人類の未来を賭けた闘い
『監視資本主義社会 人類の未来を賭けた闘い』
著者 ショシャナ・ズボフ (ハーバード・ビジネススクール名誉教授) 訳者 野中香方子 東洋経済新報社
「監視資本主義社会」という言葉を生み出した世界的ベストセラーの本書を、皆さまはご存知だろうか? 「私たちを急襲する隠された力とその対抗策」とも謳っている。2019年にオバマ元大統領がベストブックに選出したことでも有名らしい。
正直、オレは知らなかった。
ただ本書が、「隠された力」について書かれた対抗策だということが、なんとなくわかった。
皆さまも同じかもしれないが、オレは日々の生活において、巨大な力による脅威をなんとなく感じている。それは国民主権の民主主義国家の日本においてでもある。 ──具体的な記載は避けておこう──
本書は、デジタル時代の資本蓄積様式を「監視資本主義」と命名して解明を試み、その真の恐ろしさを暴いて警告を発し、オレたちにその「隠された力」と闘うことを求める渾身の大作らしい。 ──らしいと表現したのは、本書をオレが読んでいないため──
──私たちの日常生活が、インターネットへの接続なしには困難になってから久しい。検索履歴などのデータがサイト運営企業に利用されることは薄々知っているが、その真の恐ろしさは知らない。だが、私たちの行動、思想、感情が監視されるだけでなく、積極的に操作・誘導の対象とされ、企業収益の極大化に奉仕させられていると知ったらどうであろうか──
(エコノミストOnlineより)
「抽出要求」「行動余剰」「予測要求」「レンディション」「行動修正」「道具主義」等、次々と見慣れない概念が出てくるが、これらは、まだその資本蓄積様式の全貌が明らかにされていない「監視資本主義」の本質をつかむため、著者のショシャナ・ズボフが生み出した概念らしい。
この「監視資本主義」が真に恐ろしいのは、オレたちの行動ばかりか思想や感情まで「操作・誘導」の対象とされ、究極的には、人間の本質まで破壊される恐れがある点のようだ。
たとえば、Googleで検索をすると、その検索履歴などのデータが、情報分析のターゲティング広告への適用を超えて「操作・誘導」さえされてしまう。
また、フェイスブックなどは「チューニング」「ハーディング(群れ化)」「条件づけ」といった技法を最大限駆使して利用者の感情を操作し、望む方向に行動させる実験に成功を収めているという。 ──誰がなんのための望む方向なのだろう──
「監視資本主義」の合法性を否定し、自分たちの自由意思を示すのか、それとも彼らの意のままに操られ、利益追求に奉仕させられるのか。
「監視資本主義社会」「隠された力」との人類の未来を賭けた闘いが、はじまっているということだろう。
今夜も日本酒を飲み、愛犬シーズーのシーの寝息を聴きながら大江健三郎の『晩年様式集』を読んいる。今どき大江健三郎の小説を読む人間はごくごく稀であろう。でもオレは世の中において、もっとも核心的なことを語っているのが大江健三郎だと感じてきた。だからこそ、ほんとうのことを求めて彼の小説を読みつづけているのだ。
シーの存在がこの宇宙の核心にあるように……