19
××××年 九月十日
なんか昼休みに藤原さんに呼び出された。
……最近呼び出されること多いな……。
何かと思っていたら、昨日部室に来なかったことが原因で、ちょっと怒ってらっしゃった。
どうも、せっかく原稿が完成したというのに、部長が部室に来ず、待ちぼうけだったとのこと。
それは確かに申し訳なかったです。
でもそれには理由があったのです。
そう続けて、言い訳しようとしたが、どうやら藤原さん、少し待った後俺を探したらしい。
そしたら窓の外にニヤニヤしながら女子と帰宅する俺の姿が目に入ったと。
ちょっと待ってほしかった。
まず東野も一緒にいたし、そもそもニヤニヤもして……たかも、しれない……うん、突然東野と帰ることになって戸惑っている星海さんを見てニヤニヤしたかもしれないぞ……。
ともかく、理由はどうあれ藤原さんを怒らせてしまったことは事実であるので、俺には謝り倒すことしかできなかった。
最終的に、今週の休みに図書館で宿題を手伝うのと、お昼を奢ることで何とかおさまった。
今日は微妙に疲れたので、もうねる。
××××年 九月十一日
今日も今日とて星海さんはあまり教室を出なかった。
最近は春風さんを通じてや、陸上部の見学の時に一緒だったこともあり、緋山ともよく話しているのが目に入っていた。
なので今日も割と二人そろっての観察がしやすい。
今日は、春風さんがさりげなく東野に話を振り、元々東野とも仲がいい緋山が話を広げた。
意識していないだろうが、地味に連携プレイで東野を援護してた。
今まで東野を避けてきた星海さんだが、東野が悪い奴ではないことは分かっているのか、邪険にはしていない様子だった。――困った顔はしていたが。
観察はほどほどにしておいて、今日は早々に帰ることにした。
二人の主人公が一緒にいるのは確かに観察しやすい。
だが、未だ俺が星海さんの事を好きだと勘違いしている春風さんが、もう一段階勘違いして、東野を加えた三角関係を頭の中に描き出したら不味いからだ。
――何度も誤解だと訴えているんだが、「東野君に気を使って……」とか言い出してたので、恐らく誤解を解くことは不可能に思える。
その帰宅途中、立ち読みがてらコンビニに寄ると、見たことのある小さい生物がいた。
「ほえ? ……あ、あの時の」
宮倉くんだった。
どうやら今日は部活が休みらしく、すぐに帰宅したようだ。
そこで、今まであまり聞く機会がなかったので、今の陸上部の状況を聞いてみた。
以前記したとおり、男子陸上部の指導者も方針も丸々変わり、今は楽しんで勝つことを目標にしているとのこと。
――その方針に変わってからも、記録が落ちることもなく、それどころか少しずつ伸びていることから、しばらくはその方針で行くらしい。
それと最近まで宮倉くんは自分がいじめられていると思っていたと。
だが、それはたまたま遭遇した女子生徒が颯爽登場し(宮倉くんの主観と思われる)、実はいじめなどではなく、ただ少しからかっていただけと言う事実を教えてくれたらしい。
陸上部の部員も本人がいじめと感じているとわかり、しっかり謝ってくれたとのこと。
その後は問題もなく楽しく部活に励めているらしい。
……しかし、見事に原作通りの流れに思えたな。
恐らくその女子生徒(てかほぼ星海さんだろう)はそんなつもりではなかったであろう。
もっと言うと、多分自分の意志とかではなく、巻き込まれる形で始まり、あれよあれよと言う間に気が付けば話が丸く収まった感じだろう。
……まあだとしても、宮倉くん自身がその女子生徒(あくまで女子生徒で押し通す)を原作通りの印象で見ているのは事実なわけだ。
……イベントを回避する気はあるんだろうけど……出来てないよなぁ……。




