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再会

朝8時30分、まだボンヤリした頭でバイトに行く

18時まで事務バイト

夜から深夜はカラオケ屋でバイト

みっちり働いてるけど生活はずっとカツカツだ…

都会は本当に金がかかる


下町の5.5畳の狭いアパートに住んでるけど、家賃が高い…それでも最初安くしてもらった


壁が薄いしギターの練習しようもんなら筒抜けだ…公園とかで弾いたりもする

スタジオ借りれば良いけど結構高い…

歌はバイト先のカラオケ屋で割引価格で練習したりしてる、なんならギター練習もそこでたまに。


俺の育った所は地方の田舎で、川と田んぼしか無い、娯楽も何も無い所だ

のどか…ではあるけど退屈に感じてた。

そして田舎特有の閉塞感も苦手だった。


歌はもともと好きだった。誰かに聴かせるでもなく、自分の部屋で歌ったりCD聞いたりしてた。


中学生になり運試しでオーディション受け始めたけど書類で落とされる。

え…歌すら聴いてもらえない?結構ショックだった。


高校生になってオーディション受けるも書類落ち、1次審査落ち、運良く歌を聴いてもらえる所まで進んでも、特にそこからの進展は無かった…

まぁこんなもんだよなぁ…半ば諦めモードになりバイトに明け暮れた。


高3で進路を迫られた時、まだ中途半端に歌手の夢を諦めきれない気持ちと田舎からでたい気持ちがあり

1年バイトで上京資金貯めて出てきた。

両親に就職してほしいと言われたけど…まぁ普通そう思うだろうな…

申し訳無さもありつつ自分の気持ちを優先した。


ちなみに上京資金はあっという間に無くなった

東京の物価の高さ半端ない


上京してからもレコード会社にDM送ったりオーディション受けてるけど、箸にも棒にもかからない


「歌はまぁ…上手いんだけどなぁ」

「オリジナルの曲いまいちなんだよね」

大体同じ事を言われる


売れてるシンガーソングライターはどうやってヒット曲を生み出すのか…本気で聞きたい


そんなこんなで、あっという間に24歳になってしまった。最近自分はいったい何をしてるのか分からなくなる…


モヤモヤした気持ちを持ちつつ、歌いに行く

今日はあそこで歌うか…

なんだかんだ歌う事で吐き出してる


いつものように人が通り過ぎていく…

10曲目を歌いおわった時、


パチパチパチ!

拍手が聞こえた


音のする方を見ると、1人女の子が立っていた

「やっぱ凄い良い声〜!」


…ん?前にも来てくれてた子…だよな?

今日はマスクだけしてる


あ…お礼言わなきゃ…「ありがとうございます」


「お兄さん名前なんて言うんですか?」

「…ソウヘイです」

「私はハルって言います。ソウちゃんて読んで良いですか?」


…おぉ…距離の詰め方早いな…

コミュ力乏しい人間は驚くスピードだ…戸惑いが隠せない


「…別に大丈夫です」


「ソウちゃんはオリジナルあんまり歌わなんですか?あ、もちろんカバーも素敵だけど」


「オリジナル曲…しっくりこないんだよね…歌ってはいるけど…カバー曲の方が歌う頻度は高いかな…」


「前歌ってたオリジナルのメロディーライン良かったです。5曲目だったかな」 

あぁ…あれは聞きやすい感じだもんなぁ…


「あ!そうだ!!甘い物好きですか?」

…唐突に何でそんな事聞くんだ…この人

今の話の流れで?


「…まぁ…好きですけど…」

「良かった!!ここの近くに凄く美味しいジェラートのお店あるんです!!」


「…はぁ」

「行きましょう!!」

「え?」


あっという間にギター等を片づけさせられた

なんかペースに巻き込まれてるけど大丈夫か?



彼女に案内されたジェラート店は色んな種類があって、どれも美味しそうだった。


「ここ本当に何食べても美味しいよ!ワッフルコーンも手作りだし、夜も営業してるから最高!!」

テンション高めに彼女が言う


「何にしようかな〜〜♫」

子供みたいにワクワクしながら選んでる…


「よし!今日はストロベリーとレモンにする!ソウちゃん決まった?」

「あぁ うん」


なんかナチュラルに敬語なくなってるな

…まぁ良いけど


「あそこで食べよう!」

近くにあった外のベンチに腰をかける


「美味しいーー!!色んな所で食べたけど、やっぱりここのが1番!」


俺もひとくち食べてみる

ちなみにチョコとナントカベリーにした


「…え 美味い」

「でしょ!!良かった〜!」


「甘さ控え目でコーンも美味いね」

「本当そう!素材にこだわって作ってるって言ってたよ!トリプルも出来るって!」

いや…トリプルはさすがに多いだろ…


ふと…見ず知らずの人とアイス食べてる この状況はいったい何なんだ…

よく分からない…


「あ!もうこんな時間!戻らないと!じゃあまたね!ソウチャン!」

そう言って笑顔で足早に走って行った

挿絵(By みてみん)



何か凄い人だったな…


…いや ちょっと待て

重要な何かを見落としてる気がする…


なんだ…思い出せない…


魚の小骨が刺さったようなモヤモヤが取れないまま、とりあえず家に帰る


駅前のCDショップの前を通るとアーティストのMVが流れていた

通り過ぎようとした時、


記憶がフラッシュバックする


…え?

今この画面に出てる人物は

さっきまで俺の隣に居た…


いやいや…そんな馬鹿な…


ついさっき、マスクを外した顔を初めて見て、

…正確にはチラ見くらいしか見なかったけど

どこか見覚えのあるような感覚があって…


いやいや待て。人気のアーティストが突然話しかけてきたり、アイス一緒に食べるとかありえないだろ…


しかも名前も偽らずに…

そんな事人生で起こるのがおかしい…

疲れて幻でも見たんだ俺は…


きっとそうだ…ゆっくり休もう


まだかすかに残るチョコの味を感じながら歩き始めた


























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