プロローグ
共依存大好き
子供の頃から虫が好きだった。
小学校の頃、親に無理を言って飼わせて貰っていた。
最初は数匹の蟻だった。餌をあげる時に寄って来るのが何より可愛くて、気づいたら数時間経っていた事もある。
ある時、飼っていた蟻が1匹死んだ。
親からは「庭に埋めてあげるのよ」と言われたが、断った。
僕は小さい頃からあまり親に反抗した事が無かったので、親は意外だったのだろう。理由を聞かれた。
「手離したくない」
僕はそう答えた。
気づけば蟻の死体はアルコールに浸された瓶の中に入っていた。
色褪せることも無く、まるで瓶の中で生きたまま時間が止まっているような感覚がして、僕はとても満足していた。
しかし、時間が経つにつれ2匹目、3匹目と死んでいき、それらの蟻も最初の蟻と同じようにアルコールに浸した瓶の中に入れた。
蟻が自然に死んでいく度、まるで蟻が僕の手から離れていくような感覚がして、本当に悲しかった。
「ずっと僕の物でいて欲しい」
そんな結論に至ったのは、ある意味自然な考えだったのかもしれない。
そこからどうしたかはあまり覚えていない。気づけば、「僕の物になった」蟻が瓶の中に入っていて、ついさっきまで生きていた蟻は居なくなっていた。
どうしてかは分からないけど、とても満足感があった。
その後母親に飼っていた蟻の事を聞かれたので、正直に話した。
どうして怒られたかは、子供の頃の僕には分からなかった。
今なら分かるが、どうやらその行為は世間一般的に言う「ダメな事」だったらしい。
その気持ちを抑えないといけない。そう考えたのは、中学生の頃だった。
しかし、一度手に入ってしまった物はどうしても求めてしまう。手離したく無くなってしまう。
中学生、初めて付き合って歯止めが効かなくなってしまい、付き合って一週間後に別れることになってしまった。
中学生の頃に付き合っていた彼女には本当に悪い事をしてしまったと思っていると同時に、「僕に普通の恋愛は無理」という事を、身を持って知った瞬間だった。
自分で言うのも少し変だが、僕はそこそこ顔が良いので、普通の人よりは少しだけ女子から好意を寄せられ易いらしい。
しかし、告白してきた女子は皆、この話をすると離れて行ってしまう。当然だと思った。
僕はこれからも人と深く付き合う事は出来ないと思っていた。「彼女」と出会うまでは。
次回から本編