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暗黒竜と宝の地図

 僕はしみじみしつつも宝の地図をヨハンさんに広げてみせる。


「本当にこれ、僕がもらってよかったんですか?」


「もちろんですよ。一介の貧乏漁師の手には余る品です」


「でも、売ればお金になったんでしょ? そもそもヨハンさんだって叶えてもらいたいお願い事のひとつやふたつ、ないんですか?」


「……願い事、ですか」


 僕のなにげない質問に、ヨハンさんは少し言いよどむ。

 そうして彼はちらっと目の前に広がる大海へと視線を投げた。


 その目はなんだかひどく悲しげで、質問した僕が思わず言葉に詰まるほどだった。

 豊漁とか、いい船とか……そんなお願い事を想定していたんだけど。


(なんだかわけがありそうだな……)


 僕がそんな予感を抱いていると、ヨハンさんは誤魔化すように苦笑してかぶりを振る。


「そりゃまあ、あるにはありますが……俺が参加したところで、他の挑戦者に手も足も出ないはずですよ。だったら暗黒竜様にお譲りするのが正しい使い方ってもんです」


「そうですか……?」


「ええ。それにここだけの話」


 ヨハンさんはそっと身をかがめ、声をひそめてみせる。


「今朝からこの近海に、物騒な船が集まっていましてね。どいつもこいつも巨大な大砲を積んでいて……あんな連中に関わったら、命がいくつあっても足りませんよ」


「えっ、もうお宝ハンターたちが集まってきてるんですか」


「そりゃそうですよ。代々この宝探しに命を掛ける一族もいると聞きますし」


 ヨハンさんの話では、それほどこの宝探しは有名らしい。

 大きな船を有する船乗りや、それを稼業にする一族。

 裏社会の犯罪者なんかがこぞって海に乗り出して、舞台となる近海は大混雑するらしい。


「ただ、今回の舞台は暗黒竜様の領海なんですよね? そのせいで今のところみんな、立ち入るのを躊躇してるって感じです」


「ってことは、誰かが先陣を切ったら……」


「……あっという間に、このあたりまで押し寄せてくるでしょうね」


 ヨハンさんは気まずそうに言う。

 そうなると僕らの生活にも影響があるかもしれない。

 せっかく手に入れた平和に、早くも暗雲が立ちこめはじめた。


(うーん。これは……やっぱり僕が立ち上がるしかないかも?)


 僕はそんな責任感を覚えつつ、隣のオケアニルに尋ねてみる。


「ねえ、オケアニル。宝探しって海で開催されるんだよね」


「う……ん。それがどうかした……の?」


「海ってことは……クラーケン以外にも海洋型の魔物がいっぱいいるよね?」


「……それが?」


 オケアニルは怪訝そうだ。

 ヨハンさんとリタも話が飲み込めないのか、不思議そうにしている。

 だけど、それこそが一番大事な要素だった。僕はごくりと喉を鳴らして、感じんな質問を投げかける。


「宝探しついでに、いーーーーっぱい魔物を捕まえて食べても……大丈夫?」


「別にいい……けど?」


「やった! じゃあ参加する!」


 僕は小躍りガッツポーズで参加を決めた。

 それに三人ともぽかんと目を丸くするばかりだった。やがてリタがおずおずと尋ねてくる。


「レインくん。魚目当てで宝探しに参加するんですか?」


「うん。だって今回のクラーケンだってこんなに美味しいし」


 大きい図体だから大味かと思いきや、決してそんなことはなかった。

 ヘタをすると地球産のタコよりも弾力がしっかりしていて、旨味が強い。


 だったら他にもとびっきり美味しい魔物がいるかもしれない。大海原には無限大の可能性が眠っているのだ。


「ほかにもいろんな獲物に出会えるはずでしょ。だったら参加するしかないよ!」


「レインは、宝よりも食べ物のほうがいい……の?」


「まあ、宝もあるに越したことないけど」


 宝があれば神殿の修復費に充てられる。

 先日、エキドゥニルがぶっ飛ばした天井は大穴が開いたままだ。


 ただでさえボロボロなのに、あれじゃ廃墟と呼んでも過言じゃない。

 このまま放置するのは先代レヴニルに忍びないので、修理は最優先事項だ。


 でも、それはそれとして。僕はオケアニルに堂々と言ってのける。


「とびっきりの美味しいごはんを、仲間たちと食べる。僕にとって、それに勝る幸せは他にないからね」


「……ふうん? よく分かんない……や。我氏、ごはんとか食べない……し」


 オケアニルは小首をかしげて不思議がる。


 神様は本来、食事の必要がないらしい。

 現にさっきから全然食事に手を付けようとしなかった。


 元が人の僕と、趣味で食べてるエキドゥニルと違って、オケアニルは食欲もないんだろう。

 その代わりにあるのは、強い人への興味……なのかもしれない。


「レインは変わってる……ね」


「オケアニルに言われたくないんだけど」


 胡乱な目を向けてくるオケアニルに、僕はツッコミを入れておく。

 デスゲーム管理人が趣味の神様から変神(へんじん)扱いされた。理不尽な評価だった。

 そんな話をしていると、ヨハンさんがくすりと笑って膝を打つ。


「なにはともあれ、暗黒竜様がご参加されるのなら心強いです。あの船たちも早々に逃げ帰るはめになりそうですね!」


「当然です。だってレインくんですもの」


 リタも胸を張ってふふんと笑う。

 ふたりの期待を受けつつも、僕は苦笑いを浮かべるしかない。


「ただ、問題は距離なんですよね」


「距離……ですか?」


「そう。この地図を見てください」


 僕は再び地図を広げてみせる。

 三つのバッテンには、それぞれ数字が書かれていた。一と書かれている場所は、岸から一番近い。オケアニルはこの数字順に宝を集めろ、なんて言っていたけど。


「最初の宝は一番近いけど、それでも僕らが飛んで半日かかります。行けないこともないんですが……」


「バッテンの下に、なにか不穏なマークが描かれていますね」


「そうなんだよ、リタ。たぶん魔物が宝を守ってるんだ」


 バッテンの下には、おどろおどろしい影が描かれていた。

 ほかの二つのバッテンにも、巨大な魚や洞窟があって……僕は主催者に確認を取ってみる。


「宝を手に入れるには試練がある。そうなんでしょ、オケアニル」


「さあ……我氏、ネタバレはしない……主義……だから」


 オケアニルはわざとらしく口を押さえてみせる。

 だけど目がニコニコと笑っていた。

 どうやら僕の読みは当たりらしい。

 そうなってくると、やっぱり飛んでいくのはナシだ。


「半日も飛ぶとなると、きっと疲れちゃうと思うんだよね。そうなると、何があるかも分からない試練に挑むのは心配なんだ」


「そうですねえ。チビニルちゃんたちもいますし」


 リタはそう言って背後をそっと見やる。


 ヴォルグとネルネル、そしてチビニルはいつの間にかぐっすりスヤスヤと眠っていた。

 三匹ともタコ焼きでお腹いっぱいになったらしい。ヴォルグなんか「タコ……あなどりがたし……」なんて寝言までこぼしている。


 宝探しをするとなると、みんな僕に付いてくるだろう。

 彼らの身の安全を図るためにも、無駄な消耗は避けたいところだ。


「だから船を手に入れるのが先かなあ、って考えててさ」


「船ですか……うーん。村にもありませんしねえ」


「だよねえ。作るにしても知識がないから困ってたんだ」


 僕が作れるのなんて、丸太を並べた筏くらいだ。

 それで航海に出るのは、ちょっと心許ない。


「だからヨハンさん、もしよかったら船の作り方を教えてくれませんか?」


「ふうむ。それよりもっといい方法がありますよ」


「いい方法?」


 ヨハンさんは少し咳払いをしてから、にっこりと笑う。


「先日俺たちが乗っていた、あの船を差し上げます。どうぞ使ってください」


「へ!?」


 これには僕もリタも、あんぐりと口を開けて固まるしかなかった。


「大事な商売道具ですよね!? いいんですか!?」


「いやあ、直すより新しく作った方が早いような具合でして……」


 ヨハンさんは口髭を弄りながら苦笑する。

 どうもクラーケンに襲われた被害は甚大で、マストが根本からぽっきり折れているし、あちこち浸水が酷いしで使い物になりそうもないらしい。


「でもほら、暗黒竜様のとこのスライムくん。彼に穴を塞いでもらえれば、浸水の心配もなく航海できますよね」


「たしかに……でも、本当にいいんですか? 大事な船なんじゃ……」


「まあ……妻との思い出が詰まった一隻ですが」


 ヨハンさんは苦笑しつつも、かぶりを振って言う。


「まだ海に出られるなら、きっと船も喜びます。ぜひとも乗ってやってください」


「本当ですか? ありがとうございます! 助かります!」


「ちょっ、暗黒竜様が俺なんかにやめてくださいよ!」


 頭を下げる僕にヨハンさんは大慌てだった。

 お礼を言うのに、暗黒竜も何も関係ないと思うんだけどね。

 リタもニコニコとして、そばに置かれた大きな木箱を見やる。

 中にはヨハンさんが持ってきてくれた干物がぎっしりと入っていた。


「おじさんは気前がいいですね。お魚をたくさん持ってきてくれた上に船までくれるなんて」


「なあに、暗黒竜様のお役に立てるなら本望だ。なにしろ命の恩人なんだからな」


「いやでも、船の分はきちんとお礼しますよ。リタ、僕の貯金はどれだけ残ってる?」


「金貨五枚ほどですね。持ってきましょうか?」


「そんな滅相もない! 恐れ多くていただけませんよ!」


 ヨハンさんは真っ青な顔で首をぶんぶんと横に振る。

 うーん、これじゃあお金なんて受け取ってもらえなさそうだな。

 お金に代わるものか……なにかあったかな?


「あんたたち、なにやってんの?」


「あっ、エキドゥニル」


「ひぇっ……火焔竜様……!」


 うんうん悩んでいると、エキドゥニルがやってくる。

 手にはでっかい串をいくつも持っていて、大きくて真っ白な身が刺さっていた。

 どうやら無事にクラーケンが焼き終わったらしい。


 見れば大きく切り分けた身を、魔狼族や山の魔物たちがかぶりつくように食べている。羨ましそうに見つめる亜人の子供たちが、そんな彼らから分け前をもらったりして……なんだかお祭りの雰囲気だ。


「ほら、クラーケン焼きを持ってきてあげたわよ。ありがたく思いなさい」


「ありがと、エキドゥニル。一番大きいのは食べていいよ」


「ふふん! 言われなくてもそうするわ!」


 僕らに串を渡してから、エキドゥニルは特別でっかい身にかぶりつく。

 真っ白な身は、彼女の牙のひと噛みでぷっつりと千切れ、あっという間に口の中に消えていった。ごくんっと飲み込んだあと、キラキラとまぶしい笑顔を見せてくれる。


「んー! ぷりっぷりで美味しい! タコ焼きもなかなかだったけど、こっちもいけるわね!」


「ふふ、お土産を気に入ってもらえてよかったよ」


 僕もクラーケンの身にかぶりつく。

 食レポ通りのぷりぷり食感に、お醤油の芳ばしい香りと、潮の風味。

 シンプルがゆえに大正解な味が、僕にありし日の縁日の記憶を呼び覚ました。


「やっぱタコといえば素焼きも捨てがたいよね。やっぱり醤油を作って正解だったなあ」


「タコっていろんな食べ方があるんですねえ。勉強になります」


「俺たちも食うのは初めてです。売れるなあ、こりゃ」


 リタとヨハンさんもニコニコと串にかぶりつく。

 ゆっくり食べるふたりとは対照的に、エキドゥニルはあっという間にひと串を間食してしまった。口元をぐいっと拭って、干物の詰まった木箱に目をやる。


「こっちの干物も焼いていいわけ? まだまだ食べ足りないのよねえ」


「もちろんいいよ。こっちのヨハンさんが持ってきてくれたんだよ」


「ええっ……!? いやしかしこれは――」


 慌てるヨハンさんにもかまわず、エキドゥニルは箱から干物を取り出すと、ふっと炎を吹きかけて炙る。魚を焼く香りがぷーんと漂う中、骨も気にせずバリバリと食べきった。


 ハラハラと見守るヨハンさんに、エキドゥニルはふんっと不敵に鼻を鳴らす。


「ふうん、ちょっとしょっぱいけど悪くないじゃない。いい仕事するわね」


「きょっ……キョウシュク、デス……」


 ヨハンさんはガチガチになりながら頭を下げた。


「で、ですがその……あまりそのまま食べるのはお勧めしませんよ。ふつうは塩抜きして食べるものなので」


「えーっ。なにそれ、面倒臭いわねえ」


 エキドゥニルは顔をしかめてみせる。

 炙るのはよくても、ほかの調理工程が絡むと一気にやる気が失せるらしい。

 それより聞き捨てならない事実が判明した。僕は恐る恐るヨハンさんに尋ねてみる。


「そのまま焼いて食べちゃダメなんですか?」


「塩を大量に使っているので、ちょっと適さないですねえ」


 ヨハンさんは苦笑する。

 リタもうんうんうなずいて、食品事情を説明してくれた。


「干物は保存食ですから。水につけて塩を抜いてから、スープや煮込み料理なんかに使うのが一般的です」


「夏場の魚はすーぐ傷んじまいますからねえ。今の時期は、村のもの総出で干物作業に追われていますよ」


「獲るだけで終わりじゃないんですねえ」


 漁村の苦労が偲ばれて、僕はしみじみとしてしまう。

 現代日本じゃ、いつでもスーパーに鮮魚が並んでいたけれど。

 あれは相当贅沢な光景だったんだなあ。


(ううむ、だけどこのお魚たち……新鮮なまま食べたら、すっごく美味しいんだろうなあ)


 僕は木箱を覗き込んで唸る。

 中に入っているのは、鯛やアジなどによく似た魚たちだ。


 干物になって水分のほとんどが失われているというのに、身がすごく分厚い。

 皮も銀色に光っているし、脂ののりがひと目で分かる。

 塩焼きや煮魚もいいけれど、刺身やお寿司にもよさそうだ。


 僕はごくりと喉を鳴らす。


「生で食べても美味しそうだなあ……」


「ああ、そういう食べ方をする地域もあるみたいですね。腹を壊しちゃかなわんので、俺たちはもっぱらやりませんけど」


「うーん。魚の運搬って、夏場はみんなどんなふうにしてるんですか?」


「大きな商会なんかは、水魔法に長けた魔法使いを雇っていますね。生け簀で運ぶも、凍らせて運ぶも自由ですから」


 ヨハンさんはやれやれと肩をすくめてみせる。


「うちみたいに小さな漁村には、魔法使いを雇う余裕はなく……夏の間は干物にする一択です」

「なるほど。つまり冷やせればいいわけですね」


 少し考えて、ピーンと名案が閃いた。

 僕は干物の詰まった木箱を指し示す。


「ヨハンさん。この木箱、ちょっと触ってもいいですか?」


「へ? 別にかまいませんが……」


「また何かするつもりですか、レインくん」


「ふっふっふ。ちょっと見ててよね」


 目をぱちくりさせるヨハンさんに、期待の眼差しを送るリタ。

 そんなふたりにウィンクして、僕は木箱をそっと撫でる。

 使うのはお馴染みの、能力低減魔法だ。


「箱の温度よ、限界まで下がれ!」


 力ある僕の言葉に応え、木箱がピカーッと光を放った。

 光が収まったあと、ほの白い冷気がじわじわとあふれ出してくる。

 それを見てヨハンさんとリタは目を丸くして飛び上がるのだ。


「冷たい! なんだこりゃ……!」


「えええっ!? すごいです!」


「即席のクーラーボックスです。船のお礼ってことでひとつ」


 目論見がうまくいって、僕は鼻高々だった。

 中を覗くと、干物の一部に霜が付きはじめている。どうやら温度は零度以下らしい。

 ヨハンさんも箱をペタペタと触って興奮気味に言う。


「これがあれば、新鮮なまま魚を運ぶことができます……! 仕事がぐんと楽になるし、なにより飛ぶように売れるに違いありません!」


「おじさん。冷やせるのは魚だけじゃありませんよ」


「えっ?」


 そっと口を挟んだリタに、ヨハンさんはキョトンとする。

 リタはにんまりと笑って続けた。


「水を入れれば氷ができます。暑い日が続きますし、欲しがる人はきっと大勢いますよ」


「っ……お嬢ちゃんは賢いな! どうだろう、もっと他にいい活用方法があったら教えてくれ!」


「いいですよ。一緒に考えましょう」


 リタはにっこりと笑い、ヨハンさんとあれこれ知恵を絞りはじめる。

 なんだかやる気だなあ、リタ。そんなにヨハンさんのことが気に入ったのかな?


「いやはや、うちの放蕩娘に爪の垢を煎じて飲ませてやりたいよ。ほんと、しっかりしたお嬢ちゃんだなあ」


「未来の旦那様によくしてくださったお礼です。リタでよければ力になりましょう!」


「待ってリタ。未来の旦那様って誰のこと?」


「ははあ、暗黒竜様の奥方様ときたか! なるほど、それならこの一帯は安泰ですね!」


「ヨハンさんも納得しないでください」


 僕のツッコミは、盛り上がったふたりに聞き流された。

 外堀がどんどん埋められて、立派な石垣までできた気分だった。


(それより……リタとヨハンさんが仲良くなってよかったなあ)


 人と亜人の垣根を越えて、ふたりの間には絆のようなものが生まれていた。

 それを見守っていると、エキドゥニルが呆れたように口を挟んでくる。


「クーラーボックスねえ。あんたは本当に器用よね」


「そう? 能力低減魔法を使っただけだよ」


「『だけ』って……簡単に言ってくれちゃって」


 顔をしかめたエキドゥニルが右手を翳すと、小さな炎が生じてゆらゆらと揺れる。

 それをじっと見つめながら続けることには。


「たとえば火焔竜の我ちゃん。我ちゃんが干渉できるのは炎に関することだけよ。温度を上昇させることはできても、冷やすことはできない」


 右手の炎を握りつぶし、エキドゥニルは僕にジト目を向ける。


「自分と何の関係もない属性に干渉するなんてふざけた芸当、暗黒竜と光輝竜にしかできないわ」


「えっ、そうだったんだ」


 僕はばちくりと目を瞬かせる。


 スピリット・ドラゴンは六柱。

 光、闇、炎、水、土、風。

 闇の対になるのはもちろん光だ。

 その二柱だけが持つ力ということは……この魔法、かなり特別なものかもしれない。


(そんな力を使って、僕はラーメンを作ったり、クーラーボックスを作ったりしたの……?)


 なんだか罰当たりな気もするが、神様なのでバチを当てる側だ。

 そう無理やり納得すると、光輝竜のことが気にかかった。


 同じく対となる、炎のエキドゥニルと水のオケアニルは、あんな感じで仲がいいのか悪いのかよく分からない関係だけど……レヴニルとその光輝竜さんとやらは、いったいどんな仲だったんだろう。


 だから、僕はおずおずと尋ねてみるのだけど。


「光輝竜さん……って、どんな神様なの?」


「はあ? 『どんな』もなにもないでしょうが」


「へ?」


 エキドゥニルはきょとんと首をかしげる。

 どうしてそんなことを聞くのか、って疑問に思っているような顔だ。

 そのまま頭上に輝くふたつの太陽を指し示して――。


「あいつならずっとぶぐうっ!?」


 頭上から大量の海水を被り、全身水浸しになってしまった。

 後ろからそーっと近付いてきた子供たちが、バケツで水をぶっかけたのだ。


「エッキー! いっしょに、あーそーぼー!」


「いまねー、みんなでかけあいっこしてるのー」


「エッキーもやろうよ! たのしいよー!」


 子供たちは満面の笑みでエキドゥニルを誘う。

 当の神様は髪から水を滴らせたまま微動だにしない。

 やがてすべての水滴が滑り落ちたあと……エキドゥニルは鬼の形相で子供たちを追いかけていった。


「こんのガキども! 目にもの見せてくれるわ! そこに並びなさい!」


「「「きゃーっ!」」」


「あはは……無茶だけはしないでねー」


 僕は手を振って見送るしかない。

 なんだかとても大事な話を聞き逃した気がする……。

 まあ、盛り上がったところを邪魔するのも悪いし、今度改めて聞いてみよう。

 そんなことを心に刻んでいると。


「うふふ~……話はまとまった……ね?」


 オケアニルがイタズラっぽい笑みを向けてくる。

 それに僕はうーんと伸びをしながら答えた。


「そうだねえ。無事に船の目処が付いたことだし、サクッと宝探しといこうかな。もちろんオケアニルも付いてくるんだよね?」


「あたりまえ……我氏はそれを見るために……ここに……いる」


 オケアニルはそっと近付き、僕の耳にほうっと熱い息を吹きかける。


「期待してる……ね、レイン……レインは今一番の、注目株……だよ」

「ご期待に添えるか分からないけど、最善を尽くすよ」


 僕はそれにニヤリと笑い返した。

 よし、そうと決まったら……宝探しに出発だ!

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