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『純』Part2



 ではなぜこの映画『純』が、印象に残り続けたのか? それはおそらく、まだ20代前半と若かったオレの常識や規範を、多少なりとも越えていたからかもしれない。はじめて見た、夕陽に染まった静寂な海に浮かぶ軍艦島の鮮烈な映像、そして抽象的な現代音楽……

 廃墟と大都会、無人と雑踏、貧困と贅沢、希望と絶望、そんなコントラストのうえに、廃坑になった島から集団就職で大都会の東京へやって来た青年が、美人の彼女がいるにも関わらず取り憑かれたように(ふけ)る痴漢行為……


 けっして許されない犯罪行為であり、女性にとっては吐き気をもよおす映画かもしれないが、繁栄から(もれ)てしまった歪んだ青年の姿に、どこか犠牲者の姿を垣間見たのは正直な感想だ。

 世の中には、さまざまな思想があり、さまざまな価値観があり、さまざまな常識があり、さまざまな芸術があり、さまざまな表現方法があるが、歪んだ世界を描くことによって、人間社会の(ひず)みを描こうとした短絡的で抽象的な映画に過ぎなかったかもしれないが……


 しかし今思えば、なぜこの映画のタイトルに『純』という(主人公の青年の名前も松岡純)、純粋の「純」という文字を選んだのかは気になるところだ。

 そうして映画のラストでは、ついに青年は警察に逮捕されてしまうだが……



 今夜は冷たい雨が降っている。朝の散歩は中止だ。お尻を向けて熟睡している愛犬シーズーのシーの頭をそっと撫でた。


 ──シー、雨が降っているから散歩は行かないよ!




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