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ブラームス交響曲第1番 Part2



 やがてオレは、その院内のBGMの影響なのか、しだいにみずからクラッシック音楽を好んで聴くようになっていった。今なら簡単にYouTubeで、さまざまな作曲家のいろいろな曲が聴けるため、おススメであらわれた動画をいろいろ聴いてみたりしているのだが……


 そして毎朝の愛犬シーズーのシーとの散歩では、散歩用のスカイブルーのショルダーバックに入れたiPhoneから、辻井伸行の演奏でラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を聴くようになった。 ──たとえば夏の朝焼けによる不思議な色合いの空を眺め、第3楽章の壮大な曲と風景の一致を必然のように感じたり、曲自体が長いのでちょうど散歩時間とマッチしている──

 そうして先日、やはりYouTubeのおススメに、小澤征爾指揮のサイトウ・キネン・オーケストラのデジタル録音の動画が出でいた。すぐに聴いてみると、驚いたことにその曲は、あの中性的な容姿の心療内科医のお洒落な院内でBGMとして毎日聴きつづけ、もっともこころに残っていたまさにその曲だった。ようやくオレは、何年ぶりかに聴いたその曲こそ、ブラームスの交響曲第1番だと知ることができたのだ。


 いまオレは、このエッセイを書きながら、ブラームスの交響曲第1番を聴いている。あのやや薄暗くダークな色合いのお洒落な院内で、受診までの残りの人数を知らせる電光掲示板を睨みながら、まだかまだかと切羽詰まったように追いつめられていた自分を、世界刻(せかいこく)から切り離されたと感じていた当時を思い返しながら……

 そうしてあれからすぐにシーと出会い、いまオレの腕に頭を乗せて熟睡しているシーに感謝しながら…… ──ちょうどブラームスの交響曲第1番の演奏が終わり、観客から盛大な拍手がおくられている──


 ──さあ、ちょっと遅くなったが、晩ご飯にしよう、おなかすいただろう、シーごはんだよ!




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