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×××○年 四月一日
驚くべきことが起こった。
とりあえず最初に記しておく。
これは今日がエイプリルフールだからではない。
これは今日がエイプリルフールだからではない。
大事なことなので二回記した。
さて、何が起こったかと言うと、俺が前世でやっていたゲームのキャラクターがいた。
今日は高校入学式だったので、学校に向かう途中、横目でちらりと見ると、俺と同じ制服を着た女子が歩いていた。
最初は「すげー美少女だなぁ」ぐらいにしか見てなかったが、見ているうちに思い出した。
俺が小説のネタ探しのためにやったギャルゲー『キミだケに』の登場人物だった。
そしてその後にも見たことのあるキャラが目に入ってきたので、もう間違いなかった。
普通ならこれで「誰かと仲良くなってやる―」とか「ハーレムじゃー」とか思うんだろうけども「これは面白いことになってきたなー」なんて俺は内心、傍観者的な目線で見ていた。
何故なら俺と同じクラスにはそのゲームの主人公デフォ名『緋山遥人』君がいたからだ。
『キミだケに』はマイナーな会社が作った、何番煎じかわからないほど王道なギャルゲーで、高校二年の夏休みまで無気力だった主人公『緋山遥人』が、何を思ったか夏休み明けの九月一日から気持ちを切り替え(理由は忘れた)、同級生や、先輩後輩など女子たちとの『友好度』を上げていき、十月十五日の文化祭二日目で攻略キャラの一人に告白し、付き合うというよくあるゲーム内容だった。
唯一他のギャルゲーと違うことがあるとしたら、ゲームのラストは十月十五日ではなく、十月三十一日だということ。
そして、付き合うことになった攻略キャラとは違う女子との『友好度』によって、その十五日から三十一日のイベントが変わり、エンディングもそのイベントに左右されるといったものだったということ。
まあとりあえずゲームの内容は一旦置いておく。
とにかく、主人公がいるのであるなら、余計なことはせずきっちり傍観を決め込んで、なんだったら今後の小説のネタにさせてもらおうなんて考えてる。
それに、成績とかはともかく、自分の容姿に自信はないしね。
……ただ、これだけならそこまで驚きではない。
いや、驚きだが、俺自身転生というトンでも体験を経験しているので、『キミだケに』の世界に転生したと思えば分らなくもない。
それだけじゃなかった。
もう一つ。
『キミだケに』とは関係ないが、見たことのある顔もいた……。
これまたネタ探しに手を出した乙女ゲー『キメラレナイノおんりーわん!』と登場人物も同じクラスだったのだ!
『キメラレナイノおんりーわん!』略して『キメわん』も、『キミだケに』を作った会社の作品で、高校二年の夏休み終わりに転校してきた主人公デフォ名『星海光』が、転校初日である九月一日の強制イベントで、学校のイケメンに好意を持たれ、彼らのアプローチを受けつつ、その中から攻略したいキャラの『親密度』を上げ、心の隙間を埋めることで、十月十五日の文化祭二日目の最後で晴れて恋人同士になるといったもの。
こちらは『キミだケに』と違い、最初から主人公に対する好感度は高いので、その中でより『親密度』が高いキャラが攻略キャラとなるもの。そして最後は十五日の文化祭でエンディングを迎えるものだった。
こちらもゲームの内容は一旦置いておくが、このままいけば、高二の夏休み終わりに主人公が転校してくるというわけだ。
そうなれば『キミだケに』と『キメわん』のストーリーが同時に始まるということ。
…………それはかなり面白そうである。
とりあえず両方の登場人物とはそれなりに仲良くしておこうと思う。
――まあ、ゲームの内容とかの記憶は少しずつ薄れてるけど。
どうやら今日から三年間は、今までの日記とは違う、楽しい観察日記になりそうだ……!
感想などありましたら、よろしくお願いします……。