表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/11

遠くて遠い

「ほい!!シェフ直伝特製肉じゃが!肉増し増しスペシャル!!」

うなだれた俺の目の前に味が染み込んだと言わんばかりの肉じゃががドンと置かれた

「…ありがとう、頂きます」


「これ食べて元気だしなよ!」

リュウの声はよく通るな…


肉じゃがを頬張る、優しい味付けなのにちゃんと染みてる

「美味すぎる…」顔を覆う

「シェフ直伝だからね!俺も初めて食べた時めっちゃ感動した!!」

今の俺には家庭的な味が色んな意味で染み渡った…


そう…あのオーディションに落ちたんだ

「残念ですが今回は…」

残念と言う言葉をもう数え切れないほど聞いてきた


今回のオーディションはいつもより通過してたし、その分淡い期待があったけど現実はやはり厳しい…

もしかしたら?なんて希望は速攻砕かれた。


「でも10人くらいまで残るの凄くない?進歩じゃん」

「いや…結局選ばれなきゃ意味無いから…」


沢山受けて落ちまくってきてるけど、落ちた日はやっぱりそれなりにヘコむ


「沢山食べて、ゆっくり休んで寝なよ!それが1番!」

こうゆう時、リュウの楽観的な明るさは救いだ…

(たまに何も考えてないと思う時もあるけど)

「そうだね…」


「ソウヘイくん!これ食べて。温野菜のサラダ!野菜食べてる?栄養つけなきゃだめだよ!」

いつも色々出してくれるオーナーシェフ

優しいなぁ…

「ありがとうございます。頂きます」


「毎日暑いから体に気をつけてね!」

麦茶を入れてくれるシェフの奥さん


ご夫婦でやってるこの店は本当に暖かくて居心地が良い…

東京の父母のようだ…

リュウは良い店で修行してるなぁ


「ソウヘイ何かあったら連絡してよ、何も無くても別に良いし!愚痴でもさ!」


「うん、ありがと」



店をあとにして夜道を歩く。

まだ比較的夜は過ごしやすい

今日は星が綺麗だな…明日も晴れだな



…受かりたかったなぁ…

せっかくハルにも貴重なアドバイス聞けたのに…


次に進む為にも早く気持ち切り替えないと…


ふと、ビルに貼ってあるポスターに視線がいく

ハルが写ってた。


隣で話したりして一瞬でも身近に感じた自分が恥ずかしい

信じられないくらい天と地の差だ…

とんでもなく遥か遠い存在に思う。

第一線で活躍してるプロは本当に凄い…

挿絵(By みてみん)


ヒット作を生み出すのも、それを長年継続していく事も遥か遠い夢のまた夢だ…

でも実際に何十年と活躍してる人達は居るんだよな…

尊敬でしかない…



家に帰ると荷物が届いていた。

実家からだ。米やインスタントラーメン、保存食、お菓子、様々な物が箱いっぱいに詰まっていた


定期的に母親が送ってくれる。ありがたい…

と同時にずっと心配かけてるのが申し訳ない

たまに連絡来るけどクチうるさく言われる訳じゃない。言いたい事は山のようにあるだろうけど…


中々…気まずくて実家にしばらく帰ってない

何の成果も無く、合わせる顔も無いし…



ゴロンッと床に寝っ転がる

古びた天井を眺めながら…


…いつまでも このままで居る訳にはいかない

なんとかしなきゃ…

気持ちばかり焦る一方だ…


今日は眠れそうにないな…


ふとハルの曲を流す

出会ってから今までハルがリリースしたのを改めて聴くようになった


「…良い曲だなぁ」

ポツリとつぶやいていた…


どうしたらこんなに良い曲が歌えるんだろう

どうしたら歌詞がひらめく?

どうしたらメロディーが思いつく?

考えてもきりがない



ハルの声は七色の声と言われるくらい曲によっても色んな歌い方をしている。音域が広くて高音から低音まで幅広く歌いこなす


色んな人がハルを称賛している

まさに歌う為に生まれて来たようだと。

本当にそう思う


昔ハルのインタビュー記事を読んだ事があった

「ライブは公演1本1本今日が最後だと思って歌っている」と

真摯に大事に覚悟持って向き合ってるって事だよな…すげぇな


俺も誰かの気持ちを動かせるような歌が歌いたい

なれるかな…

いやなるんだ


立ち止まっていても何も始まらない

何も変わらない


また新たにスタートを切るしかないんだ



















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ