愛という名の毒。
この世界は女王様の物だ。
そういう風にこの国、日本では教えられるのだ。
いや……全ての国が今はそうか……。
そう、この世界はある日。
異世界の女王様によって侵略されたのだ。
俺はその頃……この世界にはいなかった。
だからこの世界に対して何も出来なかった……。
だが……まあ……思ったより変わらないのだから、そこまで悲観する事でもない。
そう、全ての国が女王様に服従している事以外特に大して変わらないのだから。
そうして俺は……15歳になり、今年、学園に入学する。
そこは女王様が直接管理する学園で、そこに俺は……ある目的を持って入学する。
それは……俺に出来る最大限の反逆だった。
□ □ □
「俺達エリートだな!」
「うん! 私達勝ち組だよね!」
「そうそう! なにせあの女王様が管理する学園に入学できるんだもん!」
モブ共が喚いているがどうでもいい。
勝ち組だとか負け組だとかそんなものに意味はないのだ。
勝とうが負けようが……この世界で必要なのは愛なのに……愛など……存在しないのだ。
故に勝者も敗者も存在しない。
もし勝敗をつけるなら生まれてきた時点で俺達は全員敗者だ。
そして俺は……この学園で……女王に……。
□ □ □
「それでは以上となります……解散!」
入学式が終わる。
まあ、当たり前だが……女王は出てこなかった。
なら聞く価値はないため内容は忘れた。
その後、クラスで自己紹介をし着々とクラスの奴等のカーストが決まっていく。
ここから恋愛強者と弱者が出るのだろう。
だが……思い知るがいい。
女王が推進する恋愛など、ドーパミンによって発生する快楽物質であり、まやかしで存在しないと。
□ □ □
放課後になり、俺は……女王を探す……。
そう、今日この学園にわざわざあの"力"を使ってまで入学したのは……女王がこの学園に来ると示されたからだ。
俺の目的はただ一つ。
恋愛を推進する女王に……。
女王に……恋愛をさせる事。
――そうして学園内を走り回る。
そして――。
「あら? 貴方……学園内でのダッシュは禁止ですわよ?」
――来た。
「これはこれは……女王様……お会いできて光栄です……そして廊下を走り誠に申し訳ない……」
女王は俺を舐める様に見てきた。
そして……。
「あら? 貴方……目が反抗的……」
来た! これを待っていた!
「ふふっ、よくぞ見破りましたね……俺の反抗的な態度を……」
そう、見破られるのも計算済み。
何故ならこの手のタイプは孤高で孤独。
故に少しでも他と対応が違うと興味を引けるのだ。
そして俺はこの女王様に恋愛をさせる……俺はこの女王様に恋人を探してやるのだ。
「何故……その様な態度を……?」
「女王! 俺は! お前の恋人を探してやるよ!」
俺がそう言うと女王は……。
「あらあら……可愛い宣言だこと……いいわよ? その態度気に入ったわ……」
「そうか……そうか……なら契約は成立ってことで……?」
女王を見ると妖しい笑みを浮かべていた。
「なんだ……! その顔は……」
「ふふっ……貴方を私のペットにして服従させてあげる……」
「はっ! 悪いがそう言うのはお断りだ……」
俺がそう悪態をついたその隙に……!
「ちゅ……!」
「むっ!?」
――それは長い永い静寂だった。
まるでそれは捕食者が獲物を狩る前の様な静寂。
俺はさしずめ女王に食べられる食材……。
唾液が混じるような深いキス。
相手の唾液が喉を通っていく。
それはまるで熱を帯びた毒の様な……もので……。
ドーパミンが脳内を駆け巡り。
俺は、思考回路に何か新しいシナプスが発生した感覚を覚えた。
やがて――。
「ぷはっ! はぁはぁ……」
「ふふっ! 可愛い顔になってますわよ? 私の愛し人……」
「お前……何をしている……それに……何が目的だ……?」
そう、俺なんかを女王が愛す訳がない。
確実に目的がある。
それに……この世界に愛など存在しないのだから。
「目的……? そんなものないですわよ? ただ……貴方を愛してしまったのです……」
女王は色気を感じさせる声でそう笑いかけた。
「さあ、行きましょうか?」
「……何処へだ……?」
「私のお城へ……」
「お断りだ……」
「あら、残念……では……出でよ! 全領域対応剣!」
女王がそう言うと手に赤き大剣を出現させる。
「無理矢理にでも連れていきますわ……!」
「ふっ……甘く見られたな……」
俺は……ポケットに手を入れ……。
「ワンオラクル……恋人の大紙……逆位置」
俺の恋人の大紙と赤き大剣が互いに交差し一触即発の状態だった。
そうして……。
「貴方……ますます面白いわね……いいわ……」
女王は大剣を下ろし、背を向ける。
「ブーケ・サンシェルワンス」
「知ってる、お前の名くらい……誰でもな……」
「最後に名前……聞かせて下さらない?」
「はぁ……大紙世界それが俺の名だ」
「大紙世界……覚えておきましょう私の旦那様……♡」
そうして女王は去っていった。
「たっく……面倒な事になったな……」
俺は女王に恋人を探させ、付き合わせて恋愛など無価値だと証明するつもりだったが……まさか俺が気に入られるとはな……。
「だが……この気持ち……」
まだ、ドーパミンが脳内を駆け巡っていた。
続き書いて欲しいって声があれば書きます。
ちなみに異世界経験豊富なプロと行く!に出てくる月の大紙と同じ能力系統ですが繋がりは多分ないです。




