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夏は夜。月のころはさらなり……



 ききょう(清少納言)が、四季折々の風景を記して、寝たきりの中宮の藤原定子の枕元に置くと、やがて定子は起き上がってその文章を読むほどに回復し、ききょうはひそかに喜びの涙を流した。



 夏は夜。月のころはさらなり、闇もなほ、ほたるの多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし。


 夏は、夜よる。月の出ている頃の夜はもちろんである。闇夜もやはり、蛍がたくさん飛とび交っている(夜は)。また、蛍がただ一つ二つなど、かすかに光って飛んで行くのも趣がある。雨など降るのも風情がある。(現代訳)



 深夜に愛犬シーズーのシーと散歩に行く。青みを帯びた灰色の夜空の、いくえにも重なる大輪の花のような色づいた雲の中心に、白い満月が浮かんでいた。

 日頃食料品を購入するアサノスーパーの広い駐車場を横切り、いつもの散歩道の(くす)んだ赤ワイン色の垣根付きの舗道に出た。月明かりの下で、先を歩くシーの白にゴールドの体毛がほのかな輝きを放っている。

 シーは、模様のあるグレーの舗道の黄色の視覚障害者誘導用ブロックの上を、短い足で少しお尻を振りながらなぞるように歩いていた。


 ふと黄色の視覚障害者誘導用ブロックが、電車の線路に思えた。するとシーという電気機関車が、線路の上を走りはじめ、突然、黄色の線路が浮かびはじめた。

 青みを帯びた灰色の空の白い満月へと線路は続き、オレとシーが乗った電気機関車が、黄色の線路を白い満月に向かって走りはじめる。

 ジョバンニやカンパネルラが乗った銀河鉄道のように……




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