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一応毎日投稿していく予定です。

 ×××○年 四月三日


 俺は今、悩んでいる。


 この学校には文芸部がない。


 いや、それは学校案内で知っていたんだが。

 小説を学校でゆっくり書いたり読んだりするには、やはり静かな場所が必要だと俺は考えていた。


 だからないとわかっていても、自分で部を作ってしまおうと考えていたわけだ。



 入学式までは。



 入学式でここはゲームのキャラクターが生きている場所と分かった。

 なので、学校ではシナリオを崩さないように出来る限り傍観者でいようと思っていたわけだ。


 だが、文芸部と言うのはどっちのゲームでも登場人物が関係してたはずなのだ。


 確か、『キミだケに』には本が好きで文芸部を作る勇気のない引っ込み思案な後輩がいた。

 そして『キメわん』には重度の読書家で面倒くさがり、文芸部があれば入るつもりだったけどなかったから学校はほとんど図書室で過ごす先輩がいたはず。


 後輩の方はともかく、文芸部作っちゃったら先輩の方は入っちゃうんじゃない?

 それに後輩の方も、確か主人公がその後輩のために文芸部づくりに協力する的なイベントがあった気もする……。


 どうしようか……決めるなら早い方がいいし……。


 ……うん! とりあえず今日はねる!


 おやすみます!!


 あ、ハッピーバースデートゥー、ミー……。




 ×××○年 四月十二日


 今日、『キミだケに』の主人公、緋山遥人と仲良くなった。

 特に何かしたとかではなく、話しかけたら仲良くなれた。

 さすがにギャルゲーの主人公なだけあって、緋山のコミュニケーション能力が高い。それに、ゲームのシステム上、今まで見ることのなかった顔も当然ながらイケメン。


 これで何故高二まで彼女なしなのかわからん。



 ちなみにこのクラスには未来の攻略対象の女子はいない。


 確か緋山の幼馴染の攻略対象の女子……確か『春風はるかぜ美鈴みすず』さん(だったはず)と、中学まではずっと同じクラスで仲が良かったが、この一年間だけ違うクラスで、少しだけ距離感が出来てしまい、二年になって同じクラスになれても、うまく話が出来なかった。

 みたいな感じだったはず。


 ……緋山の彼女なしなのはへタレだったせいか。


 そしてもう一人、仲良くなれたやつがいる。

『キメわん』のメインとも言える攻略対象『東野とうの英司えいじ』だ。


 東野はいわゆる天才で、詳しくは聞いていないが、iQもかなり高いらしいとの噂だった。


 なので、今日出た宿題を、クラスの女子の一人が東野の噂を聞きつけたのと、恐らくお近づきにでもなろうとしたのだろうか、東野に宿題の答えを聞きに行ったのだ。


 だが東野はその女子を一睨みし、



「出された課題を何も考えずに答えを得ようとしているのか? ……屑だな。お前のような奴は学業に励む資格はない。やめてしまえ、学校を」


 と言い放った。


 それにはクラスが静まり返り、その女子は泣いて廊下に飛び出していった。

 それを友人だろう三人ほど追いかけ、クラスでは東野に対する視線が厳しくなった。


 だが東野は気にした様子もなく次の授業の準備を進めていた。


 クラスの皆は、東野が間違ったことは言っていないのと、東野に――天才に意見して自分も完膚なきまでに反論されるのが怖いのとで、東野に何も言えないでいるようだった。



 確か東野英司というキャラは、とにかく頭の悪い奴が嫌い。そして他人にすぐに頼ろうとするやつがもっと嫌いだと公言するタイプだった。

 その上、人付き合いが苦手で、口を開けば高飛車なことしか言えない。


 だからクラスでも浮いた存在で、主人公が転校してくるまでは、東野の友人は他の攻略対象を含めた数人しかいなかった。


 二年の中ごろ転校してくる主人公は、明るく社交性があり、一見抜けているが、実際にはかなり頭がいい子。

なので、ゲームにおける東野は主人公を気にしているが、他の攻略対象よりはアプローチが少ないキャラ。


 つまり『キミわん』に置いて、メインの癖に攻略の難しいキャラだった。



 傍観者でいるつもりとは言え、クラスがこんな空気のままだと居心地が悪いので、東野に声をかけることにした。


 まずは、先ほど出た宿題をサッと終わらせ(俺も地道に勉強したため頭いー)、東野に話しかけた。

「東野。聞きたいんだが」


 俺がそう言うと、クラスの皆はざわつき、東野は話聞いてなかったのか? と言わんばかりに睨みつけてきた。


「睨むなよ。とりあえず聞くだけ聞いてくれ。……さっきの宿題解いてみたんだが、この問題だけ合っているか自信ないんだ。東野の答えが絶対に正解、とは思わんが、誰かと考えが一緒なら俺も安心できるし」


 と言うと東野は驚いた眼で俺を見た後、ざっと俺の答えを見て、


「……ああ、問題ないと思う。俺も同じ答えになった」

 と少しだけ口角を上げて言った。


 ――少しホッとした。クラスはまたざわついていたけど。

 で、俺は続けた。


「そうか、よかった。ありがとう、助かった」

「いやいい、気にするな。これからも励め」


「ああ。……それと、さっきの騒ぎだが、東野の言ったことは正論だと思うし、俺も同感だ。だがもう少し言い方を考えた方がいいと思う」

「何故だ。あれは屑だぞ」


「ただ罵るだけしかしないなら、相手を傷つけるだけだ。自分が悪かったと理解させないと次にはつながらないだろう。それとも本当に学校をやめさせたいのか?」

「………………」


「学校とは学業だけを学ぶ場ではないはずだ」

「そう、だな。少し口が過ぎたようだ。後で謝罪をしておく」


「そうした方がいい」


 そう言って席に着いた後、何やら東野に集まっていたはずの視線が俺に集中していた。

 そしてさっき言ったことが、急に恥ずかしくなって、とりあえずうずくまって寝ることにした。


 帰りは緋山に誘われ一緒に帰った。


「かっこよかった」とか言われた。

 くそ恥ずかしかった。





 ――…………書きつかれた。



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