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俺は、小説家志望の男だ。
あ、いや。
正確に言えば小説家志望の男、だったになる……んだと思う。
順を追って話そう。
最初に、小説家志望とは言ったものの、そこまで真剣に書き続けてきたわけでもない。
ネットの投稿サイトに自分の書いた小説を載せてみたり、時折なんかの新人賞に応募してみたりしているが、ほとんどはアルバイトに時間を使ってしまっていたりする。
高校までは夢なんて全く考えたこともなく、ほぼ思いつきで小説家になりたいと思ってしまった俺は、今までほとんど勉強してなかったため国語力もなく、小説自体多く読み始めるようになったのは中学の終わりごろからだったため、文に対する知識も薄い。その上平々凡々に過ごしてきた故に、ネタになりそうな人生経験も何一つない。
そのため少しでもネタの足しにしようと小説の他にゲームなんかにも手を出したりした。
…………まあ、それも逆にそっちにハマってしまう失態を犯す羽目になった。
結局、努力の足りない俺は、新人賞などは一次審査さえ通ることなく、投稿サイトの方も更新が途絶え気味になりつつある。
それでもぼんやりと、小説家を夢見ていながら過ごしていたある日。
俺は車に轢かれた。
別に動物や子供を助けようとしたわけではない。
信号待ちしていたところに車が突っ込んできただけ。
どうやら居眠り運転のようだ。
どうしてわかったかと言うと、はねられて、宙に浮いてる間に運転手が目を覚ますのが目に入ったからである。
そして短いような長いような浮遊感の後、地面に落下した。
痛みはそこそこ。感覚が薄れてるだけかもしれないが。
近くからざわめきが聞こえる。
どうやら人が集まってきたっぽい。
悲鳴のようなものも聞こえる。
――うーん、これは立派な人生経験だ……。ネタに使えるかもしれな、い……。
大した危機感も持ってない俺は、ぼんやりとそんなことを考えながら、意識を失った。
そして目が覚めたとき、
『……知らない天井だ…………………………あ、違う。これ地面だ』
俺はまた宙に浮いていた。
今度は轢かれた勢いとかそういうのではなく、ふよふよしていた。
しかも今は痛みも全く無く、妙に頭もすっきりしていた。
何かと思い、周りを見渡すと、先ほどまで俺がいた場所が見えた。
どうやらここは俺が事故に会った付近の空中のようだ。
寝てる間に時間がたったのか、救急車も来ている。
『なるほど、これが臨死体験! 幽体離脱とも言うべきか』
貴重な体験をしたぞ、とうれしくなるが、そうもしてられない。
さっさと戻らないと。
そう思い、ふよふよと自分の体に向かってみる。
そして気づく。
『あ、これ無理だ』
そこにあった俺の体は、見るも無残だった。
原形こそとどめてはいるが、関節はおかしい方向に曲がり、ところどころ骨が出てる。
そして酷いのが頭部。頭からありえないほどの血が出ていて、顔の方の原型はない。
どうりで頭がすっきりすると思った。
どうも一度轢かれた俺は、車道に吹っ飛ばされ、結果後続の車にも轢かれたらしい。
で、冒頭に戻る。
『さて、どうしようか』
と呟いた矢先、自分がどんどん空に向かっているのに気付いた。
『……なるほど、自分の死を理解すると、文字通り天に召されるのか……』
そして俺の意識はまた途絶えた。