小さな町の不思議なお店
ここは小さな町にある「ネリネ堂」という小さな店。木造建築で50年くらい続いており、正直かなり古臭い店である。中古品を扱っていて食器やアクセサリー、家電や本など様々なジャンルの物が売られている。ただ、中古と言っても使えるものは少なく片目しかレンズがない眼鏡や穴が塞がっているメガホンなど訳がわからない商品が売られている。これで50年も続いていると考えるとこの町にはどれだけ物好きな人がいるのだろうと気になる。
俺は高校1年の二宮孝彦。みんなからたかちゃんって呼ばれている。そして、ここの唯一のアルバイトだ。元々この店はおじいさんが一人で経営していて、その息子さんが受け継ぐ予定だったが、突然の事故で亡くなってしまい孫娘のかおりさんという20代のお姉さんが受け継ぐことになった。渋々受け継いだらしい。そんなかおりさんのことを心配して小さい頃からお世話になっていた俺を母がここでアルバイトをしたらと提案したことがここで働くことになった経緯である。
「おはよ~、昨日飲み過ぎたせいで頭めっちゃ痛い。二日酔いかも」
「また昨日の夜も飲んだんですか。いつも言ってるじゃないですか。飲みすぎは良くないって。」
「酒が私を呼んでいるんだよ。たかちゃんもお酒を飲める年齢になればわかるよ。裏で寝とくから何かあったら自分で対処してね~。よろしく。んじゃおやすみ。」
この背が高く、長髪黒髪でスタイルも良く、とても美人なお姉さんがかおりさん。ただ渋々受け継いだため、あまり働こうとしない。こういった事からかおりさんのおじいさんの知り合いである俺の母が心配になり、俺をここで働かせた。母は働かざる者食うべからずをモットーだ。そのためこうして土曜日の朝から働かされている。だが、ここで働いている理由はこれだけではない。
カラーン。店のドアが開く。父親と小学生ぐらいの子供の親子連れが入ってきた。その親子連れは店の中の商品を見て回り、ある鏡の前で止まる
「お父さん、これすごいね!」とお父さんに向かって目を輝かせる。その鏡には子供だけが映っており、お父さんは映っていない。結局、その親子は何も買わず出て行った。そして、俺もその鏡の前に立つ。鏡には俺の姿は映っていない。決して鏡が割れていたり、曲がっているわけではない。そう、ここは壊れた中古品が売られているただの店ではない。世にも奇妙な物が置いてある店なのだ。