知の巨人
2021年4月、「知の巨人」と呼ばれた立花隆が亡くなった。尊敬していた方だったので、何回かにわたって、立花隆について乏しいイメージを語ってみたい。
立花隆は、長崎市に生まれたが戦前、父が文部省職員として北京の師範学校の副校長になったため、一家で中国の北京に渡っている。戦後、引き上げで日本に戻り、父の郷里の水戸市に移ったが、そうした幼い頃の「自分がどこに行こうとしているのか?」という経験が、その後の彼の生き方に影響したかもしれないという。
生涯3万冊の本を読み、100冊の本を執筆した立花隆の出発点として……
──あなたはだれ? ここはどこ? いまはいつ?
たとえば、交通事故に遭った人間の意識が正常であるか判断を行う際、医師は上記の質問を投げかけるという。しかし、今の人類にとって大真面目にその問いを答えるとするならば、宇宙がビックバンによってはじまる以前がわからないように、まだ失見当識状態にあるという。つまり、まだ明確な答えがわからないのだ。
NHK人間大学『知の現在 限りなく人間へのアプローチ』という自分の番組で立花隆は、人間はどこから来て、どこに行こうとしているのか?という根源的な問いを探究するために勉強してきたと語った。
「人間は考える葦である」というパスカルの言葉を支えとして、
──空間によって宇宙は私を包み。思考によって私は宇宙を包む。
という信念のもと立花隆は、最先端の科学を踏まえた新しい哲学の構築と、知の探究を行なってきたようだ。
そもそもおれが、立花隆を知ったのはいつだったろう。
『田中角栄の研究〜その金脈と人脈』を執筆し、田中角栄退陣のきっかけになったぐらいしか知らなかったはずだが、宇宙飛行士のその後の人生を描いた『宇宙からの帰還』を読み、とても感銘を受けたことは覚えている。
それから、たびたびNHKなどのテレビで見かけるようになり、その巨視的な視点からの普遍的、根源的な話しに惹きつけられた。
およそおれの知る限り、彼のような人間は他にはいなかった。すべての新聞やマスコミ、NHKでさえタブーとされていた、当時の首相田中角栄の金脈にまで追及し、その正義感も生半可なものではなかった。
石井紘基議員は、闇とされている国の特別会計予算を国会で追及しようとして暗殺されてしまったが……
もしゃもしゃの髪も気にしない様子で、彼にとって世間一般の常識はどうでもよかったのだろう。彼の関心は、「人間はどこから来て、どこに行こうとしているか?」の問いにつながるものだけだったはずだから……
また、NHKの立花隆の事務所猫ビルを紹介する番組では、その圧倒的な本の量に驚かされた。階段にまで本が山積みにされていて秘書みたいな方が管理をされているようだった。
ちなみに、ゴーギャンの代表作のタイトルも『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』である。
近々、また続きを……
今晩もエアコンで温められた部屋で、愛犬シーズーのシーと一緒に寝ている。いよいよ特捜部による議員本人への事情聴取が始まった。腹を括ってすべてを明らかにしなければ、国民の信頼は取り戻せないだろう。国民はもっと怒りを示すべき時だ。