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日本の現実 PART1



 あたりまえだがオレは戦争を知らない。メディアでの情報から得たものだけだ。太平洋戦争時の日本人は戦争に負けるという《現実》を予測できたのか? 広島、長崎に原爆が投下される《現実》を予測できたのか? 当時の国民は正確に日本の《現実》を理解できていたのか? 

 それでは今の日本の国民はどうだろう? 正確に今の日本の《現実》を理解できているのか? どうしてもオレにはそうとは思えない。原爆が投下されてはじめて《真の現実》を知ることになってしまうだろう。たとえば、曖昧な定義だが文学が()()()()()ものだと仮定して ──文学はもっと大きなものだとオレは認識しているが── 真にどうのような《現実》を日本人が生きているのかを理解しなければ、とうぜん《真の文学》は描けない。 ──《真の文学》という定義も曖昧だが── しかしながら、正確に《真の現実》を理解することはむずかしい。なぜならメディアをはじめとする情報が必ずしも《真の現実》を発信していると思えないからだ。よくよくさまざまな情報を正確に読み解き考察しなければ、《真の現実》はみえてこないだろう。

 今回から何回かにわけて、できる限りのさまざまな情報を考察して、オレなりに世の中の《真の現実》に迫る試みを行なってみたいと考えた。 ──あるいは皆さまに問題提起をしながら── そうすることによって《真の文学》を描く一歩となるために、そうしなければ『カラマーゾフの兄弟』に近づくことはむずかしいのだから……


 それではまず、今の大学生を中心に若者について考えてみると、今の学生の話題には3つのタブーがあるという。


 ① 性

 ② 政治

 ③ 本当に好きなもの


 なぜこれらの話題がタブーなのかわかるだろうか? これは何を意味しているのだろう。大学生の間では政治の話題は()()にしない。なぜなら変な人だと思われたくないから、自分のポジションを失しないたくないから、過剰であることを避けるためだと言われている。過剰さを避けるためにキャラを演じる。しかしながら本来は、議論をしなければ価値観は生まれてこないはずなのだ。

 さらに弱者の連帯から、世の中に対するあらたなエネルギーや新しい価値観も生まれてきたはずなのに、お金のない大学生も非正規雇用で働くカツカツの若者も自分が満たされていると思いこみ、ブランドに身を包んだごく一部のIT企業社長を横目に見ながらスターバックスでカフェラテを飲んで満足している。日本の平均所得はおよそ30年間も上がっていないか下がっている。ヨーロッパやアメリカなどの先進国ではあり得ない数字だが、この間に日本人は ──あらたなエネルギーも新たな価値観も生み出すこともなく、あるいはそうした生活になんら疑うことすらなく── スターバックスでカフェラテを飲んで自分が満たされていると思いこんできた《現実》が、今の日本の停滞を象徴する一つの《現実》なのかもしれない。



 今晩もエアコンで温められた部屋で日本酒を飲んでいる。愛犬シーズーのシーはお尻をオレに向けて寝息をたてている。日本の若者が、どれだけガザ地区の子供たちのことを考えているのだろうと思った。




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