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 『懐かしい年への手紙』読了



 講談社文芸文庫の大江健三郎『懐かしい年への手紙』を読了した。約600ページの長編小説を夏からおよそ4カ月かけて読了したことになる。平日はほんの2、3ページしか読むことができなかったため、休日にできるだけ読みすすめるように努めた結果だ。

 読了したばかりで、自分のなかでまだ消化しきれていない処理しきれていないのが現状だ。巻末に解説とは別に ──著者から読者へ『ギー兄さん』── と題したあとがきのような大江自身の文章が載っていた。そこで大江はこの小説を、ギー兄さんという架空の人物を手がかりに自分の生の()()()()にしようとして書いたと述べている。 ──自伝的な長編小説ではあるが、主人公のKちゃんと対をなすギー兄さんをハッキリと架空の人物と断言していた── オレのようなアマチュアで小説を執筆しているものには、とても啓示的な言葉や文章が散りばめられていた。また難しい漢字や邦訳なしの英語、あるいはダンテの『神曲』の抜粋など、辞書代わりのiPhoneを片手に頻繁に調べながら読みすすめることが求められた。 ──自分の無教養を嘆きながら──

 

 このノーベル文学賞受賞の対象作品となった『懐かしい年への手紙』が、どれほどの読者に受け入れられたかはわからないが、辞書を引きながら読むことを(わずら)わしく感じる方には向かないだろう。気軽に読めるような小説ではない。大江健三郎という作家と対峙するぐらいの覚悟は必要になるだろう。

 『懐かしい年への手紙』について、さらなる具体的なことは後日何回かにわけて書いてみたい。それほど手ごたえのある小説であったから。

 本日は、ダンテの『神曲』からの抜粋で、とくに重要だと思われる箇所を紹介して終わろと思う。 ──「天堂」の結びの部分── まだオレにはこの文章の意味が、よく理解できていないのだが……


 《さてわが高き想像はこゝにいたりて刀を缺きたり、されどわが願ひと思ひとは宛然(さながら)一様に動く輪の如く、はや愛に(めぐ)らさる/日やそのほかのすべての星を動かす愛に。》



 薄明のなか愛犬シーズーのシーと散歩しながら、色づきはじめた東南の空にひときわ目立つ金星を見つめ、この全宇宙に包まれたオレとシーの存在を奇跡に感じる。オレとシーの存在そのものが全宇宙でもあるのだ。




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