表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
190/267

『カラマーゾフの兄弟』その3



 現在、『カラマーゾフの兄弟』第二編「場違いな会合」を読みすすめているが、この二編ではアレクセイのいる修道院のゾシマ長老 ──スヒマ僧(ロシア正教における高位の修道士)で聖人君子とされ、修道院には彼のご利益にあやかろうとする人でいつもあふれている── を頼りに、父フョードルをはじめ長男ドミートリィ、二男イワン、そしてカラマーゾフ家の親戚にあたるミウーソフ等が(つど)った。

 のっけからフョードルとミウーソフが互いをけなしあい、遅刻して来たドミートリィとフョードルが言い争うなか、体調のすぐれないゾシマ長老の発言が注目される。


 もちろんオレは、それらゾシマ長老の言葉すべてを理解しようと務めたが、わりと長い発言が多く、すべての言葉を理解することは一旦置いておいて、とにかく曖昧であっても読了することに注力した。確信はもてないが、おそらく重要な話しだと思われたところを抽出して記してみる。またミウーソフが発言した言葉も気になったので記してみた。 ──前回も記したがオレは、カラマーゾフ家の三男で修道僧の主人公アレクセイが、やがてテロリストへと変貌して行く。というドストエフスキーの死によって描かれなかった幻の第二部を念頭に入れて読みすすめている──


 ──今のところキリスト教の社会自体まだ態勢がととのわず、わずか七人の義人の上に立っているにすぎませぬ。しかし、彼らの力は衰えておりませぬから、まだほとんど異教的な結合体に近い社会から全世界を統治する単一の教会へ完全に変貌(へんぼう)させようという期待を揺るぎなくいだきつづけているのです。(途中省略)

 その時期や期限などで心を乱すことはありませぬ。けだし時期や期限の秘密は、神の叡智(えいち)の中に、神の予見と愛の中に秘められておるのですからの。およそ人間の計算ではまだきわめて遠くにあるはずのもの、神の予定では、ことによると、すでに実現の直前にあって、もう戸口まで来ているかもしれないです。そうあってほしいものです、アーメン、アーメン!


 ググってみると ──ロシア正教会は、聖人として多くの義人を崇敬している。その顔触れは、盲目の農婦から生涯不敗の海軍提督まで様々だ── とあり、最も崇敬されるロシアの聖人7人が紹介されていた。

 またゾシマ長老のいう、神の予定とは何を意味するのか? すでに実現の直前にあって、もう戸口まで来ているかもしれないです。と語っているが……


 またミウーソフが、数年前、十二月革命(ナポレオンが行った革命)直後のパリで、きわめて枢要(すうよう)な、そのころ指導的な地位にあった人物を訪問した際、たいへん興味深い人物であった公安刑事の隊長が、ひょいと(もら)した話しを語った。オレはその話しがきわめて印象的だった。


 ──われわれは実際のところ、アナーキストだの、無神論者だの、革命家だのという、あんな社会主義者たちを、さほど恐れちゃおらんのです。あの連中の動きは監視していますし、手口も知れていますからね。しかし、連中の中に、ごく少数とはいうものの、何人か特別なのがいるんです。それは神を信じるキリスト教徒でありながら、同時に社会主義者でもあるという連中なんですよ。この連中をわれわれはいちばん恐れているんです。これは恐るべき人たちですよ! キリスト教徒の社会主義者は、無神論の社会主義者よりずっと恐ろしいものです。


 のちに修道僧のアレクセイが、社会主義的な思想に傾倒していったのなら、隊長のいう恐るべき人たちに該当するのではないか? と考え、オレは鳥肌がたった。ドストエフスキーは、未来のアレクセイの姿を思い描いていたのではないかと……





挿絵(By みてみん)


 愛犬シーズーのシー




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ