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××○○年 四月三日
七歳の誕生日に姉ちゃんから余ったノートを貰った。
何の嫌がらせかとは思ったけど、どうせだからこれを期に、毎日寝る前に日記を書いておこうと思う。
日記を書くに当たり、まずは俺が体験した不思議な出来事から記そうと思う。
誰に見せるわけじゃないけど、小説家志望としてネタになりそうなことはすべて残しておこうと考えたからだ。
俺は前世の記憶がある。
前世の知識で――というか、ネット小説とかマンガの知識だけど、恐らく転生、だと思う。
でなければ、小学生になったばかりの俺が、こんな子供らしくない日記を書くわけがない。
前世の俺は小説家志望の二十四歳のさえない男だった。漠然とした考えの中ただ生きていた俺(前世)は突然交通事故で死んだ。
そして気が付いたら知らない女性の胸を吸っているという衝撃に見舞われたわけである。
そこでまた意識を失った俺が次に目覚めたとき、俺は四歳ぐらいだった。
ちょうど物心がついてきたあたりなのかもしれない。
俺の生年月日は俺(前世)が死んだ日だった。故に最初は死んだ後に生まれたばかりの子供に憑依でもしたのかと思ったけど、図書館に連れて行ってもらったときこっそり調べて、それは違う可能性が高いと思った。
俺の生年月日らへんの新聞をあらかた調べたが、俺の死亡事故については載っておらず、お悔やみ欄も俺の名前は見つからなかった。
割とひどい死に方をしたわけだから、記事にならないとは考えられない。
だから、俺(前世)はこの世界で存在していない。もしくはどこかで生きている。と考えてみたわけだ。
……そのあたりを深く考えると頭が変になりそうなので置いておくとする。
さて、この世界で新たに生まれた俺だが、やっぱり夢は小説家だ。
だからこそ、子供のころからしっかり勉強し、本を読み、自分が経験したことを日記に付け、今度こそ悔いのない人生を送ろうと思う!
…………万が一小説家になれなくても困らないように、体も丈夫にしておかなければ。
×××○年 三月三十一日
……日記もここまで書き続けると圧巻である。
自分で書いておきながらあれだが、七歳から十五歳の今までよくもまあ飽きずに書き続けたと思う。
今日は一日、明日の高校入学の準備に追われた。
俺が入学するのは『桜花流星高等学校』だ。
……何やら頭のおかしい感じの名前ではあるが、かなり立派な学校らしい。
昔どこかで聞いたことがあるのは気のせいなんだろうか?
まあいいや。
友達はみんな別の高校に行ってしまい、中学から一緒の奴はいないので、新しい友達ができるか不安だが、まあ何とかなるだろう。
さて、この日記もこのページで最後だ。
高校入学と共に新しい日記帳もスタートである。
なかなか感慨深いものがあるな。
よし…………寝るか。