別の世界での再スタート
この世界のどこかにある王国の罪人を収容するための地下牢。
そこで私は半ば拷問のようなものを受けていた。
手足は縛り付けられており、身動きなんて一切取ることができない。
その上、この部屋の至る所から鼻につく血なまぐさい香りが立ち込めていた。
「・・・・・・いやぁ、本当に面白い存在もいたもんだ・・・君、本当に不死なんだねぇ」
私が拘束されている横で眼鏡をかけたシスター服の女性はそんなことを言いながら、ケラケラと笑う。
「これでわかった?私は死なないし別に嘘もついてない」
「ふ~む、そうだねぇ・・・君は嘘をついているようにも見えない・・・だとすれば本当に異世界から来た存在というのは本当だろうね・・・リリエナが君を連れて帰ってきたときは半信半疑だったけどね」
―——あの森の中で、私はシスターの少女との話の食い違いで、一つの結論に至っていた。
それがここが別の世界・・・いわゆる異世界ということ。
最初こそは私だって目の前の拷問シスターと同じように半信半疑だった。
「—————別の世界から来た?そんなこと・・・あるんですか?」
「そうじゃないとここまで話が食い違うわけがない・・・私も、そしてあなたも嘘をついていない」
結局のところ、消去法のようなものだったりもする。
ただ一応の決め手となったのは私の世界にある西暦が違うのと、何年なのかだった。
ただまぁ、目の前のシスターの少女が私の言葉に耳を貸すかはわからないけど・・・
そんなことを思った矢先のことだった。
「一応、わかりました・・・けど、やはり信じられるわけではありません・・・なので、私に一度ついてきてください」
・・・意外と物分かりが良いのかもしれない。
と、そんなことを思ってしまう。
「・・・わかった」
断る理由もないため
私は彼女に連れられ・・・・・・今に至るというわけだ。
あれからどれだけの時間が経ったのかはわからないけど、
目の前のシスターの仮面を被ったただの拷問ドS野郎のせいでずっと痛い思いが続いている。
「上の人たちも、あなたを一旦釈放って感じでいいって言ってるんだよね、流石に面倒になってきたのかもねぇ・・・上の奴らそう言うところあるから」
「・・・つまりとうとう私もこの生き地獄を抜け出せるのかな?」
「・・・・・・随分と嫌われてしまったみたいだね、私としては君とは仲良くしておきたいのだけどね?」
「私を真の意味で殺してくれるのなら仲良くしても良いけど・・・これまでの様子からしてそれは無理そうだと思ったから」
「連れないな~、もう一週間も一緒にいた仲じゃないか」
「・・・一週間だろうが一か月だろうが変わらない・・・私は死にたい、だから私を殺してくれるものにしか興味が湧かない」
どんな世界に行くことになったとしても、
私の目的は変わることはない。
死ぬために私は生きているのだから。
「・・・・・・まぁ私が人の生き様にとやかく言うつもりはないよ・・・ほらよ」
そう言うと、その拷問シスターは私の手と足の枷を外してくれる。
「さて、それじゃあ、君の今の状況について話すことにするよ・・・今、君はいわゆる仮釈放のような状態だ、当然、君は今でも魔族の要注意人物認定だ、上の連中のほとんどは君をどうにかして殺すか、地下深くで永久に幽閉するかの二択だったんだけどね、まぁある一人のお偉いさんが君の処遇をこちらで受け持つから釈放させろって、上の連中は渋々それを了承して・・・現状ってわけ」
「・・・・・・そのお偉いさんには感謝だね」
「はは、まぁそれもそうだね・・・ただ、話はこれからだよ・・・釈放は釈放だけど・・・仮釈放みたいなものでね、君はこれから私たちの組織『メリシア教』に所属することになったから」
ここで拷問されている間、
この世界については軽く話してくれた。
そんな話に出てきた中にメリシア教が出てきた。
メリシア教、それはいわゆるこの世界の秩序を保つために存在する人たち・・・らしい。
まぁ見た目からしてどちらかとただの宗教のような気がするけど、
実際は私の世界でいた警察という役職のようなものなのだろう。
そこで異能者だったり魔族だったりの話も聞いたけど・・・
まぁそれに関しては今はどうでもいいかな。
「メリシア教・・・かぁ」
「あれ?意外と乗り気じゃないだね、君なら喜びそうだったんだけど・・・・」
まぁメリシア教は秩序を守る側なこともあっていろんな人たちとやり合うことになる。
そうなれば私の目的は達成できる可能性だってあるんだけど。
ただその分、懸念点だっていくつかあるわけで・・・・・・
「働きたくない」
・・・そう、働きたくないのだ。
労働なんてくそみたいなものだ。
私としては労働するぐらいならずっとゴロゴロと過ごしていくほうがいい。
「・・・君、それは流石に通用しないんじゃないかな?」
「でも嫌なものは嫌だ、労働なんてして何の意味があるの?」
「そんなこと言われても・・・・・・」
「ほら、そう聞かれてもって感じでしょ?なら労働になんて意味はない、故に私は働らきたくないし、働かない」
「そうなったら君は永遠に地下で幽閉されることになるんだよ?」
「それも嫌だ、だから自由に過ごさせてほしい」
「・・・それはダメ、そんなことしたら私の首が飛ぶし」
と、私と拷問シスターがそんな言い争いをしていた時だった。
「・・・・・お二人とも・・・何をしてるんですか?」
何やら聞き覚えのある声がする。
私がそちらへと視線を向けると、そこには見覚えのある金髪のシスター服を着た少女が呆れたような顔をして立っていた。
「あれ?リリエナ、君がこっちに来る予定だっけ?」
「・・・・・・はぁ、ルイさんがいつまで経っても来ないのでこちらから来たんです、そしたら何ですか?よくわからないことで言い争って」
「それは仕方ないだろう?彼女が働きたくないって言って聞かないのだから」
「彼女というのは・・・」
そこでシスターの少女は私のほうへと視線を向ける。
「・・・お久しぶりですね、えっと・・・・・・」
「・・・・・・そう言えば、名前、言ってなかった・・・私はシア」
「シアさん・・・ですね、改めて・・・お久しぶりですね、シアさん・・・その、すみませんでした」
突然、そのシスターの少女・・・リリエナはシアへと頭を下げてくる。
「・・・それは、どのことについて?私を間違いと言えど一度殺したこと?それともそのあとこの拷問部屋に閉じ込めていたこと?」
「・・・・・・どちらもです、あなたは不死だったから死ななかった、だけど・・・もしあなたが不死じゃなければ・・・私はあなたを殺してしまっていた・・・それに、拷問の件もそうです・・・ピンピンしているように見えますが・・・シアさんは死なないだけで痛みは感じているようでした、なのに私はあなたに拷問するという選択を取ってしまった・・・それについての謝罪です、わかってます、許されないことをしたということは・・・ですので・・・・・・」
「別に構わないよ、シスターさん・・・そもそもとしてあんな場所にいる人間がいたらやばい人だと思うもの、それに私は実際死んでいないし、それに拷問も特に苦痛でもなかった、あの程度なら何度か受けたことあるし」
「・・・・・・私の拷問をあの程度って・・・」
横で何か言っているようだけど・・・無視をして話を続ける。
「それに・・・私はあなたに感謝したいぐらい、あなたは私に教えてくれた・・・この世界には私が死ねるかもしれない可能性があるのだと、あなたのあの攻撃を受けて」
「えっと・・・それはありがとうございます、と言ったほうがよろしいのでしょうか?」
「まぁ・・・どちらにしろ、別にあなたが負い目を感じたりする必要はないってこと」
実際に特にこれといって怒ることもない。
それよりも負い目を感じているほうがやめてほしかったりするし。
「わかり、ました・・・ありがとうございます、シアさん」
「それでいい・・・それで?シスターさんがここに来た理由って私に謝るためだけじゃないよね?」
「なんだかすべて見透かされている感じがして嫌な気がしますが・・・シアさんの言う通りです、シアさんがメリシア教に入るということで私がシアさんの相方兼監視役として一緒に行動するということになったんです」
「・・・なら一つ、私働きたくないから一人で頑張ってくれる?」
「それはダメですね、普通に考えて・・・いくら強制的に入ったからといって働かないという選択肢はないです」
「そこを何とかならない?」
「・・・・・・そこまで言うならシアさん・・・無理やりでも連れて行くので」
そう言った瞬間、私の手を掴んで引っ張ってくる。
「ちょっ、シスターさん?」
「行きますよ!シアさん、あと私はリリエナというので、これからよろしくお願いしますね」
「いや、働きたくない・・・てか、力強っ」
「それじゃあ、二人とも、またねぇ」
「そんなこと、言ってないで・・・助けて!」
そう声を荒げながら助けを乞うわけなのだが・・・
そんな声が聞こえてないかのように拷問シスターは無視をしてくる。
それでも頑張って抵抗はするわけだが、なぜか力の強い彼女に非力な私が勝てるわけもなく・・・
抵抗むなしく引きずられていくことになるのだった――――。
初めまして、もしくはお久しぶりです?
黒ウサギです。
今回でこのお話は三話目の投稿となりますが、次の投稿はもしかしたら遅くなるかもしれません。
このお話を楽しみにしている(いるかわからないけど)方のために急ぐのでそこのところご了承ください。
あと、全く関係のないお話なのですが最近からX(旧ツイッター)のほうを始めたので、小説の更新やら情報やらを発信するので良ければそちらを見ていただければ・・・
→https://x.com/kuroiusagisn