に緋山が心配してるんだから、意味がないと言うかなんというか……。
あ、そうだ。
本筋とは関係ないが、驚いたので書き加える。
お昼休みになんと! 廊下で! 四葉さんと遭遇した……!
ドッキリをまず疑い。次に奇跡は存在するのだと知った。
それぐらいの驚きである。
少し話をして、途中で妹さんと瀬戸さんが話に加わったが、二人で漫才を始めたので、結果四葉さんと二人でそれを眺めることに。
ボーっと見てたが、ふと横を見ると、なんとも慈愛に満ちた顔をした四葉さんがいらっしゃった。
この二人の漫才をみてその表情とは……。
つい「…………いったいどういう心境で、そんな慈愛に満ちた表情を二人に向けてるんでしょう」と聞いてしまった。
で、帰ってきた答えが、
「あら? 私はいつも、どなたに対しても慈愛の心を持ち合わせていますよ? もちろん、貴方にも……」
だ。
更に小首を傾げながら、満面の笑みで。
流石に顔が赤くなる。
完全不意打ちだった。
残念感の漂う人も多いので油断しがちだが…………俺の知り合いの女の子は俗にいう美少女なのだ。
慣れていたつもりだったが、至近距離であの笑みは反則だ。勘違いする……危ない。
とっさに赤面を隠そうと顔を逸らした。
正直、四葉さんに顔をのぞかれればアウトだったが、漫才の終わった二人が、俺に用事があるということで、俺を拉致って部室に向かった。
拉致は本日二度目だが、これは助かった。
拉致の途中、妹さんが「無自覚な伏兵こわい」と言っていたが、何かの小説の話だろうか……?
その後は、少し部室で瀬戸さんの短編小説の構想についての相談を受け、お昼が終わった。
妹さんはついてきただけらしかった。
二つに分けます!
ラストは明日で。




