「カラマーゾフの兄弟』その9
ゾシマ長老は、わずか三つの息子を亡くし嗚咽に身をふるわせる母親に尋ねた。
──お前さんの子供の冥福を祈って法要をして進ぜよう、何て名前だったのかね?
──アレクセイでございます、長老さま。
──立派な名前だ。神の人アレクセイにあやかったのかね?
──はい、長老さま、神の人アレクセイのお名前でございます、神の人の。
「アレクセイ」という名前は、この小説の主人公で修道僧のアレクセイと同じであり、オレはオヤッ? と思い、すぐに「神の人アレクセイ」をGoogleで調べてみた。するとある方のblogで、江川卓『謎解き『カラマーゾフの兄弟』には、以下のように書かれてあると紹介されていた。そのまま引用するが、とても興味深い内容だった。
「神の人アレクセイ」とアリョーシャは小説の中で呼ばれるが、神の人アレクセイとは、4世紀のローマのキリスト教の聖者で、貴族の子であったが乞食同然の生活で神への愛一筋に生きたという。(注:アリョーシャとはアレクセイのこと)
江川は、『カラマーゾフの兄弟』はロシアの巡礼歌から大きな影響を受けているというが、19世紀ロシアに流行した巡礼歌「神の人アレクセイ」の主題は、すべての人に対する分け隔てのない愛である。
(アレクセイは小説の主人公の名前であると同時に、ドストエフスキーの死んだばかりの息子の名前でもある。父親の名前は二人とも同じフョードルだ。)
なんと、ドストエフスキーの幼くして亡くなった息子の名前もアレクセイだった。そして、ゾシマ長老と面会した母親の三つで亡くなった息子の名前は、「神の人アレクセイ」にあやかって名付けられていた。ここに、ドストエフスキーの深淵な思いと願いが込められているように、オレは感じた。
愛犬シーズーのシー