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××××年 九月三十日
今日は初めて(思い返したり、日記を読み返したりしてみると初めてだった)四葉さんと教室で、遭遇した。
藤原さんに部の事で用事があったので、教室を訪ねてみると藤原さんと一緒に四葉さんが話していた。
ものすごいレアな場面に出会えたようで感激していると(実際はそれなりに教室に来ていたらしい)、二人が俺に気付いた。
二人の表情を見ると、藤原さんは何とも言えない微妙な顔をしており、対する四葉さんはものすごく嬉しそうな笑顔をしていた。
話を聞いてみると、どうやら今日は体調がすこぶるいいらしい四葉さんが、友人を家に招待したいといったとのこと。
俺の記憶が正しければ、イベントでもそういうのがあったと思う。
主人公が四葉さんの好感度をそこそこあげることで発生するイベントで、本当は六人いる友人全員を誘ったが、急な話で他の人が都合が合わず、結果主人公一人で、四葉家にお邪魔することになる話だったはずだ。
ゲームの話はさておき、藤原さんが多少微妙な顔をしているのは、やはり四葉さんの家がお金持ちなのを知っているので、気おくれしているのだろう。
俺も悩んだが、一応流れ的に他に誰か来るのか聞いてみた。
すると、
「それが、皆さんに声をかけたんですけど、都合がついたのは今の所私と二番目にお友達になってくれた春風さんだけなんです……」
「え、緋山行かないの?」
予想外の答えについそう聞いてしまった。
「ええ……緋山さんはご兄妹ともにお忙しいみたいで」
じゃあもうすでにイベントとかは関係ないわけだ……緋山が断ってるわけだし……。
そして……五番目の友達って妹さんかよ――ってなった。
だって兄より先に攻略キャラと友達になるってどういう事だって話だ。
それはそれとして、四葉さんの二番目の友達が春風さんなのは知らなかった。
そんな設定はなかったと思う……いや、俺はそこまでやりこんでいたわけじゃなかったし、知らないイベントの一つや二つはあるだろう。
…………ともかく、俺自身は今日、特に用事があるわけではないので、断るのは四葉さんに悪い。
てなわけで、お言葉に甘えてお邪魔させてもらうことにした。
それを聞いた藤原さんも一緒に行くといい、放課後に
「あれ? ……その子は」
「ああ、同じ部活の藤原さん。彼女も四葉さんの友達」
「そうなんだ。よろしくね?」
みたいな会話の後、皆で四葉さんの家に向かった。
感想を一つ。
家がめっっっちゃ、でかかった。
ゲームで外装は知っていたつもりだったけど、そんなもんじゃなかった。甘く見てた。
そして案内されるまま四葉さんの部屋に向かうことになった。
ゲームでは確か、向かう途中に四葉さんのお父さん――つまり四葉家の当主とばったり出会い、そこで主人公が気に入られるという展開になったはずだ。
が、すでに展開だけ言えばゲームとは関係ない感じになっているので、誰とも会うこと四葉さんの部屋に着いた。
部屋自体はこじんまりしていたが、置いてあるものが明らかに高価そうで、無駄に触ったりしないようにして、四人で遊んだ。
と言ってもトランプなどをしながら話しをしていただけだが。
一瞬だけハーレム状態か!? ……とか思ったけど、聞き手に回っているうちに話している内容がガールズトークになっていったので、意識されてないのは確定だった。
まあそのおかげで、
「あら、では春風さんはその幼馴染の方の事を……?」
「うぅ……内緒にしててね……?」
はっきりと春風さんの言質をとったわけだが。
それでもやはり、四葉さんも春風さんも、俺という男がいる状況を忘れているようだった。
幸い藤原さんはチラチラこちらの様子を見ていたので、完全に忘れられているということはなさそうで安心した。
ちなみに四葉さんと春風さんはある程度話が落ち着いた後、俺がいることに気付き、顔を赤くさせながら慌てていた。(特に春風さんが)




