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ギャルゲー乙女ゲー観察日記  作者: 蛇真谷 駿一


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 ××××年 十月十日


 昨日大変だったと書いたが、あれは嘘だ。


 今日の方が圧倒的に大変だった。


 順を追って書き記す。


 ――しかし……長くなりそうだ。日記の残りページ持つだろうか……。



 まず事の始まりは、放課後に緋山が春風さんにこっそり屋上へ呼び出されたことだった。

 俺は近くにいたので、盗み聞いた。


 学園祭前のイベントでは、そんな話は知らなかったので、ゲームのシナリオが関係ない、春風さん個人の話なのではと、ワクワクしながら後をつけた(後後考えると、俺の知らない話の可能性もあったわけだが)。


 この時点で俺が人としてだいぶ最低なのは置いておく。



 屋上の入り口付近で覗く気満々でいると、後ろに何者かの気配を感じ、振り向くと、そこにいたのは星海さんだった。


 驚いた表情の星海さん。

 そして一言、

「え? ここにうちを呼んだのってあなたなの?」

 と言った。


 その後も「もおー下駄箱に手紙が入ってたからビックリしたよ! 告白か果たし状かわかんないしー」と俺が冗談で手紙の呼び出しをしたのだと勘違いをしたまま話しかけてきた。


 とりあえずすぐにその誤解を解いて、その上で屋上に先客がいることを伝えた。

 その言葉に星海さんが屋上を覗き見る。


 そして緋山と春風さんがいるのを確認し、納得した表情を見せた。


 すると話は、何故俺がこの場にいるのかと言うことになり。


 俺が若干言いよどむと、星海さんも俺がやろうとしていることに見当がついたのか、ニヤニヤしながら言ってきた。


「ふむふむ、わかったわかった。美鈴ちゃんだね? 目的は。……ふふ、流石に幼馴染とは言え男女が二人っきりは気が気じゃないってことかなぁ?」


 やることに見当はついたようだが、理由に関しては大幅な勘違いをしているようだった。

 ――春風さんも星海さんも思考回路が似ているのか、ほぼ同じ勘違いをしてるじゃないか。


「仕方ない。うちも付き合ってあげようじゃないか!」


 何がどう仕方ないのかわからないが、何故か星海さんも二人の覗きに参加し出した。


 ……その時は気づかなかったが、改めて考えると、俺の覗きに付き合うという名目で、星海さん自身も見たかった――というか、気になったんだと思う。


 ちなみにその間もずっと二人は世間話のようなのが続いていたわけで、改めて覗きを再開したすぐあとくらいに、少し沈黙があった。


 もしかしたら本題に入るのかもしれないと、俺も……恐らく星海さんも思ったはずだ。


「あのね……遥人……」

「うん? どうした……? 改まって」

「今からが本題…………ふぅ」


 一つ深呼吸をして、沈黙する春風さん。


 ふと見ると、星海さんはそれを緊張した面持ちで覗いていた。


 どう見ても俺より覗きに集中しているじゃないか……と思う一方で、俺はこの時見ていた光景に違和感を覚えていた。



 その違和感を解消する前に、春風さんが動いた。



 無言で緋山に近づき、そして――――。




 緋山の唇を奪った。




 それを見たときに昨日の疑問の答えと、この時感じていた違和感の正体を思い出した。


 と言うか何故昨日思い出さなかったのかと思う。



 ゲームの――『キミだケに』で春風美鈴が主人公を屋上に呼び出すイベントは、実は存在している。

 だがそれは、文化祭()……主人公が、攻略キャラの一人――それも春風美鈴と意外と付き合うことになった後のイベントだった。


 だからこそ記憶から抜けていたのかもしれない。


 以前にも記したとおり、『キミだケに』は、文化祭にて攻略キャラと付き合うことになった後の残り十五日間も、話は続く。

 その中で、付き合うことになったキャラとは別のキャラの好感度によって、その中のイベントや、エンディングが様々に変化するといった特殊なゲーム。


 この時俺が目撃したのも、通常個別ルートが確定した後に発生するはずのイベントだったのだ。


 そしてそれは、主人公の選択肢次第で、その個別ルートが確定したキャラと別れ、春風美鈴と付き合うという新たなエンディングまで用意されていた。


 ――それは『乗換エンディング』もしくは『略奪エンディング』と呼ばれていたエンディング。(あくまでユーザーが勝手につけたものだが)



 俺がこのイベントについて思い出したと同時に、ここにもう一人いることも思い出した。


 星海さん。



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