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姉妹百合にはさまる女は罪!  作者: 河藤 十無
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第58話・しょーげきのこくはく

 おい待てちーちゃん。その話誰から聞いた。まさか早くも二人と接触したのか。四条さんだけじゃなくて卯実と莉羽もあたしの後を追いかけてきたのか。それとも四条さんを全っ然信用してなくて、本当に大人しく帰ったのか確かめにきたのか。

 もしかしたら……四条さんが「私が椎倉さんの恋人だけど?」とかしれっとウソを吹き込んだのか。

 ヤベェ、最後のが一番説得力あるっ?!………じゃなくて本人に聞くのが一番早いか。


 「おいおいちーちゃんよ。一体誰が誰の恋人だってぇ?というか別に誰が恋人だってちーちゃんには今のところ関係無かろうよ」

 『へー。恋人がいることは否定しないんだ』

 「…………」


 ……初手で失敗した。いやすぐに反論すれば多少は取り繕えたんだろうけど、間が出来てしまったので今から何を言っても怪しくなるっ。

 とはいってもダンマリを続けるわけにもいかない。男子三日会わざれば刮目せよとも言うじゃないか。だったら女子だって六年も経てば長足の進歩を遂げるに違いあるまい。

 見よ、ちーちゃんに泣かされてた頃のあたしとは全く違う、椎倉佳那妥完全体を!


 「そっ、そんにゃこぴょいつ言った……言っちゃかなっ?!あ、あたたたたし知らない……ヨ!!」


 おい。全然進歩してないどころかむしろ悪化してるじゃねーか。いや待てかつて卯実相手にコレやらかした時はかえって芝居クサくなって本来の効果を発揮したんだっけ。今なら……今のあたしの演技力ならちーちゃん騙すくらいお手のもの……。


 『しじょーちゃんが言ってたよ?今は誰かいい人がいるみたいだけど、しじょーちゃんきっと自分が捕らえてみせる、って』


 ……えーと、真実に微妙に近い方向にずれていた。そういう内容を吹き込まれた上であたしの微妙な演技が加わる、いこおる……真実に近い方に誤解が加速するっ?!

 ヤベェ、何とか卯実たちの存在からちーちゃんの目を遠ざけねばっ!


 「あ、あー……あのね、ちーちゃんや。四条さんはあたしをいじめて悦に入る困ったお嬢さんなの。その彼女があたしのことについて真実をちーちゃんに吹き込むと思うかね?」

 『思うね。しじょーちゃん、確かに佳那妥をぶったりとか悪いことはしたって言ってた。でも今の佳那妥を気に入ってるのは本当だし、自分のやった悪いことについては佳那妥に傷をつけたことで自分は佳那妥の一部になれる……とか言ってたよ』

 「変態だーっ!!」


 いや冗談じゃねーわ。むしろこっちとしてはぶたれたことなんかキレイさっぱり忘れてやるからもう関わりにならんでほしー、と思いの丈をぶっちゃけてやろうかと思ったんだけど。


 『変態はひどいなあ。ボクにはしじょーちゃんの気持ち分かるもん』

 「へい、ちーちゃん。思うのは勝手だがその気持ちに晒される被害者のあたしとしては見過ごせねえんだよ。もしちーちゃんが四条さんの同類だと言うのなら、今後のつき合いは無しにして昔のこともゼロにしてもいいくらいなんだが。というかなんで四条さんの気持ちなんか分かるんだよぅ」

 『そりゃ分かるよ。だってボクも佳那妥のこと好きだもん。昔から、ずうっとね』


 ………………………………………………………………………………は?


 『佳那妥のこと、ずっと好きだったよ。小学生の頃から。いじめられて泣き出す顔とか、流石に心が痛んで優しくするとぱあっと笑うところとか、自分に自信がなくていじけてるとことか、時々調子にのるけどすぐすっ転んでやっぱり泣き出すところとか』

 「いや待て待て待て、それあたしを好きになる理由じゃないじゃん。そんな情けない子供好きになるようなヤツ……」

 『だから、しじょーちゃんの気持ち分かるな、って言ったんだよ。佳那妥みたいな可愛い子が、表情ころころ変わるところ、ずっと側で見ていたいもん』

 「う……で、でも四条さんはそんなんじゃないって……」

 『あの後結構話し込んだんだよ?しじょーちゃん、これから泣かせたいって思ってたクラスメイトが佳那妥に盗られたみたいで面白くなかったけれど、佳那妥の方がずうっと逸材だ、って』

 「そんな評価はいらねーっ!!……あのさ、ちーちゃん。事情とか理由の怪しさはさておくとしても、だよ?久しぶりに再会した幼馴染みがずーっと自分への恋心拗らせてました、なんて話聞かされてあたしゃどんな顔をすればいいんだよぅ」

 『そう?それよりボクは気になってることがあるんだけど』

 「聞きたくない聞きたくない。なんかこれ以上話聞かされても頭がウニになるだけだっつーの」

 『ボクもウニ好きだけど』


 そういう問題じゃない。


 『とにかく、今ひとつだけ言えるのは……』


 ええいもう喋らんでええ!……と通話を切るためにスマホに手を伸ばした時だった。


 『佳那妥のカノジョから佳那妥を奪ってみせるからね!』


 ……と、とんでも発言が聞こえてきて。


 『今のところはそれだけ。じゃねっ!』


 そして後に残るのは、こっちより先に通話を切られたスマホだけだった。

 もちろんあたしは、最後に聞こえたちーちゃんの問題発言の内容が頭蓋骨の中で八往復くらい反響した後で、こう呟いたのである。


 「……………なんでやねん」

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