神様入門3
「君、工作下手だな」
「はい」
「なんだこれは」
「犬です」
「どの辺が?」
師匠の言った通り体を宇宙サイズから十五メートル位に小さくしてその後陸の粘土を練ってそれに生命を吹き込む。
「まあ進化の過程で最適化されるだろうが。この形じゃあ進化しても犬にならないかもな」
「じゃあ何になるんですか?」
「う~ん、魔獣?」
ガックリ…。
「もういい、さっさと人間を創るぞ、と言いたいところだが君は下手くそ過ぎる。やってやる。人間は他の生物とは作り方が違う」
ブッチィ!!
痛!!
「こうやって神の肉を千切って…」
師匠が俺の俺の腕の肉を千切ったー!!
「こうすることで最初から言葉を喋れる…いつまで転がってるんだ?」
「痛いです!」
「神の肉体だぞ。唾でもつけとけ。すぐ治るわ」
流石神の体、もう治った。
「よし。次」
ブッチィ
ぎゃああああ
人間の数は百人以上になった。
百回以上腕を千切られた。
「何時まで泣いているんだ?」
神の肉体なので直ぐに再生するが、精神的ダメージが大きい。
「君、さっさとコイツらに指示を出せ。人間は世界を手っ取り早く安定させるのに最適なんだ」
「指示って何を?」
「そこらに蔓延ってる魔獣を狩る。畑を作って作物を収穫するとかだ。一部は君に持ってくるように言え」
成る程。植物と動物を人間に管理させるのか。
「わ…わかりました。はーい皆さん注目」
「君、引率の先生じゃないんだぞ。もっと威厳たっぷりに言え!」
「威厳たっぷりって…」
「君にも中学生時代の痛い思い出くらい有るだろ!」
「無いですよ」
「良いから、もっと『中二ちっく』に!」
『中二ちっく』ってなんだよ。
「人間達よ!万物の創造主である我が命じる!お前たちはこれから地に蔓延る魔獣を狩り、作物を育てそれらを食せよ。狩った魔獣や収穫した作物は忠義の証しとして我に捧げよ!」
「ははっ!仰せの通りに。我が創造主!」
人間たちが俺にひれ伏して早速狩りを始める。
何か罪悪感があるな。これ。
何はともあれこれでうまく威厳を示せただろう。
チラリと師匠を見てみる。
「キャハハハハ!受ける~。君、中二病かよ!『我』とか、君の一人称は『俺』だろうが!」
「ししょー!何笑ってるんですか!」
自分から『中二ちっく』とか言っておいて何笑ってやがる!
「い…いや、すまない君の一人称変化が面白すぎてな」
「師匠が『中二ちっく』とか言ったんじゃないですか!」
「いやだからすまんと言っているだろう」
そうこうしている内に人間たちが帰ってきた。
「我が創造主、小型の魔獣を狩って来ました。あと、食べられる植物を採取してきました」
「あ、ありがとう」
「『中二ちっく』に、『中二ちっく』にだぞ」
「うむ。これからも精進するがいい」
「ぶふぅ」
師匠がまた笑いやがった。
「よし、帰るぞ。一週間後にまた来るぞ。だが毎日収穫の一部を貢がせろ」
「そんなに搾取していいんですか?」
「これらの世界での神の力は人間の信仰心によって成り立っている。拝みたくなるような神秘性がないと世界は治められない」
「わかりました。人間たちよ、我は太陽が七回回った後に再び来る。だが、毎日収穫の一部を我に捧げよ」
「ははっ!仰せの通りに」
俺に挨拶をしたあと、人間たちは洞窟へ入っていった。
「おい、初めての収穫だ。帰ったら焼き肉パーティーだ」
「焼き肉パーティー?二人で?というか二柱でですか?」
「いや、そんな寂しいパーティーは有り得ないだろう」
「じゃあどうするんですか?」
「友達呼ぶ」
「は?」
「いや、だから友達を呼ぶと言っているんだ」
「えぇ!?師匠友達いたんですか!?」
「ケンカ売ってるんだなそうなんだな」