『亡き王女のためのパヴァーヌ』
Ravelの『亡き王女のためのパヴァーヌ』を、久しぶりに聴いたら涙が出そうになった。今日このエッセイを書こうと思った理由もひとつだけ。
もしこの曲を聴いたことがないというのであれば、検索すればYouTubeですぐに聴けるので、ぜひ辻井伸行のピアノで聴いてみてほしい。もう聴いたことがあるし知っているというのであれば、いまいちどぜひ聴いてみてほしい。
なんと美しい曲だろう。
──タイトルの意味は、《かつて宮廷で幼い王女が踊ったようなパヴァーヌ》、Ravelは、スペインの宮廷画家ベラスケスが描いたマルガリータ王女の肖像画からインスピレーションを得たといわれている──
晩年のRavelは、記憶・認識の障害や筆記の困難になって苦しむが、こんなエピソードが残されている。
──ある日、Ravelは、聴こえてきた音楽のあまりの美しさに驚いた。そして『この素晴らしい曲は、一体誰の曲なんだ?』と尋ねたそうだ。その曲はなんと、若き日のRavel自身が作曲した『亡き王女のためのパヴァーヌ』だった。
オレ自身もこの曲にインスピレーションを受けて、拙作『シーと亡き王女のパヴァーヌ』を書いたことがあったが、その当時の思いが蘇ってきた。
あらためて『亡き王女のためのパヴァーヌ』の美しさに感動した。ほんとうに美しい。
オレは愛犬シーズーのシーとの朝の散歩時に、よくiPhoneでクラッシック音楽を流しながら歩く。やはりラフマニノフのピアノ協奏曲第ニ番とか、Ravelの『亡き王女のためのパヴァーヌ』とかベートーヴェンとか……
底辺から赫く染まった東の空と音楽が融合し、オレとシーが生きている奇跡を実感するのだ。