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『必読書150』その4



 誰しもそうであろうが、世の中には不条理なことが数多くあり、これまでオレもさまざまな辛酸(しんさん)()めてきた。朝陽がのぼり小鳥がさえずる世界は美しいけれども、世の中には(おぞ)ましく醜く(けが)れたものが蔓延(はびこ)っているのも現実だ。こうした不条理で悍ましい世の中において、あるいは絶望のなかで手にした本に、一条(ひとすじ)の光を見出せればどんなに救われることだろう。

 もしオレに、いま少しの知力と十分な時間が与えられ、この『必読書150』にリストアップされた本をすべて読了することができたのなら、世の中の不条理や悍ましく醜く穢れたものへ毅然とした態度をとることが可能になるのではないか。先人が残したこれらの知的な財産こそ未来への道標となるはずなのだ。

 しかし現実は、まことに情けないことだが、『必読書150』にリストアップされた本のなかでオレが読んだことがあるものは、日本文学のなかのたった7つだけである。人文社会科学はもとより海外文学でさえ読んだことがあるものは一つもなかった。いかに偏った貧しい読書歴であるのか身に沁みて自覚し、あらためてサルであることを再確認した。

 それでもオレは、各執筆者の解説を頼りに、『必読書150』の人文社会科学50、海外文学50、日本文学50のなかに、一条の光が見いだせるものがあるのかどうか確かめてみたくなった。通勤電車のなかでスマホではなく独り本をひろげながら、ほんのかすかな光でもかまわないからと……




 ──ダンテ『神曲』


 大江健三郎の長編小説『懐かしい年への手紙』には、ダンテの『神曲』の示す《地獄》と《煉獄(れんごく)》のはざまで、循環する時を彷徨する現代人の魂の行末──その死と再生の物語── が描かれていた。

 解説にもあるように、ダンテ自身は政争に巻き込まれフィレンツェ共和国から追放され長年にわたる流浪の生活を送った。やがて『神曲』を書きはじめたダンテは、24歳で夭折した片思いのベアトリーチェを、神格化とすら言えるほどの崇敬な賛美をこめて永遠の淑女 ──天国に坐して、主人公ダンテを助ける永遠の淑女── として描いたらしい。

 実際には、挨拶すら拒まれた片思いのベアトリーチェを神格化し永遠の淑女として描いたダンテ。追放したフィレンツェを憎みつつ、片思いに終わったベアトリーチェを神格化することによってのみ救われたのであるならば、かなしいことではあるが、ダンテにとっては一条の光のようなものではなかったのか。

 青空文庫で、山川丙三郎訳(文語訳)が読めるので、地獄篇の冒頭1、2ページを読んでみたが、具体的な情景をイメージするのがむずかしかった。やはり古典文学はなかなか馴染めない。



 今朝も薄明のなかを愛犬シーズーのシーと散歩に出かける。今朝は冷え込みも厳しい。でもシーはへっちゃらだ。もふもふの体毛に覆われているから。


 ──シー、散歩だよ!




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