『カラマーゾフの兄弟』その5
『カラマーゾフの兄弟』新潮文庫(原卓也訳)中巻615ページを読了した。中巻は8月1日から読みはじめたので、約1週弱で読み終えることができた。──早く読了したい気持ちがますます強くなり、時間さえあれば文庫本をひらいていた。遅読のオレとしてはハイペースといえるだろう。いよいよ下巻を残すのみとなった。──
今回も詳細な内容に触れることは避けたいと思う。この世界最高峰の長編小説を完読したら、熟考のうえ、あらためて感想を記したいみたいと思う。 ──キリスト教における信仰やさまざまなことが豊潤に描かれていて、ひとことふたことではとても語れない──
ただ今回も、中巻を読み終えて印象深かったことを少しだけ記してみたい。
ひとつは、ゾシマ長老の死と、彼の8つ歳上の兄のことだ。日ごろから病弱で、腺病質で、きゃしゃな身体だった兄マルケルは、結核のためわずか17歳でこの世を去った。ゾシマ長老9歳の時だった。
兄は召使たちに、 ──どうして僕に仕えてくれるんだい? 仕えてもらえるような値打ちが僕にあるだろうか? と問い。不思議がった母親にこう答えた。 ──本当に人間はだれでも、あらゆる人あらゆるものに対して、すべての人の前に罪があるんです。僕は苦しいほどそれを感じるんだ。それなのにどうしてあの当時の僕らは、のほほんと暮して、腹を立てたり、何一つ知らずにすましたりしてきたんだろう?
また、兄の部屋は庭に面しており、木々には春の若芽が萌え出て、早くも渡ってきた小鳥たちがさえずり、兄の窓に向かって歌っていた。そして兄は突然、その小鳥たちを眺め見とれながら、小鳥たちにまで赦しを乞うようになった。 ──神の小鳥よ、喜びの小鳥よ、僕を赦しておくれ。お前たちに対しても僕は罪を犯していたんだから。
そしてゾシマ長老は、生涯に渡ってこの兄のことを忘れることはなかった。
もうひとつは、父親フョードル殺しの容疑者として連行された長男ドミートリイが、日頃の粗暴な面とは裏腹に、とても高潔な人間だったこと。これも理由を簡単に記するのが困難だが、とても印象に残った。
そしてこの『カラマーゾフの兄弟』中巻でも、面白い引用が多く使われ意外だった。
子豚が一匹ブー、ブー、ブー
子牛が一匹モー、モー、モー
小鴨が一羽クヮ、クヮ、クヮ
鵞鳥が一羽ガー、ガー、ガー
雌鶏は土間を駆けまわり、
コッコ、コッコと鳴いたとさ、
ホィ、ホィ、鳴いたとさ!
愛犬シーズーのシー