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××××年 十月四日
と言うわけで二週連続アポなし自宅訪問でした。
そう、ドアを開けた冷たい目をする緋山に、にこやかに伝える。
危うくドアを閉められそうになったが、何とかとどめる。
「今日は何の用だよ」
ほう、そんな態度でいいのか? お土産にカップ麺を持ってきてやったのに。
そう言い、袋から物を取り出す。
「いらっしゃいませ! 救世主!!」
うむうむ、それでいい。
緋山の家に来たのも昼過ぎ。外からは旨そうな料理の匂いも漂う時間帯だ。
無駄話もあれなので、唐突に本題に触れてみた。
「よう、最近妙に星海さんの事気にしているようだけど、なんかあったのかー?」
「!!??」
なんかめっちゃ驚かれた。
「な、なんで……?」
「いや、なんでって、見たらわかるし」
「あ、いやそうじゃなくて……なんでそんなこと聞くかってこと」
……ああ、星海さんの事を俺が気にしてるのかってことか。
もしかしたら春風さんから何か聞いてたのか?(誤解されたままの話の事を)
「いや、なんとなく気になってな。お前も星海さんも人気あるし」
「人気……やっぱりあるのか、星海さん……」
あれ、なんか勝手に落ち込んでいる。
なんかどんよりし始めたので、突っ込んだ話を聞いてみるとポロポロと本音を吐きだし始めた。(ええ、もちろん容赦はしません)
何でも東野や春野さんと混じって昼食をしたり、陸上部や文芸部(瀬戸さんと蒼月先輩との付き合いだろう)の関係で星海さんと話すことが増えたりで、気が付けば目で追っていたらしい。(しかもつい最近なんて、俺の知らない間に星海さんと蒼月先輩、緋山と瀬戸さんの図書館イベントのブッキングがあったらしい……それは見たかった)
中でも自分の夢について熱心に話す星海さんに、周りの女子にはない強い意志のようなものを感じ、妙に気になっているそうだ。
それはそうだろう。
それは本当に強い意志を込めているだろうし、熱心に自分の夢を話すのは、その場にいる攻略キャラに、自分の夢を邪魔することはさせないというアピールなのだから。
そこまで聞いたところで、緋山が正気に戻った。
「……はっ、おおお俺はいったい何を言って」
「気にスンナ。最近何だかんだでそういう話ばかり聞いてたから、俺は気にしないぞ」
「うわぁぁっ! 忘れろ!」
「いやだベンベン」
その後なんだかんだ根掘り葉掘り聞いてみたが、さすがにもう答えてはくれなかった。
気が付けば夕方だったので、帰った。
玄関を開けて少し歩くと、何やら色々タッパを持った春風さんと遭遇した。
「あ…………」
「ああ、春風さん。緋山に差し入れですか」
春風さんの持ち物から旨そうないい匂いがしたので、間違いないだろう。
一応カップ麺は二個持って行ったが、やはり必要なかったようだ。
ただ当の春風さんは妙に気まずそうに顔をそむけていた。
……ああ、恐らく恥ずかしいのだろう。
男の家に料理を持っていくなんて……通い妻か! ……うらやま。
引き留めるのも変な話なので、早々に分かれ、家路についた。
しかし、緋山の話を聞いたときもそうだけど、本当に俺は観察できてないな!
……まあ、過ぎたことだし、そもそもそこまで観察してたら、ただのストーカーか。
そろそろ佳境です。
終わりが見えてきました。
感想、お待ちしております。




