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××××年 九月十八日
今日は文芸部に一人時期はずれな見学者が訪れた。
今日は藤原さんも玉井君もおらず、今のところ俺だけ。
蒼月先輩は最近来ていない。
「ここが文芸部。私も在籍してる部活ね」
「へぇー……ふふ、結衣ちゃんてば本を読んでるだけじゃないよね?」
「失礼なー! ちゃんとがんばってるもん!」
と言う楽しげな声が部室のドアの前から聞こえてきた。
一人は瀬戸さんだろう。
大人しい彼女にしては珍しく大き目な声ではあったが。
そしてもう一人は知らない声…………いや、多分知ってる声だ。
そんなことを考えてるうちにドアが開いた。
「おはようございます」
「失礼しまーす……」
にこやかに入ってくる瀬戸さんの後ろには、恐る恐ると言った感じで入ってくる少女がいた。
緋山だ。…………決してTSなどではなく、緋山妹だ。
「あ、あれ? お兄ちゃんの友達さん……?」
これはこれは、どうも妹さん。
「あれ? 部長と知り合い……?」
以前まででそこそこ記している通り、緋山の家にはそれなりに遊びに行っているので、妹さんとも知り合いだ。
と、俺が説明するまでもなく、妹さんが瀬戸さんに説明していた。
「そうだったんですか」
話を聞き終わった瀬戸さんが俺に話しかけた。
「そうなんですよ結衣ちゃん。と言うかお兄ちゃんとも知り合いと言うことにちょっと驚いたよ」
が、妹さんが答えた。
「あはは……緋山さんにはお世話になったの。この前にも勉強でわからないところをわかりやすく教えてくれたし」
ぬ、それは確か序盤のミニイベントであった気がする。
ふむ、そういうゲームのようだけど、考えてみれば普通なことは簡単に起こりうるのだろうか。
が、妹さんはそのことを聞いてもやれやれと言った顔をしていた。
「うーん、それは偶々でしょう。普段は不甲斐ない兄なのです。そんな兄ですがどうぞよろしく。…………それにしても友達さん、部長さんなんですね。不甲斐ないお兄ちゃんと同い年なのにすごいです」
「お前さんの兄が不甲斐ないかは置いといて、部長の件は他になってくれる人がいなかっただけだよ。妹さんこそ、うちの可愛い後輩と友達だったんだ」
「大親友ですよ」
「お二人ともなんでそんな呼び方で……」
「「気に入っているから」」
そんなやり取りをしながら、瀬戸さんが妹さんをこの部に連れてきた理由を聞いてみると、遅めの部活見学とのこと。
と言っても恐らく友達の部活についてきただけなのだろうと考えている。
で、瀬戸さんはやり掛けの短編を書き始め、妹さんは色々と見て回り、用があるからと帰って行った。
帰り際に「また来ますからー」と言い残して。
……まあ、別に部員以外来てはダメと言うわけじゃないのでいいけど。
一応瀬戸さんには、程々にさせておいてくださいねと言っておいた。
最後、部室を最後に出るとき、ノートの忘れ物があった。
名前を見ると瀬戸さんのだったので、明日届けてあげよう。




