『河馬に噛まれる』
インターネットで、《大江健三郎ファンクラブ》というサイトを見つけたら、ほとんどの作品が発表順に的確な解説付きで紹介されていた。筆者名が記載されていなかったため執筆者が不明だったが、たいへん的を得た解説と紹介文で驚いた。 ──《大江健三郎ファンクラブ》があることもはじめて知った──
ざっと目を通すと短編連作集『河馬に噛まれる』で目がとまった。次のような興味深い紹介がなされていた。
──アフリカで河馬に噛まれたという青年と語り手の、長い年月に渡る間欠的関わりあいを軸にいくつかのエピソードを描く短編集。浅間山荘事件が題材として織り込まれており、この事件が大江健三郎に大きな衝撃を与えたことを思わせます。(略)
悲惨な事件への理解と、関与した人々のイメージをもったうえで読んだとき、『河馬に噛まれる』は一層の切実さで迫ってきます。革命を信じた若者たちが、その理想主義ゆえに信じがたいほどの悲惨な事件を起こす。その取り返しようのない大きな悲惨さに対し、関与した人たち、さまざまなレベルで事件に影響を受けた人たちが、どのような再生・恢復の道があるのかをめぐって苦悶しつつ生きていく。そのさまが、さまざまな角度から描かれているのです。
その重いテーマを、現実と想像を複雑に織り交ぜ、ときにはユーモアも交え、見事というほかない構成にまとめ、独自の文体で物語る。このようなことが他の作家に可能でしょうか。(2008年7月13日記す)──
迂闊にも、『河馬に噛まれる』があさま山荘事件を扱った短編連作集だったことをはじめて知った。厳寒のあさま山荘事件は、オレの心奥にも深く刻みこまれている。大江の中期にあたる書き下ろし長編小説『洪水はわが魂に及び』も、あさま山荘事件のイメージとメタファーが描かれており、オレにとっては特別な作品となっている。
すぐに本棚を探すと、ずいぶんむかしに購入した単行本の短編連作集『河馬に噛まれる』が見つかった。今日は休みだったので、ホコリを払ってさっそくこの短編連作集を読みはじめ、最初の短編『河馬に噛まれる』を読了した。 ──短編連作集の表題と同じ作品名──
詳しい感想は、この短編連作集を読了後に述べたいと思う。 ──読書中は、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を聴きながら白ワインを飲んでいた。いつものように愛犬シーズーのシーの愛らしい寝息を感じながら──