源義経に転生した俺、天下取りよりフライドポテトを優先した結果、歴史が変わる
小池はジャンクフードを愛する、大人しい少年だ。
部活も運動部ではなく文科系。
漫画研究部に所属している。
放課後はその漫画研究部と軽音楽部とライトノベル研究会。歴史愛好会。夜間学校の生徒たちが集まり、一緒にカードゲームで決闘するのが日常だ。
部活動は? 漫画は? という無粋なツッコミはしてはいけない。
そこでジャンクフードを食べながら、ガヤガヤしているのが彼らの活動なのだ。
彼は大人しいが、ある一線を越えると激怒する。激情家の一面ももっていた。
こう書くと格好いいが、要は、頭が追いつく前に感情が走り出すのだ。
普段、大人しく知的ぶっているため滅多にその激情が表にでることはないのだが・・・
今日、その激情が出てしまった。
放課後。
小池はいつものメンバーで決闘を行った。試合順はトーナメント形式。いいところまで行ったがベスト4で歴史研究会のメンバーと決闘し、負けた。手に4位の景品である人参、じゃがいも、玉ねぎ、リンゴの入ったビニール袋を持っている。いつものメンバーの中に農家の子がいて、景品の一つとして提供したのだ。
小池は少し悔しい思いをしながら、その野菜セットを持ち、友人と帰宅していた。
その帰宅途中に舞を見た。
彼は奥手なので、あまり女性との接点はないのだが、それでも。それでも1名ぐらいはいる。それが舞だ。
といっても特別な相手という訳ではない保育園。小学校。中学校と一緒だったというだけだ。
自慢じゃないが苗字は既に忘れている。
つまり、小池にとってそこまで興味がある相手ではない。なんとなく保育園から一緒だな。ぐらいの感覚の相手だ。
なので、帰宅途中に舞がいたというだけであれば基本、奥手の彼はスルーしていただろう。
しかし、スルー出来ないシーンを見てしまった。
舞は誰かと話していた。
小池の知らない男だった。髪を染め耳と唇にピアスをつけたガタイのいい中年男性だ。
普段なら絶対に近づかない種類の男だ。
その男が舞を殴った。
それを小池は見てしまった。
普段、表に出ない激情家が表に出た。
考えるより走った。
気がつけば男を殴っていた。
その後、腹が痛みと熱を発した。
男が刃物で小池を刺したのだ。
舞の悲鳴があがった。
友人が駆け寄るのが見えた。
小池は状況を理解しようとしたが、そんな時間は無かった。
頭に衝撃を受けたのだ。
小池の記憶は途切れた。
ふと目が覚めると、見たこともない場所にいた。
まず、目に入ったのが畳だ。そして破れた障子に、ふすま。
その畳の上に時代劇で見るような和装の男達の死体があった。
「なんだ、こりゃ」
小池は一気に目が覚めた。
見ると自分も和服を着ていた。
なんか、腰が重い。
見ると腰帯に剣をぶら下げていた。
「なんだこりゃ」
体に違和感がある。
そう思い、体を触ってみると、腹のあたりの服が破れていて、血糊がべっとりついていた。
(さっき、舞をぶん殴っていた男に刺された傷か?)
小池はそう思った。
服が裂けている位置が同じだったからだ。
しかし―。
それにしては奇妙すぎた。
小池が刺されたのは、下校途中の路上だ。
こんな旅館の和室のようなところではない。
それに、服は切り裂かれ血糊はべっとりだが、自分自身に傷は無かった。
服も学校の制服だった。こんな時代劇の衣装の様な服ではない。
(時代劇といえば・・・)
小池は改めて周囲を見る。
まるで時代劇のセットだ。
畳、障子、ふすま、倒れている和装の男達。
まるで時代劇の屋内戦闘後のようだった。
「なんで、こんなことになってるんだ? 夢か?」
小池は首をひねった。
夢にしてはリアルすぎた。
やがて、足音が聞こえてきた。
「牛若丸様!ご無事ですか?」
その足音の主は駆けつけるなり、小池の元にきて心配の声をあげた。
「ん? 牛若丸?」
小池は首をひねった。
その名前は聞いたことがある。なんていったって放課後、集まっている連中の中に歴史研究会がいる。
牛若丸は、源平合戦の英雄 源義経の小さい時の名前だったと記憶していた。
「誰が?」
小池は目の前の人物に聞いた。
「あなたですよ。あなた以外に誰がいるっていうんです」
目の前の人物はイタイ人物でも見るかのように言った。
「俺が牛若丸??」
小池は不思議な顔をしている。
「大丈夫ですかい? 盗賊に襲われた衝撃で記憶とんだというんじゃないでしょうね?」
「盗賊に襲われた?」
小池は和室に倒れている男達を見る。
「盗賊ってあれのこと?」
「そうですよ。いやー凄いですね。僕を逃がした後、盗賊を倒したんですよね。さすが牛若丸様! 源氏の御子ですね」
彼はそう言って褒めた。
小池は混乱している。
とりあえず、頭の中を整理するために目の前の男にいろいろ質問することにした。
「わるい。その戦いのショックで混乱しているようなんだ。いろいろ教えてもらってもいいですか?」
小池は言った。
「”しょっく”ですか? 若者の言葉はよくわかりませんが、戦の興奮で記憶が飛ぶってのは確かにあるようです。僕が答えられるものならなんなりと」
「わるい、助かる。俺は牛若丸ってことなんだよな」
「なんですか、自分の名前すら忘れちゃったんですか? 源氏の棟梁。義朝殿の忘れ形見、牛若丸様があなた様ですよ」
小池はありったけの牛若丸についての知識を総動員する。
「鞍馬寺にいた?」
「そうですよ。 そして鞍馬寺で勉強するの飽きた。どっかに連れていけって駄々こねて、僕が奥州に帰るのに無理やりついてきたんじゃないですか」
(義朝ってのが誰だか分らんけど、俺が義経になったということか? これがライトノベル研究会がウルサイくらい熱っぽく言ってた”転生”ってやつか? )
ただ、ライトノベル研究会の連中が言っていたのとは大分、違っていた。
(確か彼らが言うには死ぬと白い空間に行って、そこで神様に会って、特殊スキルを貰って異世界にGO! じゃなかったっけ。こんな歴史上の人に転生するなんて聞いてないぞ)
小池は心の中でライトノベル研究会に文句を言ったが、そんなことをしても何も始まらない。
とりあえず自分が死んで義経に生まれ変わったということはわかった。
これが夢でなければだが。
次は今の状況を確認したい。
小池は自分の中の牛若丸についての知識を総動員する。
(確か、鞍馬寺にいて、そこから奥州に行って、源平合戦で勝利して、源頼朝に目をつけられて殺されるんだっけ。おい、ちょっと待て、義経って転生先としちゃ最悪じゃね? 最後殺されるんだぜ)
小池は顔を青くした。
悪役令嬢に転生し、バッドエンド回避というのは聞いたことあるが、義経に転生しバッドエンド回避というのは聞いたことがない。
いずれにせよ、悪役令嬢に転生した人と同じようにバッドエンド回避しなければならないようだ。
そうしなければ、せっかく転生したのに、殺されてしまう。
「ええっと、あなたが奥州にいくのに俺がついてきたんだっけ」
「そうですよ。まあ、気持ちは分からなくもないですしね。若いうちは見聞を広めるのもいいかなとおもいましたけどね。ただ、短慮はよしてくださいよ」
「え?」
「盗賊がこの宿を狙って襲撃してきた時、別な部屋に泊まっていた少女を庇って、斬られたじゃないですか。僕は死んだと思いましたぜ。それなのに僕を逃がして、その女性も逃がして単身戦うなんて正気じゃありませんって。いや、強いのはわかりましたけどね。今度は素直に逃げましょうよ」
男のこの話を聞いたとき、小池は強烈な頭痛がして蹲った。そして、この肉体の主の記憶が小池に流れてくる。
勉強を嫌って、出入り商人である橘次末春に頼み込んで鞍馬寺を脱出。奥州見物に出かけたはいいが、途中、宿に泊まっているときに盗賊が襲ってきた。
そこで牛若丸は宿に泊まっていた少女が盗賊に襲われているところを見て、激高し、盗賊に向かっていった。
この肉体の主の記憶はそこで終わっていた。
(待て、ちょっと待て。もしかして牛若丸は、そこで盗賊の攻撃を受けて死んだんじゃないか?)
小池はこの肉体の主の記憶を辿り、おそろしい結論に達した。
(それで、死んだ義経の体に転生した俺が宿ったってことか?)
小池は戦慄した。
既にこの肉体の主である義経が死んでしまっていること。
そして、その死にざまが、自分の死にざまに酷似していること。
彼はわけもわからず震えた。
そこに一人の少女が現れた。
「助けていただきありがとうございます」
と彼女は言った。
小池は驚いた。
舞にそっくりだったからだ。
話を聞けば、彼女は親と共に都をめざしていたという。
その旅の目的を彼女は言った。
「奴隷として身売りするためなんです」
なんでも、彼女の家は貧しく、親は子供を商品として売ってその場しのぎの物資を得ようとしたらしい。はじめ理由を聞いても言いよどんでいた理由もわかった。自分が奴隷として売られるためなんて、なかなか言えないだろう。盗賊襲撃直後という興奮状態だからこそ口を滑らせたのだ。
それを聞いて小池は、感情をほとばしらせた。彼は激情家なのだ。
ただ、幸いといっていいかどうか。
その激情をぶつける相手は既に死んでいた。
そして、その感情はただ、ただ、目の前の少女を”可哀そうだ”と訴えた。
同時に、小池は思った。
(牛若丸は彼女を守るために死んだ。彼女が不幸なままだと牛若丸も浮かばれないだろ)
「ええっと。名前はなんていうの?」
小池は聞いた。
「舞鶴と言います」
少女は答えた。
「舞鶴さん。奴隷なんかになる必要はないよ。俺と一緒に行こう」
小池は言った。
「えっ! でも・・・」
彼女はこの申し出に対して、混乱し、言葉を途切れさせた。
感情が高ぶっている小池はこういうとき、激情に身を任せ有無を言わせない時がある。
「なあ、いいだろ? 橘次さん」
小池は言った。
牛若丸の記憶から、目の前の男が奥州商人の橘次末春だと理解していた。
「牛若丸様の頼みでしたら断れませんね。どうですお嬢ちゃん。奴隷になるくらいなら一緒にいきませんか?」
橘次も舞鶴に声をかけた。
「ご迷惑じゃなければ・・・」
彼女は遠慮がちに言った。
「ここで別れて、奴隷になったり、死んでしまったりする方が迷惑だ。行く場所がないなら一緒に来てくれないか?」
小池は言った。
口調はちょっとキツかったが、この肉体の主である牛若丸が、彼女を守るために死んだのであれば、それこそ彼女には助かってもらう義務がある。
小池はそう考えた。
「はい・・・」
舞鶴はコクンと頷いた。
「よし」
小池はそう言って立ち上がった時、不思議なモノを見つけた。
それは彼が下校時に持っていた背負うタイプのスクールバッグとビニール袋に入った野菜セットだった。
小池と舞鶴は橘次の案内で奥州に向かった。
その道中、小池はスマホで情報を集めていた。
野菜セットはどうでもいいが、スクールバッグに自分のスマホが入っていたのはラッキーだった。
さらに不思議なことに、そのスマホは普通に検索出来た。充電も不要だ。
小池は
(これが有名な転生特典か)
と都合よく考え、深く追求することはしなかった。
今、するべきことは、義経について調べることだ。
自分の命運にかかわってくる。
破滅ルートを回避しないといけない。
スマホの電波や充電が常に使用可能な状態なことを研究するのは後回しだ。
「ええっと? 奥州に行ったあと、源頼朝の挙兵に応じて参戦して、木曽義仲って武将を倒して、壇ノ浦で平家を倒したのか? 壇ノ浦なら俺でも聞いたことがある。でも、すげーな。こいつ、一人で戦を終わらせてるんだな。んで、そのあと、源頼朝に刺客を送られて、逃げて、最後は攻められて亡くなると」
小池はそこまで歴史に詳しくない。
木曽義仲は北の強敵。平家は西の強敵というイメージだ。その二つの強敵を倒した英雄が義経。
そのように考えた。
ただ、小池には義経の最後。源頼朝に攻められるっていうのが正直、よくわからない。
義経は、兄貴の源頼朝のために強敵を倒し戦を終わらせた。それなのにその兄貴に殺された。
(どういうことだ?)
気になって調べてみると、恐ろしいことがわかった。
源頼朝。
そして、彼の政権である鎌倉幕府は功臣を誅殺または更迭してるのだ。
名前を上げるだけも膨大だ。
上総広常(誅殺)
一条忠頼(誅殺)
源義経(自害)
安田義定(討伐)
藤原泰衡(滅亡)
源範頼(流罪・誅殺?)
安田義資(処刑)
梶原景時(討死)
城長茂 (討死)
阿野全成(殺害)
比企能員(誅殺)
畠山重忠(討死)
平賀朝雅(討死)
北条時政(追放)
和田義盛(敗死)
義経だけが悲劇のヒーローとしてクローズアップされているが、様々な功臣が殺されている。
(これは・・・粛清か! せっかく、頼朝のために頑張ったのに、その結果が“死”か! ふざけんな!)
ここで小池は持ち前の激情を発した。
(一生懸命、源頼朝のために戦っても評価されるどころか殺される! やってられるか! 決めた! 俺は絶対に源頼朝といっしょには戦わない!)
小池はそう心に決めた。
そう考えると、少し激情が収まった。
激情が収まった冷静な頭で考えてみると、源頼朝とともに戦わないというのは破滅ルート回避のためのベストな選択のように思えた。
スマホで調べてわかったのだが、小池が転生した義経という男は、木曽義仲や平家といった大勢力を滅ぼしている。
仮に義経が戦に出なかったらどうなるか?
木曽義仲や平家といった大勢力は滅亡せず、存続することになる。
つまり、源頼朝は天下人にはならず、鎌倉幕府も成立しない。
と、なれば先程の一覧表の人物も粛清されることはない。
(よし。俺の破滅回避ルートはこれだ。絶対に戦わないぞ)
小池は心に誓った。
小池、舞鶴は橘次の案内で奥州の平泉に到着した。
小池は驚いていた。
(俺が転生した宿は滋賀県か岐阜県あたりだよな。平泉ってことはここ岩手県だろ? そこまで歩いてきたんか。 なんか身体能力系のチートでももってないと説明つかないぞ)
彼はそう思っていたが全くの見当違いだ。
橘次も舞鶴も普通の人間だが、普通に歩いていた。
自動車も電車もないこのセカイでは歩くのは普通のことだった。
小池の元の体の持ち主の牛若丸の肉体も普通に歩ける筋力をもっていただけのことだ。
チートは無関係だ。
「どうです。すばらしいでしょう」
橘次はふるさと自慢をするかのように言った。
確かに今までの道中の村とは違っていた。
北上川の流れに沿って、豊かな田畑と集落が広がっていた。
山々の緑に抱かれるように寺院が建ち、その堂々たる伽藍は、ここが北国の一地方にすぎないなどとは思わせない。町には人々が行き交い、商人たちが各地から運んできた品々を並べている。
ひとつの繁栄した都市が築かれていた。
もちろん小池の知っている現代都市とは違う。
しかし、今までの旅の中で彼は、村々の規模を知った。
その村と比較したらこの平泉は大都市だった。
「すげーな」
小池は素直に頷いた。
「ステキ」
舞鶴もその都会ぶりに、素直に感想を述べた。
「でしょう! でしょう!」
橘次はふるさとを褒めてもらいご満悦だ。
「あとで町を案内しましょう。何かご入用のものはあります? こう見えても僕は金を扱う、それなりの商人なんです。この平泉なら大抵のものを用意できますよ」
橘次は気分がいいらしい。
だいぶ調子の良いことを言った。
小池は道中、スマホをいじりながら考えていることがあった。
それを実現するのに、この橘次の協力を得るのもいいかもしれないと考えた。
「じゃあ、言葉に甘えて一つお願いしようかな?」
「いいですよ。牛若丸様の願いなら、なんなりと」
「油をもらえる?」
「油ですか? まあ、問題ないですが、何に使うんです?」
「それは後でのお楽しみさ」
小池は笑った。
「これは! 旨い!」
橘次は驚いた。
彼は生涯でこのようなうまい食べ物に出会ったことがなかった。
熱々で、外はカリッと香ばしく、中はほくほくとしていた。噛むたびに広がる芋の味と、ほどよい塩気。こんな食べ方があったのかと、思わず目を見開いた。
「なんて言うんです、これ? 僕ぁ初めて食べましたよ」
橘次がつまみながら言った。
「フライドポテトだ。うまいだろ?」
小池はそう言って口にポテトを入れた。
舞鶴は無言で口に入れている。
旨いらしい。
手が止まらない。
その姿は小動物みたいで、ちょっとかわいかった。
「うまいですよ。この塩気がいい。動いた後にちょうどいい。ねえ、牛若丸様?」
「なんだよ?」
「これで商売しませんか? 絶対、売れますよ!」
橘次は商人の目で言った。
「商売?」
小池は橘次を見返した。
そして
「それもいいな」
と思い、口に出した。
彼がフライドポテトを作ったのは単純に食べたかったからだ。
小池はジャンクフードが大好物だ。
久しぶりに食べたい。
幸い、スクールバッグにジャガイモは入っていた。
そしてスマホで調べて、アブラナやエゴマ油のある可能性は確認していた。
実際に橘次に確認すると、油は存在していた。
そして塩もあった。
ジャガイモと油と塩があればフライドポテトは作れる。
小池はそれで実際に作ったのだ。
お味は好評。
ジャンクフードは正義だ。
小池は橘次の提案を真剣に考えた。
義経として源頼朝の元に行き、参戦しないと彼は決めていた。
それならば別な生計を考えなければいけない。
フライドポテトが好評なら、それで生計を建てるのもよいかと考えた。
ただ、そのためには手持ちのジャガイモだけでは足りない。増やさないといけない。
増やせるかどうか? 彼はスマホで調べてみることにした。
(芽が出たジャガイモを植えればいいのか・・・種芋じゃないから病気に弱く確率は低そうだけどやってみてもいいかも)
小池はそう思った。
「おや、これがそのフライドポテトの元になる野菜ですかい?」
橘次がスマホを覗き込んだ。
舞鶴も興味があるのか覗き込んでいる。
「そう、ジャガイモって言うんだ。これで商売するならジャガイモの栽培を成功させないといけないからさ」
小池は言った。
「絶対に成功させましょう!」
舞鶴が口を挟んだ。
よほどフライドポテトが気に入ったらしい。
「貸してください」
彼女はそう言ってスマホを取り上げると、熱心にジャガイモの育て方を見ていた。
小池と橘次は顔を見合わせて笑った。
~10年後~
牛若丸こと小池は平泉でファーストフードのお店を経営していた。
これは小池の努力というよりは舞鶴の執念の結果というほうが事実に近いかも知れない。
舞鶴は小池のスマホで栽培方法を勉強。
橘次を通して平泉の領主 藤原秀衡に許可と農地をもらった。
農地をもらうときにフライドポテトを献上したら、トントン拍子に話が進んだ。
藤原秀衡も気に入ったらしい。
ジャンクフードは正義なのだ。
そして彼女は執念でジャガイモの栽培に成功した。
一度、駄目になりかけたこともあった。連作障害ということを知らなかったからだ。
そこで橘次を通して平泉の領主 藤原秀衡に再度、お願いして連作障害対策として農地を増やし4区画に分けて休耕地を作った。
小池はジャガイモの安定供給の目処がたったのでフライドポテトのお店をひらいたところ大好評。
特に領主 藤原秀衡とその子供達に。
その結果、領主の命令で規模を増やすことになった。
そして領主の命令で小池にジャンクフード用の配下の人員がつけられることになった。
小池はその与えられた人員をお店と農地開拓の二手にわけた。
小池が次につくったのは“唐揚げ”だ。
理由はシンプルで本人が食べたいからだ。それ以上の理由はない。
鶏はいた。白くなく、茶色でちょっと現代のニワトリと比べたらワイルドだが、近いのはいた。・・・・ジャガイモがあるから、ジャガイモの粉である片栗粉もつくれる。小麦もあった。小麦があれば小麦粉が作れる。醤油は残念ながらなかったので塩からあげを目指した。
結果は・・・
「固い!」
小池は現代の柔らかくジューシーな唐揚げをイメージしていたが、肉質が違った。この時代の鳥さんは、超筋肉質なのだ。
小池は床を叩いて悔しがったが、舞鶴や橘次。藤原秀衡には大好評だった。
「何を落ち込んでるんすかね? こんなに美味しいのに」
橘次は首をひねる。
舞鶴も同感なのかコクコク頷いていた。
いずれにせよ、これで唐揚げ&ポテトセットは提供することができるようになった。
ついでに藤原秀衡から
「肉じゃなく魚でも美味しいのではないか?」
と提案を受け、要望にそって作ったところフィッシュ・アンド・チップスができてしまった。
ちなみに、橘次に頼んで職人を紹介してもらい、ピーラーをつくってもらったので、ジャガイモの薄切りも作れるようになった。そのためポテチも商品メニューに加わった。
これがヒット商品になった。
わざわざ、都からも買い求める人がくるくらいだ。
ちなみに人参は舞鶴の執念でも駄目だった。
舞鶴は人参の再生栽培の方法が掲載された動画を見てチャレンジしようとしていたがこれだと、花が咲かずに種ができないことがわかり断念。
玉ねぎは、植えたら2本だけネギ坊主ができて焦った。
ダメ元のつもりだったから、出るとは思わなかったのだ。
小池と舞鶴は慌ててスマホを確認し、検討の末、放置して種をとることにした。
その種を元に、玉ねぎの栽培が可能となった。
その結果、小池の店にオニオンリングのメニューが増えた。
ちなみに藤原秀衡は唐揚げとオニオンリングを気に入り、小池の商売に肩入れした。
具体的にはアブラナと麦の生産を強化した。
育て方は小池のスマホに書いてある。そしてアブラナと麦は普通に自生していた。
そこから育てていくこと容易ではなかったが、チャレンジできる環境は整っていた。
チャレンジは成功し、奥州は麦とアブラナの一大産地となった。
小池はアブラナの独特のニオイに閉口していたが。
チャレンジと言えばリンゴも成功した。
もちろん、スマホで種から作る方法を調べた。そして実践してみた。
小池のもってきたリンゴから種をとり、その種を水に浸した布でつつみ、芽が出てきたところで鉢に植えてみた。
これもダメ元だったが、無事生えてきた。
そして9年目ぐらいには実がなるようになった。
甘味の少ない時代だ。
舞鶴も
橘次も
藤原秀衡も
美味いと言って喜んだが、小池はリンゴを食べた後、微妙な顔をしていた。
小池が現代で食べていたリンゴとは味も形も食感も違っていたからだ。
小ぶりで、固く、酸っぱい果実が成った。
「なんだこれ?」
小池は酸っぱさに口をすぼめて言った。
「リンゴじゃないの?」
舞鶴も口をすぼめて言った。
「俺の知ってるリンゴじゃない。もっと、こう甘くて、大きくて、瑞々しくて・・・。こんな、水分の少ない、酸っぱい食べ物じゃないんだ」
「うーん。その“すまほ”で調べてみたら?」
舞鶴はスマホを指さした。
「作り方は間違ってないはずなんだけどな・・・気候か? でも、リンゴって寒い地方で作られてるイメージがあるけど」
小池は首を捻った。
二人はスマホの画面を見る。
小さい画面を二人でみるので自然と顔が近くなり、肌が触れ合った。
「あ、わりい」
小池が慌てて離れる。
「?」
舞鶴はよくわかっていない顔で、首をひねると、小池をぐいっと引っ張って近づけた
小池の鼻にいい香りがただよった。
「それじゃ。みえないよ」
「お、おう」
小池はそれだけを言うと、スマホ画面をみることに集中した。
集中しないと、別なことに集中しそうだったからだ。
彼と彼女が調べていくと・・・衝撃の事実がわかった。
リンゴは種から育てるものではなく、接木で育てるものらしい。
種から育てても同じ品種にはならないと記載されていた。
「なんてこった」
小池は天を仰いだ。
もう、あの瑞々しいリンゴは食べれないらしい。
小池の感性では、なったのはリンゴではなく、酸っぱい別な異世界の食べ物だった。
「えー、これでも美味しいのに」
舞鶴は首をかしげている。
小池は納得いかないのか、しきりにスマホで検索していた。
「ジュースか、ジャムにしたらどうだろう?」
小池がつぶやく
「“じゅーす”に“じゃむ”ですか。やってみましょう!」
突如、橘次が現れ小池の肩を叩いた。
「いってーな。いつのまに側にいたんだよ」
「儲け話のニオイがしましたからね。僕は商人ですから儲け話のあるところにはどこでもいきますよ」
橘次はそう言ってニカッと笑った。
「それよりも、作ってみましょうよ。“じゅーす”と“じゃむ”を」
「簡単にいうなぁ」
小池は苦笑したが、彼も美味しいものを食べることに関しては積極的だ。
特に今は権力者である藤原秀衡の全面協力が得られる。
多少、無理はきく。
「やってみるかぁ」
小池は言った。
いろいろ試してみた。
その結果、まずジャムが先にできた。
煮詰めればいいだけなので簡単だ。
最初、作ったのは小池的に甘みが足りなかった。
そこで蜂蜜を追加して煮詰めた。
蜂蜜の雑味があるが、かえってそれがいい味を出した。
問題は蜂蜜が少なく、高価過ぎるということだ。
ただ、これもリンゴジャムを食べた藤原秀衡がフットワーク軽く、量産を部下たちに指示したので、そのうち、気軽に使えるようになる可能性がある。
養蜂のテキストは小池のスマホに記載されている。それを藤原秀衡に提出した。彼の部下がそれを見ながらチャレンジすることになるだろう。
ジュースは難航した。
はじめ、力自慢がリンゴを握りつぶすという、超原始的な方法で行った。
小池は
(えーっ。おっさんが握りつぶしたジュースを飲むの?)
と遠い目をした。
要は高圧力で潰して 果汁を絞ればいいので、ジュース用の機械をつくることから始まった。
その機械も特別なものではない。
鉄の板で細かく切ったリンゴをサンドイッチして、上の板を押し込むタイプのシンプルなものだ。
押し込む方法をネジ回し式にできれば、もっと効率はあがる可能性はあったが、ネジを作るのが意外と難しい。そのためシンプルにマンパワーで押すタイプになった。
あとは出てきた果汁を布でろ過する。
そんな方法で一応、ジュースができた。
「お! ジュースやジャムにすると、この酸味がいきてくるな。意外といいじゃん」
小池は口に入れてみたが大満足だ。
舞鶴、橘次、藤原秀衡にも好評だった。
これで小池の店に100%リンゴジュースとリンゴジャムがメニューに加わった。
特にこの二つは橘次が喜んだ。
ある程度、保存が効くので輸出商品としていいらしい。
これでかなり儲けたようだ。
「うーん」
ある日、小池が目の前の畑を見ながら腕を組んでいた。
「どうしたの?」
最近は小池の秘書のようなポジションにいる舞鶴が聞いた。
小池は今や、平泉のファーストフード店の社長みたいな立場になっていた。
商品を出す店の経営はもちろん、ジュースやジャムの工場、そしてジャガイモ、玉ねぎ、リンゴを中心とした栽培も行っていた。
そのため、結構、忙しい。
そのスケジュール管理のため舞鶴が調整するような感じだ。
「いや、ジャガイモの連作障害対策に麦植えてるじゃん」
「はい」
「せっかく麦あるからパン作りたいなと思ってさ」
「“ぱん”ですか? 一度作ったじゃないですか?」
舞鶴は首をかしげた
麦を石臼で粉にして、水を加えて練り、それを焼いてみた。
素朴な固いモノができた。
小池的にこれをパンとは言いたくない。
目標はハンバーガーやサンドイッチみたいなジャンクフードだ。
せっかく、フライドポテトもある。ドリンクもできた(リンゴジュースのみだが) ここにバーガーを加えたいと考えていたのだ。
中に挟む具材はある。
玉ねぎもある。唐揚げもある。
イノシシの肉を細かく刻んで、玉ねぎといっしょに焼くことでポークパティもつくれた。
あとはパンだけだ。
スマホで調べてみると、どうやら、パン作りにはドライイーストが必要ならしい。
しかし、彼がいるのは平安時代。
それは不可能だ。
そこで更に調べてみると天然酵母という方法があるらしい。
ちょうど、リンゴがあるのでリンゴでつくってみることにした。
天然酵母の作り方は簡単だった。
リンゴをカットして水につけるだけらしい。
本当は砂糖もいれるらしいが、そんなものはない。
代わりに蜂蜜を入れてみた。
この時代、高価な蜂蜜を使えるのは藤原秀衡様のおかげだ。
カビが生えたらOUTらしいので入れ物は念入りに煮沸消毒した。
この天然酵母づくり、小池はドキドキしていた。
彼は発酵のプロでも農家のプロでもない。
スマホ情報を頼りに試行錯誤している一般人にすぎない。
さらに瓶や砂糖もないので代替え品でトライするしかない。
成功するかどうか非常に怪しい。
さらにこのトライ。
失敗したらお腹を壊す危険があった。
小池が本かテレビかで見た記憶によれば発酵と腐敗は同じだという。
乱暴な言い方だったが人が食えたら発酵で、食えなかったら腐敗らしい。
つまり失敗したら腐ったものを食べることになる。
整腸薬なんぞ無い時代だ。
命がけになる可能性があった。
(せっかく、戦を回避してるのに、パン作りで腹を壊して死んだら意味ないよな。)
小池はそう思った。
転生してからの最大の命の危機がパンづくりという謎現象。
といってもパンづくりを止める気はない。
パンの成否は小池のファストフード店にとって重要なアイテムなのだ。
もちろん、最初に試食するのは自分からだ。
腐ったものを舞鶴や橘次に食べさせる趣味はない。人体実験は自分でないといけない。
ある日、小池は発酵状態を確かめるために一人、キッチンへむかった。
彼は藤原秀衡から家屋敷をもらっていた。
それも、ジャンクフードの研究しやすいように台所が広めの屋敷だ。
どちらかと言えば、広い厨房に自分の部屋があるようなバランスの悪い屋敷だ。
ここに小池と舞鶴が住んでいた。
同棲・・・と書けば小池は全否定するだろう。
彼にとっては単にお互いに住む場所がないので、藤原秀衡からもらった屋敷に住んでいるだけなのだ。
周りや読者がどのような視点であってもそれは彼にとって変わらない事実だ。
さて、その小池がキッチンへむかうと明らかな違和感があった。
パチパチという音と香ばしい油の匂いがした。
誰かがキッチンで揚げ物をしている。
(舞鶴は使いで外出している。誰だ? 俺のキッチンを勝手に使っているやつは)
彼は普段はおとなしいが、ある一線を越えると激怒する。激情家でもある。
頭に血がのぼった彼は、自分の得物を手に取るとキッチンの扉を開け
「だれだ!」
と叫んだ。
激情家の彼はそれだけでなく、キッチンで揚げ物をしている不審者を得物で殴りつけようとふりかぶった。
話はとぶが、小池の持っているのは剣でも刀でもない。
普通の生徒だった彼に鉄の塊である刀は重すぎた。
そこで特注品を作ってもらった。
鉄の棒の真ん中をくり抜いたもの。つまり鉄パイプだ。
この鉄パイプの手元を柄っぽく布を巻き付けている。
これが小池の得物だ。
小池には斬る技術がないので刃は不要。それよりも敵の剣を防いだり、殴ったりすることができる方が小池にとって重要だった。
(転生モノでよく、いきなり剣をふったりしてるけど、あんなん重くて、絶対無理)
というのが小池の感想であり、そこから生まれたのが鉄パイプだ。
小池はこの得物に「う◯い棒」と命名している。
この「う◯い棒」を不審者に振り下ろそうとして、彼は動きを止めた。
いや、止められた。
ピクリとも身体がうごかない。
「なんだ、これ?」
小池が慌てていると、揚げ物をしている不審者が振り向いた。
不審者はいわゆる狐面とよばれるお面をしていた。
「何だテメェは」
「わたしゃ神様だよ」
不審者は言った。
手には菜箸で油揚げをつまんでいた。
よくみると細く切った豆腐が並んでいた。
狐面の男は豆腐を揚げて油揚げをつくっていたのだ。
「ごめんよー。どうしても油揚げが食べたくてさ」
自称神様が言った。
「油揚げに、狐面って・・・まるで、お稲荷様じゃねぇか」
小池は言った。
小池がかつて住んでいた町に稲荷神社があった。狐の石像が置かれているので彼もよく覚えている。そこでは夏に宵宮が催され、主祭神であるお稲荷様にお酒と油揚げを捧げるのが通例となっていた。
「そうだよ。だから言ったじゃないか、わたしゃ神様だよって」
「本物かよ」
小池は驚いた。
だが同時に納得もした。この身体が動かない現象も神様の力だと思えば妙に納得感がある。
お稲荷様はせっせと豆腐を揚げて、油揚げに変えていた。
「で、その神様は人ん家でなにしてんの?」
「いや、言ったでしょう? どうしても油揚げが食べたくてさ、油揚げをつくってるのさ。設備が一番、整っているのは小池くんの家だしね」
「なんで、俺の前世の名前をっ!」
「そりゃ、あたしが転生させたもの」
「なっ、ちょっと待って。お稲荷様が俺を転生させたの?」
「あっ! しまった。いまの聞かなかったことにしてくんない?」
「そんなことできるか! なんで俺を転生させたんだよ」
「君のジャンクフードへ情熱を買って」
「? ますます意味がわからないんだけど」
「君、大人しそうにしてるけど、けっこう、情熱家だよね。後先、考えないでつっこんでいくところあるでしょ」
「褒められてんのか? けなされてんのか?」
「どっちでもないよ。事実を言ってる」
「それで、その俺の性格がどう関係してくるんだよ」
「えーっ、それを言ったら怒るでしょ」
「なんだよ! 怒られるようなことなのかよっ! 余計気になるわ!」
「もう、しょうがないなぁ。小池くんは」
「理由を言え。理由を」
「言うけど・・・怒らないでね?」
「内容による」
「もう、しょうがないなぁ。小池くんは」
「その件はもういい!」
「私は油揚げが好きです」
「いきなりカミングアウトされた。でも、それって皆知ってるよね。稲荷神社へのお供え物は油揚げだよね」
「嬉しいね。小池くんがそのことを知っていて。現代は昔ほどわたしの好物は認知されてないんだよ」
「ああ、そうかも知れないなぁ」
小池は友達の顔を思い出した。彼らの中でどれだけ知ってるだろう。
彼らに聞いても「回転寿司のいなり寿司」の話と勘違いされるかも知れない。
「そんでね。わたしに油揚げを供えてくれるようになったのって最近だったりするのよ」
「そうなの?」
「昔は油揚げ自体がなかったからね」
「あー」
小池は納得した。
小池はこの時代にきてわかったが、豆腐自体が高級品なのだ。
そして揚げるなんて調理法は普及していない。
彼がフライドポテトを皮切りにポテチやら、作ったことで平泉にジャンクフード文化が花開いたが、通常の歴史の流れではそんなことはありえないのだ。
「でも、やっぱりその味を覚えちゃうと食べたくなっちゃうじゃない」
「それはわかる」
小池は頷いた。
小池がフライドポテトをつくり、いま、命がけでパンづくりしているのも、そのためだ。
「そこで考えたのよ。現代人で揚げ物文化をもってきそうな人間をこの時代に連れてこようと。そうしたら、わたしゃこの時代から油揚げを食べることができるじゃない。油揚げができる時代まで待つ必要がないよね。それで召喚したのが小池くん」
「ちょーっと待った」
「なに?」
「いろいろツッコミたいところがあるんだが」
「なんだい? 疑問をそのままにしておいたら気持ち悪いってのも理解できるし、答えれる内容なら答えるよ」
「時間がおかしくないか? 現代で油揚げの味を知っていて、過去の平安時代で食べたいってことだろ?」
「わたしゃ神様だよ」
「その件はもういい!」
「神はすべての時間軸に同時に存在しているんだ。時間感覚を人と一緒にしないでおくれ」
「ええっと。なんだ? 現代のお稲荷様も平安時代のお稲荷様も同じってことか?」
「そう。それなのに過去のわたしは油揚げを食べることができない。不公平じゃないか。美味しいものは、すべての時代で食べたいじゃない?」
「すげー執念だな」
「小池くんも同じじゃないか。この時代でフライドポテトを食べてる。気持ちは同じだとおもうんだけど」
「それは理解できるけどさ」
「見て」
お稲荷様は油揚げを揚げた。
「小池くんのフライドポテトも油揚げも作り方は同じ。材料が違うだけ。同じジャンクフードじゃないか」
「油揚げがジャンクフードのカテゴリーに入ってしまった」
「ジャンクフードは正義でしょ」
「おう、ジャンクフードは正義だ」
二人は笑った。
「他に質問はある?」
「ああ、なんで俺なんだ? それなら本職の人をつれてくればいいじゃないか」
「マッチングが難しくてね」
「マッチング?」
「転生だからね。死んだ人間じゃないとね。あと、“揚げる”という調理法を広めてくれる情熱を持っている人じゃないと。職人は人によっては技術を広めないからね。その点、小池くんは技術者じゃないから、技術にこだわりがない。ただ、純粋に食べたいという気持ちだけで動いてくれる。あたしにとってぴったりなんだ。みんなが油揚げをつくるようにならないとあたしに供えてくれないからね。それに・・・」
「それに?」
「小池くんの身体の持ち主とうまく適合できないと転生が成立しないからね。ここが一番重要だったかな」
(俺の身体の持ち主・・・)
小池はこの身体の持ち主、源義経のことを思い出した。
「大人しく見えて、実は短慮で 情熱と感情で動く。だけど一方で目的を達成させるために常識にとらわれず最短距離で行うにはどうしたらいいか考えている。そんな共通点があったからこそ転生という奇跡がおこせた。普通は難しいんだよ」
「神様でも?」
「そうさ」
「んー。だったら俺を元の時代に戻すのも無理か」
「もう、しょうがないなぁ。小池くんは」
「なんだよ。そんな言われ方することあったか?」
「小池くんはね。死んだんだよ。舞ちゃんを助けるために」
「う」
「戻したところで死ぬだけだよ」
「そうか・・・そうだよな。元の時代じゃ死んでるんだよな。そうだ、舞はどうしてる?」
「生きてるよ」
「そうか、よかった」
「それはどうだろうね?」
「どういう意味だよ」
「舞ちゃんを殴った男。あれは彼女の父親さ」
「へ? なんで父親が娘を殴ってんのさ」
「家庭の事情さ。あまり他の人の家庭に踏み込んじゃいけないよ。死ぬことになる」
「う」
「そこなんだよね~」
「なんだよ」
「百歩譲って、ここの時代の皆が油揚げを簡単につくれるようになって、わたしの神社に供えてくれるようになったら、小池くんを現代に蘇らせることもできるようになるかもしれないんだけど・・・」
「本当か?」
「うん、少なくとも、お供え物が供えられるようになればわたしの神通力も増すからね。できるようになる可能性はあるよ。でも、わたしが問題視しているのは別なことなんだ」
「なんだよ」
「小池くんのカーッとなって後先考えずに動くところさ。せっかく、現代に蘇っても、また頭に血が上って、その結果、トラブルがおきて死んじゃったら蘇らせる意味ないよね」
「う」
お稲荷様の指摘はもっともだった。
“そうなりません”と小池は自信をもって言えなかった。
「小池くんの身体の主もそうさ。情熱は物事を進める原動力になるから大切だけど、同時にその情熱をコントロールする術がないと・・・抜き身の刀は刃毀れするし折れるよ」
「・・・・」
この言葉に小池は何も言えなかった。
「さて、油揚げもできたし。わたしゃ帰るとしよう」
「お供え物をセルフサービスでつくる神様を俺は初めて見たよ」
「だよね。だから今度は小池くんが供えてくれるとうれしいな」
「わかったよ。まったく、魔王と戦うためでなく、油揚げをつくるために転生ってびっくりだ」
「そうだね。じゃあ、少しだけてつだってあげる」
お稲荷様はそう言うと、小池がパンつくりのために作っていた自然酵母の入った入れ物にむけて手をかざした。
一瞬だけ、その入れ物が金色に光った。
「この酵母は安心していいよ。これで美味しいパンができると思うよ」
お稲荷様はそう言って大量の油揚げとともに消えた。
後日になるが、この天然酵母をつかったパンは成功した。
それでも現在のパンとは少し違い、ふっくらフワフワパンにはならなかった。
(パン屋さんすげーわ。やっぱ、素人がスマホ情報だけで、あのふわふわパンをつくるのは無理があったか)
小池は現代のパン屋さんに尊敬の念をいだいた。
それでも、小池も苦心しただけあって、ふわふわパンは無理でも、ピタパンもどきは作ることができた。硬いパンを卒業することができた。
(いんじゃね? ピタパンも映えるし。写真公開する相手もいないけど)
小池はそう思うことで自分を慰めた。
ともかく、これでピタサンド+ドリンク+フライドポテトというファーストフード店らしいセットメニューを揃えることができた。
ちなみに油揚げもラインナップに加わった。
意外と人気があった。
驚いたのは油揚げをテイクアウトして半分に切ってご飯を詰めて食べる人々が出始めたことだ。酢飯ではなく、ご飯も現代の米とは全く違うので、小池の知るお稲荷さんとは違った食感と味ではあったが、見た目はそれに近いものができた。
そして、それを稲荷神社に備える人々が現れた。
小池がなにかやったわけではないので、自然発生的にそうなったのか、お稲荷様が神通力か何かでそのように誘導したのかはわからない。
ただ
「これでお稲荷様も満足だろう」
と小池は思った。
同時に
「目的は達成したんだから現代に蘇らせてくれ」
という気持ちは沸き起こらなかった。
お稲荷様の言った
「小池くんのカーッとなって後先考えずに動くところさ。せっかく、現代に蘇っても、また頭に血が上って、その結果、トラブルがおきて死んじゃったら蘇らせる意味ないよね」
という言葉が棘のように刺さっていた。
小池がお店でセットメニューを売り出し、平泉文化として定着しつつある頃、スマホに通知がきた。
小池が転生してから10年近くたっている。
その間、このようなことは一度もなかった。
小池は驚いて通知を見た。
そこには差出人として「源範頼」と書いていた。
「は?」
小池は首をひねった。
源範頼は知っている。
歴史愛好会から散々聞かされた。
小池の身体である。
源義経とともに平家を戦った武将だ。
あらためて小池はスマホで義経を調べた。
「へー」
小池はそんな声をあげた。
そこには宇治川の戦いと書いていた。
長野・北陸を支配していた木曽義仲という武将が当時、京都を支配していた平家を西に追い払い京都を支配した。
ところが木曽義仲の兵は乱暴狼藉を働き、一気に治安が悪化したらしい。
そこで京都の朝廷は関東地方を支配していた源頼朝に救援要請をした。
その源頼朝は義経と範頼兄弟を大将として、木曽義仲を倒すために出陣したらしい。
戦いは義経が活躍して勝利したとある。
「俺がいなかったらどうなるんだろこれ?」
小池は他人事のようにそう思った。
実際、いまの小池は源頼朝に仕えていない。
したがって、宇治川の戦いの場所である京都にもいない。
岩手県の平泉でファストフード店を経営している。
すでに歴史は変わっていた。
(歴史上では宇治川から義経が、滋賀県から範頼がせめるんだよな。これ範頼一人だけだったらどうなるんだろ)
そんな興味をもって通知をひらいた。
「なんで、義経がこないんだよ。負けそうなんだよ。早くこいや」
いきなり、文句が書いてあった。
小池は一瞬、頭に血が登ったが、お稲荷様の言葉を思い出して、深呼吸した。
激情に心を支配されなければ、冷静に考えられる頭はもっていた。
「こういうのには関わらないほうが吉だよな」
小池はそっとスマホを閉じた。
その時に再び、スマホが振動した。
こんどは電話だった。
小池はちょっと躊躇ったが、結局、出ることにした。
このスマホで電話が来ることは10年間なかった。
その電話がなったのだ。
興味が警戒心を上回った。
応答ボタンを押した瞬間、怒鳴り声が聞こえた。
「おまえ、義経だろ? 義経だよな。なんで戦いにこないんだよ」
よほど切羽詰まっているらしい。
小池は一瞬、「なんだ、この態度は!」と激怒しそうになったが抑えた。
お稲荷さんの言葉が、彼の心に棘のように刺さっている。
脊髄反射で激情に任せて反論する前に、一呼吸置いた。
「あー。あなたは範頼さんであってます?」
「そうだよ。歴史じゃ俺とお前で木曽義仲を攻めることになってたよな。なんでこないんだよ」
「その前にいくつか質問してもいいですか?」
「なんだよっ」
「範頼さんは、なんで電話できるんです? この時代にないのに」
「お前と同じだよっ。オレも転生者だよ」
小池はちょっと驚いた。
転生者は自分だけだと思っていた。この10年、他の転生者にあったことなかったからだ。
初めて転生者に会った。電話越しだが。
それも義経と一緒に都の攻めるはずの一方の将。源範頼だ。
(あのお稲荷様の仕業かな?)
小池は思案した。
「おい、聞いてるのか!」
範頼ががなってきた。
小池は思考を中断しなければならなかった。
「聞いてるよ」
「なんで、戦場にこないんだよ」
なんで、この範頼って転生者は初対面の人にこんな感じで話をできるのだろうか?
小池は逆にすげーなと思った。
「逆に聞きますけど。なんで行かなければならないんです?」
「はぁ。お前、義経だろ?」
「この身体はそのようですね」
「お前歴史知らねぇのか? 歴史では朝廷からの要請で都で乱暴狼藉している木曽義仲をオレとお前の二人で攻めることになってるんだよ」
「そのようですね」
「そのようですねって、何で他人事なんだよ。お前が活躍する場面だろっ」
小池はいままで我慢していたが、そろそろ我慢の限界がきつつある。
普段はおとなしいが、一度、火がつくと止まらない激情家の面もある。
ただ、相手が感情をぶつけてきていることは、小池にとって反面教師になった。
激情をぶつけても何も進まないな。
と思ったのだ。
その心境が怒りは持ちつつも、冷静な部分を持ちわせるきっかけになった。
「逆に聞きますが何で歴史通りに動かないといけないんです」
小池は質問した。
“こういう時は質問を繰り返したらいい”
放課後だべっていた仲間の一人で、もう口から生まれてきたんじゃないかといわれている友達が得意げにそう話していたことを思い出した。
小池は試してみることにした。
「何でって? せっかく転生したんだろ。歴史通りの活躍を愉しむもんだろう? 普通。 特にお前は義経だろ? 有名人じゃねぇか羨ましい! 義経が戦わなくてどうすんだよ」
小池は素直に“戦わずにファストフード店やってますが”と言おうと思ったが、“質問をくりかえしたらいい”という友達の言葉を思い出して、質問することにした。
「戦った先に破滅が待ってたとしても?」
小池は言った。
小池は歴史研究会の仲間から聞いていたが、源義経は平家を滅ぼした後、紆余曲折の末、衣川で自刃する。
歴史どおり動くと、待っているのは“自殺”だ。
「いや、そうだけど。そこを何とかするのが転生者だろ」
範頼の言葉に小池は力が抜けた。
言ってることが支離滅裂なのだ。
“歴史通り戦場にこい”と言っているのに“歴史どおりにならないようになんとかする”と言ってるのだ。
それで、たちが悪いのはその矛盾に気づいていないことだ。
まともに相手できないな。
小池はそう思った。
「俺だけじゃないんですよ。他の人も破滅するんですよ。もちろん、範頼さんもです。それでもいいのですか?」
小池がそう質問したところ、沈黙された。
しばらく待っても相手の応答がないため、電話を切ろうかなと思ったとき、ようやく範頼が話した。
「オレも? 不幸な目にあるのは義経だけじゃないのか?」
「義経は有名ですけどね。調べてみたら鎌倉政権って役に立っている間は大事にするんですけど、用がなくなればあっさりと捨てられたり消されたりするんです。義経や範頼さんだけじゃないんです。梶原景時って人も北条時政って人も討ち取られたり、追放されたりしてるみたいですよ」
「ちょっと待て。梶原景時って義経を蹴落としたやつだろ?」
「そうみたいですね。調べたところ討死にしてますね」
「北条時政って、源頼朝の義理の父親だろ?」
「ええ、追放されてますね」
「まじか」
「はい、範頼さんは・・・調べてみたら伊豆国に流刑。資料によってはそこで殺されてますね。ホントかどうかはしらんけど」
「殺される! オレが!」
「だから、資料によってです。本当かどうかはわかりませんって」
小池は内心、ため息をついた。
本当にコイツ人の話をきかないなと思ったのだ。
「俺から聞いてもいいですか?」
「なんだよ」
「範頼さんもこうやって電話してきたってことはスマホもってますよね。スマホで調べればすぐわかるじゃないですか。何で調べないんです?」
「お前、スマホなのかよっ」
「どういうことです?」
「俺のは子供用携帯なんだよ。電話とメールしかできないんだよ」
「え?」
「仕方ないだろ。親が厳しくて、これしか持たせてくれなかったんだよ」
話を詳しくきくと、彼は小学校6年生で転生したらしい。
義経のことは社会の教科書にでてくるので知っていたらしい。また、ちょうどテレビで鎌倉幕府成立をテーマとした歴史ドラマをやっていたので、それを見ての知識のようだった。
このことを聞いて、小池は腑に落ちた。
小学校の教科書では範頼の運命まで詳細に書いていないだろう。
話し方が拙いことも。乱暴な口調なのはちょうど思春期の年齢だと思えば納得できた。
また同時に、範頼の激昂している声を聞いて思うことがあった。
(俺も激昂してるとき、こんなんだったのかな?)
激昂している自分の姿が思春期の少年と同じだとしたら、恥ずかしい気持ちになった。
「どうしたらいい?」
範頼はいままでの勢いがなく、不安そうな声を丸出しで聞いてきた。
小池は範頼に同情心を覚えた。
小学校6年生で転生したということは、その年齡で死んだということだ。それだけでも可哀想過ぎるのに、それからこの時代で生きてきた苦労を考えると、年長者として何とかしてやりたいと思った。もっとも小池も15歳で転生しているので、そこまで年が離れているというわけではないが、それでも高校生だ。
先輩として小6の子をなんとかしてやりたいと思った。
「いいか。よく聞け」
小池は言った。
「この時代に3つの勢力がある。まずは長野県や北陸地方を勢力にしている木曽義仲」
「オレが戦っている相手だな」
「そうだ。次にお前が所属している関東地方を治めている源頼朝」
「おう」
「あとは木曽義仲に追われて中国・四国地方にいる平家」
「それはわかる」
「そいつらを滅ぼすな」
「ええっ。歴史が変わっちゃうぞ」
「そいつらを滅ぼすと、用がなくなったとなって討伐されたり、流刑の目にあったりするぞ。そうなりたいか?」
「せっかく頑張ったのに、それはないだろう!」
「俺もそう思う。だから違う動きをしている。俺は範頼さんはそうなりたいかと聞いている」
「なりたくないに決まってるだろう」
「木曽義仲や平家を滅ぼすとそうなるぞ」
「うっ」
「だから滅ぼすな」
「じゃあ、どうしたらいい? オレは木曽義仲を滅ぼせって命令受けてるんだぞ」
「範頼さんは俺に電話かけてきたよな」
「ああ、いまのままだと倒せないんだよ」
「だから、倒さなくていいんだよ。そのままでいいんだよ」
「このままでいい?」
「ああ、このまま倒さず睨み合っていればいい」
「逆に木曽義仲に攻められないか?」
「おそらく大丈夫だ」
「なんで?」
「西に平家がいる。範頼さんを攻めたら都ががら空きだ。木曽義仲は京都から出てこれない」
「なるほど?」
「それに、俺が調べたところ、いまは飢饉のはずだ」
「やっぱり? 飯がねえんだよ」
「やっぱり、じゃあ範頼さんも食えてないのか?」
「いや、オレはまだ源氏軍の総大将だからまだマシだ。関東から一応、飯が送られてくるしな。ただ敵兵とか結構キツイらしい」
「だろうな。だから兵糧が無くて、本当は戦どころじゃないはずだ」
「じゃあ、睨み合ってたらいいんだな」
「おう。そうなれば、範頼さんは最前線の将として重要視される。討伐も流刑もないはずだ」
「そうか。なら、攻めるフリしてみるよ」
「おう、頑張れ」
「ところで義経はなにやってんの?」
「俺か? 岩手県でファーストフード店やってる」
「なんだそれ? フライドポテトもあるのか」
「当たり前だろ。フライドポテトがないファーストフード店なんてありえないだろ。ジャンクフードは正義だ」
「ずりーぞ!」
「そう思うなら、早く源頼朝軍を抜けて俺のところにこいよ。源頼朝のところにいても用がなくなったり、危険だと思われたら討伐されたりするからな危険だぞ」
しばらく沈黙があった。
「考えておく」
範頼は言った。
「おう、こっちにきたら従業員としてこきつかってやるよ」
「なっ!」
「冗談だ。でも、源頼朝んところにずっといるかどうかは考えておいたほうがいいぞ」
「そうだな」
「ああ、じゃあ健闘を祈る」
そこで範頼との電話は終わった。
この電話が歴史を変えることになる。
源義経という男は。
様々な英雄譚をもつ男だ。
そして歴史という視点で見ると、戦を終わらせる役目を持った男でもあった。
木曽義仲を破り、平家を倒したのは義経だ。彼がいたからこそ鎌倉幕府ができた。
では、彼がいなかったら?
いたとしても戦わなかったら?
どうなったか。
その答えの一つが出現していた。
義経が木曽義仲軍を破った宇治川の戦いも
木曽義仲が倒れた粟津の戦いも
発生しなかった。
そのため長野、北陸を勢力にもつ木曽義仲は滅亡せず、そのまま勢力を保った。
ただ、木曽義仲は都からは撤退した。
木曽義仲は暴虐を働く平家を倒すため京都まで攻め上った。
ところが平家を追い出したら、朝廷は木曽義仲に感謝するどころか、彼を疎んじ、関東の源頼朝を呼び出した。
源頼朝は弟の範頼を総大将として木曽義仲に戦をいどんできたのだ。
この朝廷の態度に木曽義仲は憤慨した、彼は、もう都のことなど知らんとばかりに都を引き払った。
もちろん、それだけでなく別な理由もあった。
都は大飢饉なのだ。兵を食わせていくことができない。
飢饉に巻き込まれないように福井県まで撤退した。
西国の平家は関門海峡の彦島・四国の屋島・福原に拠点を置き、都を攻める姿勢を見せながら勢力回復に努めていた。
なにしろ、木曽義仲軍に敗北し、都を追われたのだ。まずは勢力を回復しなければいけない。
そのため西国で力を蓄えていた。
範頼の所属する源頼朝は、木曽義仲の撤退を確認すると、木曽義仲を追い払う朝廷からの依頼は終わったとばかりに、範頼を琵琶湖の南 瀬田まで下がらせた。
下手に都にとどまると飢饉と政争に巻き込まれるとの判断だ。
特に木曽義仲と平家の勢力が残っているため、下手に都入りし、両勢力に挟み撃ちにあってはいけないと考えたらしい。
それよりも基盤である関東の支配力強化に集中する方を選んだ。
図らずも北の木曽 西の平氏 東の源氏と三国鼎立の様相を見せ始めた。
ちなみに小池のいる岩手県一帯をおさめる藤原秀衡と九州制覇を目指す緒方惟栄を含めると5大勢力となる。
この5つの勢力でこの国を割拠するような形になっていった。
この状況に困ったのが都の朝廷だ。
地方に群雄が割拠しているため、税金が入ってこない。
そうでなくとも・・・・
平家が都落ちしたときに、様々な物資を持っていっている。
木曽義仲軍が都に入ったときに、戦利品とばかりに略奪している。
それに加え、後に養和の飢饉と呼ばれた干ばつで、農業が壊滅的なダメージを受けていた。
朝廷は飢えた。
この情報を範頼や橘次経由で知った小池は
「スゲーな。俺がいないとこうなるのか」
とリンゴジュースを飲みながら思った。
ちなみに、小池の飲んでいるリンゴジュースは微炭酸・微アルコールでシードルに近い。
ジャンクフード好きの小池がどうにか炭酸飲料を作れないかと四苦八苦しながら作ったのがこれだ。
特に難しい技術ではなく自然発酵の過程でできた。ただ、どちらかと言えば炭酸飲料ではなく、アルコール飲料になってしまったが。
「これ、美味しいですね」
舞鶴がシードルを飲み進めている。気に入ったらしい。
結構な量を飲んでいるが、全く酔わない。
それが小池には羨ましい。
小池はアルコールに弱く、それほど飲めない。
すぐに赤くなるのだ。
ジャンクフード好きの小池としては酔わない炭酸飲料が欲しかったが、まだ、作ることはできない。これからの課題だと思っていた。
「別にわざわざ、酔わないのを作らなくても・・・」
と舞鶴はやんわりと言った。
彼女はアルコール入りのほうがいいらしい。
「俺が飲めないんだよ。それにコーラはつくりたい」
小池はポテチをつまみながら言った。
「前におっしゃってた黒い飲み物ですね? そんなに美味しいのですか」
「ああ、このポテチといっしょに食べると最高なんだ。舞鶴にも飲ませてやりたいんだ」
「それは楽しみですね」
舞鶴はシードルを飲みながら言った。
「お二人さん」
ここで橘次が現れて、ひょいとポテチを一枚、奪い口に入れてからいった。
「都は飢饉だって言うのに、いいもの食べてますね」
橘次はポテチをつまみ幸せそうな顔をした。
「この塩味がつかれた身体に染み渡りますな」
そう言って橘次はもう一枚つまむ。
「一度、食べると止まらないよね」
舞鶴がそう言ってニコニコ笑った。
「そうなんですよねぇ。食べだすととまらないですよね」
そう言って橘次はもう一枚つまんだ。
「帰ってきたんだな」
小池は言った。
そしてポテチをつまんだ。
橘次は都に行っていた。
理由は主に2つだ。
三国鼎立後、空白地帯となった都の情報収集。
平泉の名産になりつつある小池のジャンクフードが売り物になるかどうかの市場調査だ。
「ええ、やっと帰ってきましたよ。これを食べると平泉に帰ってきたという実感が湧きますね」
橘次はそう言ってポテチをつまんだ。
「どうだったの?」
舞鶴はそう言ってポテチを摘み、シードルを口にした。
「いやあ、都は予想以上ににヒドイですね。食べ物がない」
橘次はポテチをつまんだ。
「おっ、これ味が違う」
橘次が驚いた。
「海苔をまぶしてみたんだ。どうだ?」
小池が口にポテチを放り込みながら尋ねる。
「いやあ、磯の香りと味がしていいですね。これ売れますよ」
橘次がポテチを口に入れた。
「ところで、そんなに都はヒドイのか?」
「ええ、あれ黙ってたら崩壊するんじゃないですか? みんな食えないから、都から脱出してますよ」
「そんなにか」
「ええ、だから、ポテトとリンゴジュースを朝廷に持っていったら、すごい感謝されましてね。法皇っていうんですか? 偉い人に呼ばれて感謝されましたよ」
「へえ」
小池は他人事のようにポテチをつまんだ。
「まあ、またポテチをもってこいってことでしょうけどもね」
橘次がポテチを口に入れた。
「朝廷の貴族連中も問題なしか。そのようすじゃ売れそうだな」
「当たり前ですよ。ジャンクフードは正義です。それでね、ちょっと欲がでまして他でも売れるかなと思って、ちょっと足を伸ばしてみたんです」
「どこに?」
舞鶴がシードルを口に入れたあと、海苔味のポテチをつまんだ。
「越前、福原。帰りに瀬田と鎌倉にもよってきました」
橘次はポテチを口に放り込んだ。
「へえ」
小池は感心した声をあげた。
今挙げたのは主要三国の首都だ。
越前は木曽義仲。
福原は平氏
鎌倉は源氏
それぞれの事実上の首都になっている。
各都市にマーケティング調査したのだろう。
瀬田は源氏の軍事の総大将である範頼がいる。
彼のところにも抜け目無く寄ってきたらしい。
「どうだった?」
小池は興味を持った。
彼自身、ジャンクフードは正義だと思っているが、世の中の嗜好は様々だ。嫌いな人もいるかも知れない。
「いやあ、大人気でしたよ。どこに行っても次に手に入るのはいつだって聞かれて。大変でしたよ」
橘次は上機嫌でポテチをつまんだ。
「そいつはよかった」
小池は自分がつくったジャンクフードが評価されてまんざらでもない気分になった。
「ああ、そうそう瀬田の範頼さんから伝言もらいましたよ」
「なんて言ってた?」
「ずるいぞ!絶対そっちに行くからなって言ってました。お知り合いですか?」
「会ったことはないが、まあ知らない仲ではないけどね」
小池はポテチを口に入れた。
「ああ、そうそう俺の本名は出してないよね?」
小池は確認した。
彼の意識は小池だが、身体は義経のモノだ。自分が義経だとバレると鎌倉の源頼朝あたりから、余計なちょっかいがくる可能性があった。
そのため、彼は牛若丸の名前を捨て、この時代でも小池と名乗った。
「大丈夫です。作ったものの名前は聞かれましたが、小池さんですって言っておきましたから」
橘次はそう言って最後のポテチをつまんだ。
「「ああっ!」」
小池と舞鶴から冷たい視線を受けることになった。
「なんです。それこそ売るだけあるじゃないですか」
橘次は冷たい視線を放つ二人に抗議した。
小池は他人事のように橘次の話を聞いていた。
彼にはコーラを再現することだけを考えていたからだ。
ところが橘次のマーケティング調査が、別の歴史の流れを作ることになり、小池が歴史に登場することになった。
或日、平泉では厳戒態勢が敷かれた。
滅多に表に出ない、奥州の軍勢が集結している。
藤原秀衡も老いた身体にむち打ち、軍勢を率いるべく、馬上の人になっていた。
小池は橘次といっしょに藤原秀衡の側にいる。
小池も若干、緊張していた。
(まさか、こんな形で歴史の表舞台にでることになるとはな)
小池は自分の体を撫でた。
(“義経”はどうあっても表舞台に出る運命だったらしい)
目の前には源頼朝の鎌倉軍が行軍していた。
率いるのは鎌倉軍の総帥である範頼だ。
(電話では何度か話したけど、実際に会うのは初めてな。さて、どんなやつか)
小池は緊張した顔でそう思った。
やがて鎌倉軍の先頭が目の前に到着した。
その先頭の武者が馬から降りた。
それにあわせて藤原秀衡もまた馬から降りた。
「源頼朝様の名代、範頼です」
彼は言った。
「鎮守府将軍、藤原秀衡である」
それにあわせ藤原秀衡も名乗った。
そしてニコリと笑い。
「遠路はるばるお疲れ様でした。道中大変だったでしょう」
とねぎらった。
「いや、都にいくよりは楽でした。それよりもお招き頂きありがとうございます。本日、楽しみにしてました」
範頼は言った。
小池はその範頼を見て
(普通の若者だな)
と思った。
転生したとき小6と言ってたが、それから何年もこの時代で生きてきたのだろう。
小池も15歳で転生して10年以上の年月が経っている。
範頼もすでに二十歳は超えているはずだ。
彼の見た目は少なくとも小6の子供ではなく、この時代に見合った青年の武士であった。
「ところで小池殿はどちらに?」
範頼が訪ねた。
藤原秀衡が小池を紹介する。
その紹介を受けて小池が前に出た。
「小池だ」
小池が短く自己紹介した。
「なんだ、電話だとエラソだったけど、そんな小さかったのか?」
「お前、歴史、歴史って言うなら、ちゃんと調べとけよ。“義経”は小兵だぜ」
「そうなのか? 有名な英雄だから勝手にアスリートみたいに思ってたぜ」
「まったく・・・それにしても安心した。うまくやってるようだな」
「ああ、アドバイスのおかげだ。感謝している」
範頼はそう言って頭を下げた。
周りに人がいるため、詳しくこの場で言わないが、範頼は小池のアドバイスに従って、木曽義仲を滅ぼさず、守りに徹した。
その結果、源頼朝は事実上の辺境伯である範頼を重用する必要に迫られ大事にしている。このままいけば歴史のように流罪は発生しないだろう。
「俺もある人からアドバイスをもらった。だからこうやって生きてる」
小池は言った。
彼の心にはいまだお稲荷様の言葉が刺さっている。
『小池くんのカーッとなって後先考えずに動くところさ。せっかく、現代に蘇っても、また頭に血が上って、その結果、トラブルがおきて死んじゃったら蘇らせる意味ないよね』
『情熱は物事を進める原動力になるから大切だけど、同時にその情熱をコントロールする術がないと・・・抜き身の刀は刃毀れするし折れるよ』
この言葉を常に意識し、小池は生きてきた。
その結果、歴史は変わった。
歴史上、義経は衣川で自刃している。
小池は生き延びて範頼を迎えていた。
「今日はめっちゃ楽しみにしてるからな」
範頼はそう言って笑った。
「おう、10年ぶりのファーストフードを食わせてやる」
小池は笑顔で応じた。
この出会い。
橘次のマーケティング調査で活動した結果、もたらされたものだった。
橘次は各主要都市に赴き、要人に会いポテチの試食会を行った後、
「どうせなら出来たて食べませんか? これ以外にももっと美味しいものがありますよ」
と誘った。
ポテチがよほど美味しかったらしい。
各要人がそれに応じたのだ。
そして奥州の支配者である藤原秀衡がそれを政治化した。
せっかくなので各要人の顔合わせの機会にしようと考えたのだ。
平和主義者の彼はそれが和平の第一歩になると思い、各要人を呼んでの試食会を企画した。
木曽義仲は既に朝廷に関わる気はなく、同時に戦をする動機も失っていた。そのため藤原秀衡の思惑に乗った。もちろん出来立てのポテチを食べたいという理由もある。そのポテチを食べるため豪胆にも木曽義仲自身が平泉に来た。
平氏が基盤とする西国は飢饉のダメージが大きく戦どころではなかった。戦よりは、食料を手に入れることのほうが重要だった。可能であれば食料が豊富で、試食会を行えるだけの余裕のある奥州から食料を輸入できないかを考えていた。そこでまずは顔つなぎをしようと考え、藤原秀衡の誘いに応じた。ポテチ以上の食べ物が何なのかも興味があった。そこで平氏一番の知恵者である平知盛が名代として平泉に向った。
朝廷も平氏と同じく飢饉に苦しんでいた。租税もとまっているのでより深刻だった。そのため平氏同様、奥州から食料を提供してもらうことを考えていた。そこで彼らも試食会に参加することにした。その試食会で食料の提供をお願いしようと考えたのだ。参加するのは事実上のトップである後白河法皇だ。トップ自ら、動いた理由はただ一つ。美味しいジャンクフードが食べれるからだ。こればかりは都に座っていても食べることはできない。
藤原秀衡にとって意外だったのは九州の緒方惟栄もこの試食会に参加したことだ。
どうも朝廷から働きかけたらしい。
緒方惟栄は九州制覇を狙っていた。ところが中国・四国地方に平氏がいる。彼らの牽制のため兵を集中することができず、九州制覇が遅れていた。
そこでこの食事会を機会に平氏と顔つなぎし、将来的な不可侵同盟の足がかりをつくろうと考えた。そのため緒方惟栄自身が平泉にきた。商人経由で手に入れたシードルを気に入り、出来れば、大量に持って帰りたいという思惑もあった。
そして、関東の支配者 源頼朝。
彼もまた中央に進出するよりは関東の覇権を確立したいと考えていた。木曽義仲・平氏を倒して、その武威をもって覇権を確立するのがベストだが、現実問題としてそれが難しいとなれば、どこかで和平を結ばなければならないとは考えていた。そのきっかけとして藤原秀衡が企画した試食会はちょうどよかった。ただ、暗殺を恐れた彼は本拠である鎌倉を離れることはせずに最前線の将である範頼と彼の知恵袋である大江広元を派遣した。
こうして平泉に各首脳が集結した。
彼らの思惑は別として、表向きは小池のファーストフードの試食会だ。
こうして小池は歴史の表舞台に姿を表した。
提供するのはジャンクフードだ。
小池の店はその専門店だ。
フライドポテトに海苔味のポテチ、そしてオニオンリング
ピタサンドは三種類
ビーフ100%パティと漬物を挟んだもの
地鶏の唐揚げと葉物野菜を挟んだもの
魚のフライと炒めた玉ねぎを挟んだもの
蜂蜜と卵をふんだんに使用したドーナツも提供した。
ドリンクはりんごジュースとシードル。山葡萄のジュースの三種類
どれもが好評だった。
木曽義仲は単純にジャンクフードが気に入ったらしく、楽しんでいた。
彼が気に入ったのはフライドポテトと唐揚げだ。一人で10皿食べていた。朝廷に含むところがある彼は後白河法皇に提供された、ドーナツの入った皿を奪って、腹におさめていた。彼なりの仕返しだ。
悔しそうな後白河法皇の顔を見て少しは溜飲がさがったらしい。ゲラゲラ笑っていた。
平知盛は真剣な顔をしてフライドポテトを食べていた。彼が拠点としている西国は深刻な食糧危機に陥っていた。小池のジャンクフードを奥州から輸入できたら、その課題も解決するのではないかと考えながら、食べていたのが悪かったのか、気づいたら皿の上のポテチがなくなっていた。
その平知盛の思いは朝廷を率いる後白河法皇も同じだ。都もまた飢饉で苦しんでいた。ただ、平知盛と後白河法皇は思考がちがった。平知盛は輸入を考え、後白河法皇はこの会合を皮切りに政治力で解決しようとした。そのため、この場にいる全員との好感の形成を目的としていたが、シードルの飲みやすさに、つい杯を重ねてしまい酔った。そして気が大きくなり、何でも「いいぞ、いいぞ」と許可を連発していた。
その後白河法皇を酔わせた犯人が九州の緒方惟栄だ。
彼は九州制覇のために他のエリアの邪魔が入らないようにわたりをつけることを目的として、この会合に参加していた。そこで提供されたシードルの飲みやすさと、酔いやすさに目をつけ、後白河法皇を酔わせた。
範頼は涙を流してピタサンドセットを食べていた。
彼からすると前世以来のファーストフードだ。ドリンク代わりにシードルを飲んでいたが酔ったらしい。小池に「コーラはないのか! ファーストフード店にコーラがないのは怠慢だ!」と言って絡みだし、小池と口論していた。
その様子をオニオンリングをつまみながら鋭い目線で見ていたのが大江広元だ。
彼はこの会合で出された小池の店の商品であるジャンクフードを食べ、衝撃を受けた。そして、その国力を知った。見たこともない食べ物から貴重な油や、豆腐、蜂蜜をふんだんに使った料理が出てくるのだ。豊かでないとできない。
(これは奥州とは戦えない)
と油のついた指を舐めながらそう思い、これからの鎌倉政権の未来を考えた。
その様子を見ながら藤原秀衡はニコニコしながら新作のアップルパイを食べていた。
平和主義者の彼は、相争っていた各勢力同士が一同に会したことで平和の道への手応えを感じていた。
さまざまな思惑を持った政権トップたちが集まった初会合だったが、小池の提供したジャンクフードは概ね好評で、その味をしめた各代表は2回目の会合を約束した。
いままで敵対していた勢力同士の初会合としては上出来の結果だろう。
「ふーっ。緊張したけど、みんな喜んでくれたな」
厨房で料理の指揮をしていた小池は周囲に誰もいないことを肩の荷がおりたように独りつぶやいた。
「君がこのセカイに転生してからの努力の成果だよ」
彼の後ろから声がした。
振り向くと狐面の男がいた。
お稲荷様だ。
「何しにきたんだよ」
小池は思わずツッコんだ。
お稲荷様の手には油揚げが入った丼がある。
「これを食べにきたにきまってるじゃないか」
お稲荷様は言った。
「まったく」
「それにしても大盛況じゃないか」
「当たり前だろ。ジャンクフードは正義だ」
「確かに」
「だからよ。俺の努力の成果じゃないよ。俺はただ、ジャンクフードを食いたくてやっただけさ」
「何を言ってるんだ君は?」
「は? だから、俺は努力をしてないって言ってんの」
「何か勘違いしてないか?」
「?」
「あたしゃ、君が激情しなかったことを“努力の成果”と言ったんだ。ジャンクフードを作ったことをいったんじゃないよ」
「激情しなかったこと?」
「そう、範頼と初めて電話で話したとき、電話のマナーも知らず、いきなり怒鳴ってきた範頼に対して、君は激情のまま話をせずに一呼吸おいた。いつもの君ではできなかったことができるようになった。それを努力と呼ばずなんと呼ぼう」
「そんな大げさな」
「大きなことだよ。あれで歴史が変わったんだよ」
「マジか?」
「マジ、マジ」
「たったあれだけでか」
「たった一言が運命を変えるのさ」
「そうか」
「そうさ」
「いまの君なら元の時代にもどっても無駄死にしなそうだね。元の時代に戻るかい?」
お稲荷様は言った。
小池は目を見開いて驚いた。
「そんなことできるのか?」
「ああ、この時代でも油揚げを食べることができるようになったし、君も無駄死にしなさそうだ。君が望むなら叶えるよ」
お稲荷さんは言った。
小池はしばらく考えた後、
「まだ、だめだ」
と言った。
「? まだ、ダメとは?」
「コーラをつくってない」
「それは・・・元の時代に戻るよりも大切なことなのかい」
「もちろんだ。俺は舞鶴に約束したんだ。コーラを飲ませるって」
「なるほど、君にとって大切な約束なんだね」
「当然だ。コーラのないジャンクフードは美味しさの本領を味わってないことになる。それはもったいない。それを舞鶴に味わってほしいんだ」
「そうか、それなら代わりにこれをあげよう」
お稲荷様はそう言って小池に種を渡した。
「これは?」
「シナモンとかナツメグとか、香辛料の種だよ。君の目標の助けになるだろう」
「いいのか」
「もちろん」
「よし、これでコーラをつくるぞ!」
小池は喜んだ。
ふと気づくとお稲荷様は姿を消していた。
この小池のファーストフードの試食会。
ここから歴史は動き、朝廷、源氏、平氏、木曽、藤原氏、緒方の同盟が始まった。
世にいうジャンクフードの会だ。
合言葉は“ジャンクフードは正義”である。
小池はこのジャンクフードの会での料理提供者として名を遺した。
「剣と魔法の義経記」という作品を作成中に「義経がいなければ、戦が終わらずグダグダになってたのでは?」と思いつき描いた作品です。
ちなみに拙作の「剣と魔法の義経記」と本作は一切、関わりがございません。
ご注意ください。
参考までに「剣と魔法の義経記 ~もしも源平合戦がファンタジーだったら~」のURLはこちらになります。
https://ncode.syosetu.com/n1604mi/




