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14.キャッスル

 クローゼットから出された学生服は、クリーニング済みだった。逃避行中に作ったかぎ裂きまで綺麗に修理されている。


 ズボンをはいて……ポケットに携帯が入っていた。

 取り出して見つめて――もう一度、ポケットへ大事に収め、病室の外へ出た。


 仁が入院していた病院施設は、アルフレイ・ランドの首都中央に位置する、巨大な建築物の中にあった。


 これまた仁の家のリビングより広いエレベーターで降り、五階ぶち抜き吹き抜けの巨大エントランスを抜け、旅客機が横付けできる、一枚ガラス張りの広大な車寄せに出てきた。


 ナース、ウエイトレス、ポーター、作業員、事務員風、軍人、エトセトラ……。この建造物で働いてる全員ではないだろうかという人数が、そこで頭を下げていた。

 みんな額にクリスタルの女の子だったが。……ミアが意図的にでかい態度をしていたが。


 ――アルフレイ・ランドにおいて、軍将校とは格別な地位に立つのであろうか?


 実はアルフレイ・ランドとは軍事独裁国家で、ライラ少将は、その独裁者の子供だったりして。そんでもって、この国では、独裁者が調整者と呼ばれているのだろう。


 仁の防衛本能が働いた。ライラさんに対して、エッチな妄想をしてはいけない!


 ライラの後ろに続いて、腰を低くして外へ出る仁。

 空が青い。天井付きの車寄せから外へ出たことになる。


 くるりと振り返るライラ。仁の後ろを指さす。

「目的地は、今出たビルの隣です」

 つられて振り返る仁。

 二つ並んだ高層建築。ツインタワーとはいえない。デザインが正反対だった。


「今出てきたのが、右の塔。セントラルのキャッスルと呼ばれる建物」

 ピンク色とか、薄ベージュ色とか、なんとなく劣情をかき立てる色合いの力学的高層建築物が天に向かってそそり立っている。


 でも、キャッスルってお城じゃないの? 今まで独裁者の実家で寝ていた?


「そして左側の塔がこれからご案内申し上げますセントラルのコントロールセンター」

イタリアンレッドを基調とした、これまた官公庁にあるまじき配色のビル。キャッスルよりは丸っこいデザインで、やや背も低い。

 独裁者が辣腕を振るう国会みたいなものか?


「あの中で調整者がお待ち申しております」

 左というと……おお、懐かしい。


「お茶碗を持つ方ですね?」

「お茶碗?」

 ライラが訝しげに仁を見た。

「こちらですが……」

 もどかしかったのか、左手を挙げ、その手で左の塔を指さす。

 あれ? 通じないの? ライラ少将、ナイフとフォーク派?


「現在ジン様は陸上軍の保護下に置かれております。わが陸上軍の大尉が保護いたしましたので、便宜上、引き続き陸上軍が保護に努めることになりました。その事を事前に申し上げておきます」


 なんとなく……なんとなく、こう……きな臭いにおいがそこはかとなく……。


 仁は試してみることにした。

「海で溺れていれば海上軍の保護下に置かれていたのでしょうか?」

 ライラは、声を殺して笑った。

「海上軍にそんな力があれば、ですね。海に落ちていれば、ジン様のお命は無かったと思います」


 こ、これは――。陸上軍バーサス海上軍の図式ってヤツですか?


「なるほど」

 自分にどんな利用法があるのかわからないが、なんだかとっても面倒くさい事象に巻き込まれる予感。


「ところでジン様」

 態度を改めるライラ少将。なんだか、足をもじもじさせている。

「私、綺麗?」

 上目遣いの流し目。とっさのことでどう反応して良いのかわからない。


「綺麗な、お姉さんは好き?」

 これはあれ? やっぱ、僕が気に入ったの? 調整者なる独裁者をお父様と呼ばなきゃいけないの? 琴葉ちゃんの手前、それはちょっとまずい。


 ……いや、いやいや、琴葉ちゃんの立場が危なくなる。


「えー、あー、し、少将はお綺麗ですよ」

 無難に答える仁。


 ライラが太陽のような笑顔になった。営業スマイルではない。

「では、まいりましょうか」

 両手の指をちょんと合わせ、先に歩き出す。……なんか今の可愛かったぞ!


 仁は、不明瞭な期待に胸を躍らせつつ、左の塔、コントロールセンターへ入っていったのだった。


えーっと……。

酔った勢いで投稿……っと!

……。

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