『われらの狂気を生き延びる道を教えよ』
JR仙台駅に隣接するショッピングセンターS-PAL仙台にある書店に立ち寄ったところ ──戦後文学最大の巨星 追悼大江健三郎── という帯がかけられた新潮文庫が、文庫本コーナーの書棚に並んでいた。帯には晩年の彼が微笑んでいる顔写真も刷り込まれている。
以前、この書店の新潮文庫の書棚を見たときには、大江健三郎の芥川賞受賞作『飼育』が載っている薄い文庫本が1冊あるだけだったが、この時は10冊以上の主要な作品が並んでおり驚いた。 ──『われらの狂気を生き延びる道を教えよ』『ピンチランナー調書』『同時代ゲーム』『燃えあがる緑の木』三部作など── しかし、文庫本と文庫本の間にはまったく隙間がなく、ほとんど売れていないのではないかと思われた。
『同時代ゲーム』や『燃えあがる緑の木』は所有しているので、 ──大学時代に夢中になって読んだ── いつの間にか紛失してしまった『われらの狂気を生き延びる道を教えよ』を購入することにした。
この短編、中編の連作集は、文学YouTuberのムーさんが、数ある大江作品の中でナンバーワンに挙げるほどブットンデいる作品だ。どれだけブットンデいるか、タイトルからも想像できるが、次の目次を見てもらえればさらにわかるだろう。
『われらの狂気を生き延びる道を教えよ』
目次
第一部 なぜ詩でなく小説を書くか、というプロローグと四つの《《詩のごときもの》》
第二部 ぼく自身の《《詩のごときもの》》を核とする三つの短編
走れ、走りつづけよ
核時代の森の隠遁者
生け贄男は必要か
第三部 オーデンとブレイクの詩を核とする二つの中編
狩猟で暮らしたわれらの先祖
父よ、あなたはどこへ行くのか?
a 裏
b 表
『われらの狂気を生き延びる道を教えよ』を購入してから、第一部と第二部の短編『走れ、走りつづけよ』まで読了した。第一部はやや難解なことが書いてあるが、あらためて認識することができた。
この作品群は、長編『万延元年のフットボール』から長編『洪水はわが魂に及び』の間の時期に執筆された大江健三郎の絶頂期といえる中期に書かれたものである。 ──『われらの狂気を生き延びる道を教えよ』は、1969年(昭和44年)に発表、この年、アポロ11号が月面着陸、ニクソンがアメリカ大統領就任、『サザエさん』が放送開始等々があった── ベトナム戦争が続いていたこの時代の何が狂気であったのか? 興味深くオレは再読をはじめたが、そのブットンデいる内容については、後日あらためて記してみたい。
今晩はエアコンの暖房のスイッチを入れた。愛犬シーズーのシーは、やはり枕元でお尻をオレの方に向けて熟睡している。