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「悪魔の子よ!悪魔の子!」


 ハリージュ伯爵家の長女であるクラリスは継母マリアから罵られる日々に飽き飽きしていた。

自分と血の繋がりのある妹ユリアは非常に可愛がるのに、血の繋がらない前妻の娘であるクラリスには全く興味がないどころか、日々の鬱憤をぶつける。

しかし、クラリスは妹のユリアとは違い、非常に頭が良く、要領がいい。

言われたことは直ぐに覚え、何でもこなしてしまうのだ。

その頭の良さも、マリアの反感を買ったのかもしれない。


 ある日、マリアはクラリスに無理難題をもちかけた。

クラリスは冷静に“それは無理”だといった。それがマリアにとって反発と捉えたのだろう、体罰を与えた。

クラリスはこのままでは死んでしまうと思い、やり返してしまったのだ。

持っていた棒を奪い、反撃したのだが、それが屋敷中に広がってしまった。


『あの子は!悪魔の子です!まるで何かに憑依されたようにわたくしに暴力を振るってきました』


 マリアだけではなく、傍で笑っていたユリアも同じように突然クラリスが暴力を振るったのだと父親に告げ口した。

マリアたちの発言の方を信じ、クラリスは幽閉されてしまった。

それから時がたち、誰とも会うこともなく、外に出ることもなかったクラリスだったが、18歳の時、突然両親から呼ばれ、何年ぶりに部屋を出ることが出来た。


「突然だが、一か月後にお前を嫁がせることにした」

「…はぁ、どこですか?それは」

久しぶりに見る父親は老けたように見えたが、相変わらず偉そうな態度をしており、その髭を引き抜いてしまいたい衝動に襲われる。

「ファイフ公爵だ。次期公爵となるクロス・サンロインに嫁ぐことになる。そのため、お前にはある程度の教養を一か月で叩き込んでもらう」

「分かりました」

「お前、読み書きは出来るのか?」

「できます」

「そうか。ならば、今日から一般教養含め、公爵家に嫁ぐために様々なことを勉強しておくように。恥をかかせるなよ」

そう言った父親の隣に座るマリアは口元に手を添え、うふふ、と意味深に笑った。


「まぁ、いつまでいるかわかりませんけどねぇ。一人は死亡、もう二人は一か月で逃げ帰ったと噂のある公爵家に嫁ぐなど…でも、決して戻ってはこないように。あなたの居場所はこの家にはありませんよ。悪魔の子にあるわけなどないでしょう」


それを聞いてクラリスは会得した。


 ファイフ公爵について、その名はクラリスでも聞いたことがある。筆頭公爵であり、昔の大戦の際に大いに国に貢献したとされ、それ以降、領地も拡大している。

ファイフ公爵に嫁ぎたい者は大量にいるだろうが、“訳あり”なのだろう。

 この情報は流石に大量に積み上げられたあの古い書物には書いてなかった。


 クラリスは幽閉されていた身ではあるが、たまたま見つけた古い書蔵庫があり、することもないのでそこでありとあらゆる知識を詰め込んだ。

腕を組み、クラリスを見下ろしているユリアは、勝ち誇ったように口元に笑みを浮かべ、片方の眉を上げ、言った。


「お姉さまの結婚相手は仮面を被っているらしいのよ?知ってた?」

「そうなの」

興味無さそうに返事をされると、ユリアは口をへの字にして不服そうに睨みつける。


「噂では顔が醜いという噂よ」

「心が汚いあなたたちよりマシでは?」


 飄飄とそう言ってのけるクラリスに、ユリアはテーブルに置かれてあった紅茶の入ったティーカップを手にしてクラリスの顔めがけて掛けようとした。

しかし、それを父親に制された。


「ファイフ公爵家との婚約はうちにとってもメリットしかないんだ。今、クラリスの顔にやけどの跡でもつけてしまえば、それが取りやめになってしまうかもしれない。今は止めておきなさい」

「……わかりましたわ」


 悔しそうに顔を歪めるユリアを無表情で見上げるクラリスは、ようやくこの屋敷から出られるのかとそっちの方に気が向いていた。

とりあえず、暫くは教養を学ぶことから始まり、食事もある程度栄養のあるものを与えられるだろうと思った。

 嫁いできた女ががりがりで色白、髪の艶もなく、異常に不健康な見た目をしていたら、これまでの悪事がバレてしまうだろうから。

クラリスの予想通り、部屋も移され、翌日からは食事も普通のものとなった。

とはいっても、家族団欒の場に呼ばれることもなく、使用人以外とは口を開くことはなかった。

だが、クラリスにとってその方が都合がいい。

どうせ会っても嫌がらせを受けるだけだから、だ。


 この一か月の間、公爵家に嫁ぐための教養を身に着けることになるが、それだけではユリアたちの鬱憤が溜まるのだろう。

 使用人たちと一緒に屋敷の掃除や食事の準備をするように言われたのだ。


 この屋敷で働く使用人たちは、それはそれは憐れんだ目でクラリスを見ていたのだが、クラリスは意外と自分に家事スキルがあることを知り、生き生きとして楽しんでいた。

これがのちに、“勘違い”の始まりになるのであった。



ラブコメです。ゆるゆる世界観ですが、よろしくお願いします。

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