幻
ピピピピピ…
目覚ましの音で起きる
すでにカーテンから強い日差しが差し込んでいた
昨日から1夜明けて、にわかに信じがたいが記憶は残っていて…
思い返してみるも…
ソックリさん…?
いや…でも…
どう考えてもおかしいよな…
[ハル] は人気のシンガーソングライターで歳は確か23歳。16で現役高校生デビューをした。
力強い声、それでいて伸びやかで美しい歌唱力、歌詞も独特の世界観がありつつも気持ちを表現する力が凄い…若い世代から上の世代まで幅広く支持されていてファン層が厚い
流行りに疎い俺でも当時は同年代のデビューに注目したし曲も聴いていた。歳も違わないのに詞曲を自分で作り、歌い上げる事にただただ尊敬した。こんなに才能ある人が居るんだと…
と同時に自分の無能さに落胆していた。
全く何も進んでない現状が更に追い打ちをかけて…
ハルはライブ中心に活動していてテレビなどメディアにはほぼ出ない
割と謎多きアーティストだと思う
俺も歌以外の情報はほぼ知らない
そんな人気者が何者でもない、ただの路上で歌う一般人に声かけるか? ありえない…
でも2回、聴きに来てたよな…
考えても堂々巡りだ…
もうバイトに行かなきゃ…
今日は終わったら約束がある。
バイト後 とある店に向かう
こじんまりとした佇まいの店
カランカランッ
ドアを開けると
「いらっしゃい、来たなソウヘイ!」
声をかける人物は
上京後に初めてしたバイト先で出会ったリュウ。
今はここで料理人見習いとして働いてる。
家庭的な料理が多く、和食やパスタなどメニューも幅広い。なんと言っても、めちゃくちゃ美味い。
オーナーのシェフは元々有名な料理人だったらしい
独立して店を開いたと言っていた
「今さオムライス特訓中だから食べてほしいんだけど、どう?」
「別に良いけど俺トロトロしたのより、ちゃんと卵包んでるタイプが好きだから」
「了解!よし!決まり♫」
なんだかんだ来るとサービスしてくれるし、ありがたい
独り暮らしだと食事なんて雑になる一方だ
リュウの第一印象はチャラチャラした軽い感じで、極力関わりたくなかった。見た目も派手だったし。
だけど休憩中すげぇ話しかけてくるわ聞いてもない身の上話聞かされるわでウザかったけど
仕事は以外と真面目にやってる所見て段々印象が変わっていった。人って分からないもんだな…
「おまたせ〜」
理想的なオムライス登場
黄色が眩しい…
ひとくち頬張る
「美味!!卵の火の通り具合完璧だわ。」
「そりゃ良かった♫」
「…リュウはさぁ現実的にありえない出来事にあった事ある?」
「え、何例えば?スピリチュアル系?」
「違うわ」
「…突然有名人に出会うとか…」
「え!!誰かに会ったの!?誰!?」
すげぇ前のめりで聞いてくる…
「いや…人違いかもしれないけど…」
「何だよ!どうゆう事?」
「普通に生きてる世界が違い過ぎる人と出会う事なんてあるのかなって…」
「よく分からんけど、あるんじゃない?人生何が起こるか誰も知らないし」
…まぁそうだけど…非現実的すぎるんだよなぁ
「大丈夫?ソウヘイ何か疲れてる?」
「大丈夫だよ。ごちそうさま、美味かった!」
「またすぐ来てよ!試作品食べてほしい」
「うん またな」
次のバイト先まで歩いて行く
カラオケ屋はもう長く働いてる
俺が1番古株くらいにはなってる
フリーター生活が板につきすぎて
「…いつまで続くんだろう」
大体この言葉が頭をよぎる…
ふと、ある募集を思い出す
とある映画の挿入歌のオーディション
もうなりふり構ってる場合じゃない
選ぶ立場でもない
目の前にある事に全力で取り組むしかない
何か一歩進むキッカケが欲しい
自分に自信が持てる何かが…
もうあっという間に6月も終わろうとしていた