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××××年 九月二日
昨日は星海さんに注目したので、今日は緋山を観察したいと思う。
昨日の今日なので、まだ星海さんの事も気になるが、それはまあ追々。
緋山は今日、クラスに入ってくるなり、俺を呼んだ。
何かと思って行ってみると、
「えと……あの…………」
緋山の後ろにオロオロした瀬戸さんがいた。
それを見てなんとなく事情は察したが、一応聞いてみると、やはり部長の俺に用があったが、俺が何組かわからず、二年の階でうろうろしているところを緋山が助けたらしい。
さっそく一年で接点のあまりない瀬戸さんと知り合ったわけか。
「ひ、緋山先輩! あの、ありがとうございました……!」
そんな緋山に深々と頭をさげる瀬戸さん。……律儀だわー。
――……最初は狙って瀬戸さんと遭遇したのかと思ったが、その時の緋山の表情を見て、偶然の可能性が高い気がしてきた。
それはそれとして、そういえば、緋山の妹さんもこの学校の一年だったっけ。
ゲームでは瀬戸さんと仲が良かったりしたような気もする……。
この調子で休み時間も誰か他のキャラに会いに行くのかと思っていたが、意外にも休み時間は去年と同じように、俺や東野とかと一緒に過ごしていた。
なりふり構わず行くのかと思っていたが、どうやら去年より少しはこの世界がゲームその物ではないことが分かったのかもしれない。
昼休みも緋山が動くか観察する予定だったが、藤原さんからメールで、昼ご飯を持って保健室に来るよう指示があった。
行ってみるとやはりと言うべきか藤原さんと四葉さんがいた。
のほほんと「お久しぶりですねー」と言う四葉さんは、とりあえず元気そうだった。
食事が終わり、雑談をしていると、保健室のドアが開いた。
見ると緋山だった。
「え? あれ? なんで?」
どうやら四葉さんに会いに来て俺たちがいて驚いたらしい。
とりあえず自分に指さし「三番目」藤原さんを見て「四番目」と簡単に説明した。
それでも緋山は分からなかったようで、藤原さんに説明が雑すぎると怒られた。
その後はちゃんと説明して、昼休みが終わるまで四人で仲良く雑談した。
放課後。
今日も今日とて部活に勤しむ。
放課後の行動も気になるが、観察に時間を取られすぎるのもよくない。
少しは文章を書く練習をしなくてはダメなのだ。
それに緋山は帰りに、少しグラウンドを見に行こうと言っていたので、奥仲さんに会いに行く気満々なのだろう。
今日はこれで終わり! ……と思っていたのだが、何故か文芸部に星海さんが顔をだしてきた。
どうも文化系の部を一通り見て回ってるらしく、ここが何部か知らずに来たらしい。
ほんとに運が悪いなぁ……。
ここが文芸部だと伝えると、少しだけ考え込んだ後、何かに思い至ったらしく、苦笑いで立ち去ろうとした。
ちなみに今日そこにいたのは、俺と藤原さんと玉井君と瀬戸さん。
つまり、もう一人いる部員――蒼月先輩はその時まだ来てなかったのだ。
星海さんもここが文芸部と言うことは、蒼月先輩が来る可能性があると気付いたんだろう。
俺はさすがに引き留めるつもりもなかったが、残念なことに、他の三人は部員増員に意欲的で、しきりに引き留めた。
それでも「ご、ごめんなさい。他の部も見て回ろうと思ってたので、今日はこれで」と早口でいい、足早にドアに向かう星海さん。
――……これはもしや。
と考えた矢先に、部のドアが開いた。
やはりと言うべきか、ドアを開けたのは蒼月先輩で、そしてちょうど、部室を出ようとした星海さんと対面する形になった。
また絶妙なタイミングになった。
後姿なので顔は見えなかったが、星海さんはきっとひきつった笑みを浮かべていたのだろう。
……今日ではっきりしたが、やっぱり星海さんは不運属性だ。
星海さんはすぐに「失礼します!!」と言って走り抜けていったが、それを見て蒼月先輩がクスクス笑っていた。
選択肢で言うなら、好感度が上がる選択をしてしまったようだ。
さて、今日は緋山が中心だったので、明日は星海さんにしてみようか。
だけど、まだ接点がないから、あんまりやりすぎるとストーカー扱いされそうだ。
……気を付けて観察する!
……ねむ…………ねる。




