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××××年 九月二十二日
今日は緋山が風邪で休みだった。
見舞いに行こうか悩んだが、確かミニイベントでお見舞いイベントがあったはずだから、緋山に多少いい思いをさせてやろうと、行かなかった。(決して面倒になったからではない)
それはさておき、今日は部長会議だった。
今回の議題は、迫る文化祭についてだった。
とは言え、あらかた決め終わっているので、細かい部分の詰めだけし、早々に会議は終了した。
すぐに部室に戻ろうと思ったが、何故か東野が、会議が終わるのを待っていた様子だったので、観察してみることにした。(多分待ってたのは俺じゃない)
すると、やはりと言うべきか東野が待っていたのは天野先輩だった。
「霧彦さん、少しいい……ですか」
おお、東野が敬語だ。ちょっとレアだ。
「ああ、英司か。どうした?」
「実は折り入って相談したいことがありまして」
「お前が……俺に……?」
天野先輩は困惑した様子。
確かに今までの東野を見るに、相談なんてしなさそうだもんね。
しかし、東野がこのタイミングで相談と言えば…………まさか。
「はい。ただ……その、少し恥ず……いえ、言いづらいことなので、出来れば二人で話したいんですが」
……うーん、恋愛相談で確定かな……
「は、え、あ? ……あ、ああ、わかった」
天野先輩も困惑気味ながら了承していた。
うーん、東野も相談する相手が少ない(友達少ない)からと言って、まさか天野先輩に相談するとは……。
どうなることやら。
なんてこと思っていると、
「盗み聞きはよくないと思うわー」
と耳元で囁かれた。
びっくりした。死ぬかと思った。
俺を囁きで殺そうとしたのは、もう一人の生徒会長、桐野先輩だった。
「ふふ、驚かせてごめんなさいね? でも本当に盗み聞きはよくないわよ」
「あ、はい。すみません、少し気になって」
「私に謝ることじゃないんだけどね。でも確かに気になる会話をしていたわね」
ちゃっかり桐野先輩も聞いてるじゃないか! ……とは言わなかった。
「あの東野君が相談かぁ……あの感じ……もしかしたら恋愛相談かもね」
わくわくした顔をした桐野先輩の、的を射た一言に内心ドキドキながら、平静を保ち話をつづけた俺。
「そんなまさか。……というか、あれ? 桐野先輩は東野のこと知ってるんですか?」
俺がそういうと桐野先輩はきょとんとした顔で言った。
「それはそうよ。彼は有名人だもの。IQ160越えの天才で、両親はお医者さん。そしてあのルックス。噂になるのも仕方ないと思うけど?」
あー……確かに言われてみればそうかと思った。
一年間一緒のクラスにいたせいで、感覚が狂ったかな?
普通は注目の的になるはずなんだ。
「ま、恋愛相談以外であるなら、天野君に相談して正解ね。恋愛相談だったら失敗だけど。天野君、そういうところ疎いから」
桐野先輩はその後「じゃあね」と言い、去って行った。
確かに俺も天野先輩に恋愛相談は失敗だと思った。
しかし……天野先輩が東野の相談事を桐野先輩に悟られないか不安である。
桐野先輩の鋭さならすぐに気づいてしまいそうな気がするからだ……。




