LiberaのFar away 彼方の光
深夜、久しぶりにLiberaの『Far away』を聴いたら、涙腺がヤバくなった。
なぜか生きていることの原風景を思い出させられたから……
幼かったころ、朝起きると朝陽がとっても眩しかったとか、風に乗って海からの潮の香りが漂ってきたとか、ツバメが目の前を風のように横切ってびっくりしたとか、草むらで遊んでいたら植物の匂いが強くて着ていた服がくさくなったとか、ひまわり畑のひまわりがみんな東を向いていたとか、生まれたばかりの仔猫を拾って帰ったら怒られたとか、田んぼの真ん中に聳える大きな一本松に昇って夕映えた空を眺めたとか、クリスマスマス・イヴに何もプレゼントがもらえなかったとか、厳しかったメガネをかけた母の眼差しがほんとうはやさしかったとか……
こころの奥の忘れていたことが、次々と想い出されてきた。ひとりの人間には、こんなにもたくさんの想い出があって、楽しいことも、嬉しいことも、悔しいことも、つらいことも、かなしいことも、たくさん胸に詰まっている。
おそらくほんとうに大切なことは、世の中でうまく生きていくことじゃなくて、人間社会でうまく生きていくことじゃなくて、なんかもっとほかにあるような気がした……
オレの誕生日、いつもの居酒屋の個室で、ふとほんの冗談でいった、誕生日にGUCCIの腕時計がほしいという言葉に、美沙は、はにかみながらほんとうにプレゼントしてくれた。 ──美沙は彼女ではなかったが、不思議と7年間も毎日のように会っていた年下の女の子、よく笑う美しい女の子だった──
──ユッキー、もうひとつプレゼントがあるの、LiberaのCDよ、とってもいい曲だから、一緒に聴きこう!
美沙は用意していた小型CDプレイヤーにイヤホンを差し、片方ずつイヤホンを耳して聴いた。
すると、天使のような歌声が聴こえてきた。
──『Far away』だった──
愛犬シーズーのシーは、おしりをオレに向けて寝息を立てている。時々寝言のような寝息に変わる。どんな夢をみているのだろう。
──シー、 楽しい夢をみてるのかい? もう少ししたらまた薄明のなかを散歩しよう!