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『1Q84』Part2



 ウィキペディアの『1Q84』の欄に、「執筆の動機と背景」という項目があった。村上春樹は、ジョージ・オーウェルの近未来小説『1984年』を土台に、近過去の小説を書きたいと以前から思っていたらしい。

 またそれとは別に、地下鉄サリン事件の裁判を傍聴しつづけ ──ごく普通の、犯罪者性人格でもない人間がいろんな流れのままに重い罪を犯し、気がついたときにはいつ命が奪われるかわからない死刑囚になっていた── 「そんな月の裏側に一人残されていたような恐怖」の意味を自分のことのように想像しながら、何年も考えつづけたことがこの小説の出発点となっているとも。さらに「原理主義やある種の神話性に対抗する物語」を立ち上げていくことが作家の役割であろうと。


 1Q84年。 ──私はこの新しい世界をそのように呼ぶことにしよう、青豆はそう決めた。Qはquestion markのQだ──

 

 ヤナーチェックの『シンフォニエッタ』に導かれて、主人公の青豆と天吾の不思議な物語がはじまっていく。オレはこの不思議な世界を十分に理解したとはいえなかった。しかしこの小説は、おそらく十分な理解なんて必要ないし、何かを感じることができたならそれでいいのだろう。


 いまオレは愛犬シーズーのシーと一緒に、ヤナーチェックの『シンフォニエッタ』を聴いている。 ──先ほどまでシーはオレにお尻を向けて熟睡したいたけれど、いまは目を覚ましている──

 ふと入院時、消灯時間が過ぎても、個室の病室のスタンドライトを頼りに夢中になって『1Q84』を読んでいたオレに、まだ若いセミロングで端正な顔立ちの看護師さんが、ライトの照明に顔を火照(ほて)らせながら注意をした、あのときの光景を思い出した。おそらくこんな会話だったろう。


 ──それ、村上春樹の新作ですよね、ずいぶん話題になっているみたいだけど、そんなに面白いんですか?


 ──ちょっとパズルのように複雑な小説かもしれないね。この本のタイトルの『1Q84』の世界の空には二つ月があるんだけれど。主人公の青豆と天吾が、リアルな1984年の世界の過去を書き換えるために、空に二つの月がある『1Q84』の世界が必要になるって物語。まあ二人の完璧な愛の物語かもしれないけれど。


 ──よくわからないけれど、結局は恋愛小説ということ? 今度読んでみようかしら。


 まだ若かったセミロングの看護師さんが、その後『1Q84』を読み、完璧な恋愛の物語だと感じたかどうかはわからない……



 最後に、この小説にはいろいろな音楽が登場するが、後日、村上春樹はインタビューでこんなネタも明かしている。

 『1Q84』は「バッハの平均律クラビーア曲集」のフォーマットにのっとって、長調と短調、青豆と天吾の話しを交互に描こうとして書いたと。



 さあ、初日の出の薄明のなかを、シーと散歩に出かけよう。




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