つむじ風のレオン⑦~一年目祝い編~
捕縛後はすべてクラウスに押し付け、日を改めて正式に催されたフィオナの1年目祝い。
期待して部屋に入ると、ざわめきの中に見知った顔もちらほらと見受けられる。
「しかし今日はさすがに人数が多いな。これでは誰が部屋の香の者なのかさっぱりわからん!」
これだけいると纏う香りが様々で、フィオナの側か香炉の側でないと本命がわからない。
『ま、どうせ今年も私が“一番手”だろうがな!!』
外見は泰然と、内心は余裕綽々で香炉の側まで近づこうとしたら、招待主が自ら出迎えに来てくれた。
一番手なら出迎えられて当然。やはり今年も私で決まりだな。
モテる男というのは実に心地よい!!
「レオン、いつも来てくれてありがとう! 今日は楽しんでってね!!」
フィオナからは少し薄くて香りが分かりづらい。
が……これは私の贈った香ではない、ような?
術まで使って鼻を強化して嗅いだ香りは、私の香りではなかった。
「ああ、おめでとう、フィオ…ナ?」
私はその事実に軽く衝撃を受けた。
「あー。その……フィー? 今日の“一番手”は……」
一体誰だ? と言う私の目線に
「ふふっ、気が付いた? 今年はね……」
と、フィオナが引っ張るように連れてきたのは、良く知る男。
「ちょっ……困ります! 本当に困りますって!!」
確かにこのエードルフも香をねだられて贈っていたが、まさか一番手を弟に取られるとは。
少々複雑な気分だ。
『兄上っっ!! 方法っ!! 断る方法を!! は、早く教えてくださいっっ!! 弟の貞操の危機ですっっ!!!』
フィオナに絡みつかれながら、必死の形相で私にしか聞こえないよう訴えるが、悲しいかな。
『無理だぞ。祝いの“一番手”はこれ以上ない名誉な事ゆえ、断るのは選んだフィオナに恥をかかすのと一緒だ。故に断れない』
大体貞操など大事に取っておいても仕方ないだろうし、一人も女を知らずに奥方を困らせるのも良くない。
変に拗らせて男色に走るような王室の醜聞もゴメンだ。
『ま、ちょうど良いから色々と教わってきなさい。いつまでも独り身という訳にもいかんのだから!』
『そ、そんな、、、無体なっ!!』
「いやぁ~! まさか弟に“一番手”を奪われるとは、私もぬかったものだ! 楽しんでくるが良い!!」
と、私は気持ち良く送り出す。
エードルフは「み……見捨てないでください、兄上!!」とまるでこの世の終わりのような顔だが、許せ、弟よ!!
王は孤独な生き物で、時に非情な決断をせねばならぬ時があるのだ!
「さぁ、楽しみましょう、殿下!!」
フィオナは口説き落とす気満々で寝台のある部屋にエードルフを引っ張っていった。
「ま、フィオナなら無理強いしないから心配なかろう!」
私の番が来るまで多少時間がある。
時間まではと酒を片手に、同じように祝いに来ていた同士たちとの交流の輪に加わることにした。




