神様入門4
気がつくと元の白い部屋に戻っていた。
「友達は呼んどいたからそろそろ来るだろ。その前に君の肉を取りに行くぞ」
「何処に有るんですか?」
「君の倉庫だ。本人以外は入れないからな。わかったらさっさと取ってこい」
「はあ…」
「………」
「………」
「…いや、取ってこいよ」
「どうやってですか?」
倉庫が何処にあるか知らないし、この部屋からの出方もわからん。
「そんなこともわからんのか。神だから行きたいと思えば行きたい所に行ける。わかったらさっさと行ってこい」
流石神様。倉庫行きたい倉庫行きたい倉庫行きたい。
相変わらず真っ白な部屋のままだ。
「師匠、景色変わりませんよ」
返事がない。見渡してみると師匠が消えていた。
代わりに肉と野菜が部屋の隅に積まれている。
「ここが倉庫か…」
とりあえず肉と野菜を全部手に持った。
あれ?どうやって帰るんだ?
やばい聞くの忘れた。ここに来るときは俺の倉庫に行きたいと思ったら行けた。じゃあ帰りは師匠の所に行きたいと思えば良いのか?
師匠師匠師匠師匠師匠。
気がつくと師匠が目の前にいた。
「えっ?」
「あ?」
互いに無言の時間が過ぎる。
師匠が右手を上げる。その手にはいつの間にか巨大な鉄製の車輪が握られていた。
「この…」
師匠が車輪を大きく振りあげる。
「馬鹿者があああぁぁぁ!!」
頭が割れるような痛みを感じた。
視界が明滅した。
「あら、お二方はそんな関係だったんですか?」
師匠のものではない大人の女性の声がした。
その方向を見ると二人の人間…ではなく二柱の女神がいた。
一柱は紫色の甲冑を着た髪の長い女性。
もう一柱はピンク色の髪に金色の瞳の中学生位の少女だった。
師匠は二柱を見て「うげ…」という声を洩らした。
どうやら彼女らが師匠の友達らしい。
「そういう関係って…どういうことですか?」
「相手に直接転移するのは恋人どうしがすることなんだよ」
少女の女神がにこにこ笑いながら言った。
「しょ…紹介しよう。こっちのゴツイおねーちゃんが記録の女神。ボゲボケッとしたガキが破魔の女神だ」
師匠がからかわれた腹いせか失礼な紹介をする。
「んで、これが弟子。教育の仕方が悪かっただけだ。紹介も終わったことだし、パーティーを始めようじゃないか?」
「わたくしとしてはパーティーよりもお二方の関係のほうが気になるんですけど」
「師匠と弟子。それ以上でもそれ以下でもない」
師匠は記録の女神の興味をバッサリと切り捨てた。
「さあ、パーティーパーティー」
部屋にテーブルやホットプレートが次々現れる。
「相変わらず姫の部屋には何も無いんだね」
「姫言うな!」
姫?
師匠は姫呼ばわりされるのが苦手なのか。
よし、さっきの乱暴の仕返しだ
「ひ…」
「次に姫とか言ったら全身の肉を削ぎ落とす」
「暇だから何か手伝おうかな~なんて…」
ヤバイばれてる。
「手伝いたいなら野菜と肉を切ってろ」
はーい。
包丁よ、出ろ!
俺の手に最高級の包丁が握られている。
「料理は得意なんですよ。一人暮らしでしたので」
「なってないな。これは人間のやり方だ」
師匠の言葉に振り向くと、師匠は既に肉を裁き終わっていた。
「神はこうするんだ」
師匠がそう言った瞬間、肉と野菜は適度な大きさに切られ、テーブルに並んでいた。
「神は考えれば何でも出来る。まあ天界限定だがな。下層は信仰心が無いと出来ない。世界の制御は主に人間がしているからな。何はともあれ、これが神のやり方だ」
師匠が椅子に座って菜箸を手に取る。
「さあ、焼き肉パーティーの始まりだ」