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『懐かしい年への手紙』第二部 第三章「〔naif〕という発音のあだ名」



 大江健三郎の長編『懐かしい年への手紙』第二部 第三章「〔naif〕という発音の()()名」を読了した。


 新制中学に入学し身体への暴力的なトラブルにみまわれた主人公のKちゃんは、ギー兄さんより対策として、ドイツ製の跳び出しナイフを授かり問題を解決する。やがて松山の高校へ転校すると、〔naif〕という発音のknife(ナイフ)から、同じ発音でフランス語のよりソフィスティケートなnaifという()()名で呼ばれるようになった。そうして、大学へ進むことになってもなにを学ぶべきか計画をたてえないKちゃんからの手紙へ、ギー兄さんはひとつに道筋を示した返事をくれたのだった。

 ──外国文学科へ入学し、やがて森のなかの土地の神話と歴史について、外国語の論文を発表する日を夢みていると! 英語でいうならば、On KOWASU-HITO, the destructor & creator──


 外国語の論文ではなかったが、やがてKちゃんこと健三郎は、森の神話と歴史についての長編小説『同時代ゲーム』を執筆し発表することになっていくのだが……


 大江文学のもっとも核となり原点ともいえる小説こそが『同時代ゲーム』であろう。極端にいえば、それ以後に発表された作品は『同時代ゲーム』から派生した、または補足された作品のように思われる。まだ途中だが、今読みすすめているこの『懐かしい年への手紙』でさえも。

 あの小林秀雄が2ページで投げ出してしまったという晦渋(かいじゅう)な『同時代ゲーム』を、オレはずいぶん前になにも意識せずに読了したが、あらためて再読する必要があるだろうと強く感じている。今度こそはよく理解しえるだろうと、少し自信も湧いてきたのだから……



 今晩も愛犬シーズーのシーと一緒に寝ながら、日本酒を飲み『懐かしい年への手紙』を読みすすめている。もはや大江健三郎の小説を読む人間などほとんどいないだろう。しかしオレはシーの寝息を聴きながら、()()()()()()()を描く小説家だと確信し読みすすめている。




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