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ひとつの青い照明です



 詩の言葉と韻文の羅列(られつ)、オレは小説に比べてなかなか詩に馴染むことができなかった。たしかに、詩のもつひとつひとつの言葉の力は読むものの心をしっかりと(とら)え、言葉の奥に広がる世界を知ることはとても魅力的だ。

 しかしながら、この言葉の奥に広がる世界への理解と想像力が乏しかったためか、それとも詩人の意図する世界と、自分がイメージする世界に常に違和感を感じたためなのか、なかなか詩に馴染むことができなかった。

 それでも大学生の頃から、宮沢賢治や中原中也、谷川俊太郎といった詩人には興味があった。

 たとえば、中原中也の『汚れっちまった悲しみに』には、心を揺さぶられるものがあった。


 汚れっちまった悲しみに

 今日も小雪の降りかかる

 汚れっちまった悲しみに

 今日も風さえ吹きすぎる



 また谷川俊太郎の『二十億光年の孤独』では、ひとりの人間の孤独を宇宙の果てしなく広大な世界として表現する感性に共感した。


 二十億光年の孤独に

 ぼくは思わずくしゃみをした



 さらにオレとって宮沢賢治は、 ──ミンナニデクノボートヨバレ、イツモシヅカニワラッテヰル── そんな稀有(けう)な詩人であり童話作家として大きな存在となった。社会人となって初めて一人暮らしをはじめた時、ネコのキャラクターが登場する杉井ギサブロー監督のアニメ映画『銀河鉄道の夜』を観たのが、賢治に興味を持つきっかけになったと思われるが……


 東北自動車道で、岩手県の賢治のふるさと花巻市あたりを走行していると、その山々や川、草原などの自然の風景は、賢治のいうイーハトーブの世界にぴったりだという気になってくる。もし岩手県を訪れる機会があったなら、ぜひその自然の風景からイーハトーブを感じとってみてほしい。


 ──あ! やっぱり、イーハトーブだ!


 と感嘆することだろう。



 またアニメ映画『銀河鉄道の夜』のエンディングで、賢治の詩のようなものがナレーションとして流れていた。不思議な言葉の羅列だった。今まで聞いたこともないような異質な世界だった。後から調べてみると、それは賢治の詩集『春と修羅』の序だということがわかった。

 今でも、その異質で不思議な言葉の羅列に驚かされるのだが……


 わたくしという現象は

 仮定された有機交流電燈の

 ひとつの青い照明です



 今日も愛犬シーズーのシーは、壁際の畳の上でぐっすりと寝ている。朝になって雨が上がったら、夜明けの光のなか散歩に行こう。




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